■■■FET式・・・平衡型差動プリアンプ Version2■■■
Balanced Line Pre-Amplifier


バランス型ラインプリ+バランス型ミニワッターでRogers LS3/5Aを鳴らす、贅沢なデスクトップ


◆ AKI.DACのLPFをCR型からLC型に変更しました(2014.9.20) ◆
◆ AKI.DACのLPFの回路定数を、2.2mH+330Ωから2.7mH+390Ωに変更しました(2014.10.10) ◆

●製作の背景とVersion1、Version2について

そもそもの発端はVersion1の解説にあるとおりですのでそちらをご覧ください。Version1で使用したライントランスはあまり一般的でないため、誰もが容易に本機を製作することができません(と思ったら、結構オークションに出るようになりました)。そこで使えるライントランスの種類を増やしてVersion2を製作することにしました。もうひとつの理由は、Version1はかなりコンパクトに仕上げてしまったために、実装が難しくなってしまったことです。Version2ではやや大きめなケースを使い余裕のあるレイアウトになっています。

●要求と構成・・・デジタル対応、バランスとアンバランスが共存できるプリアンプ

デジタル時代のソースは、サンプリングレートによってオーディオ帯域が制限される、ソース機材からデジタルノイズが漏れてくる、といった特徴があります。ソースを再生するオーディオ装置は広帯域であるほど良いとも言い切れなくなってきました。またデジタルノイズの有無にかかわらず、そんなに広帯域でなくとも非常に良い音で再生できる・・・広帯域が良い音の絶対条件ではなさそうだ、ということもだんだん見えてきました。

このラインプリアンプは私がこれまで製作してきたものに比べると高域側の帯域はあまり広くありません。1990年頃に製作したプリアンプは1MHzで-3dBという超広帯域で、2006年に製作した差動ラインプリでは500kHzで-3dBでした。しかし、本機は75kHzで-3dBとなっています。その理由のひとつはデジタルソースから漏れ出てくるノイズへの対応です。この種のノイズは100kHz〜2MHzくらいに広く分布しており、これが目立つと音のうるおい感が損なわれ、ざらついた感じになってきます。今や、オーディオソースの大半がデジタル機器ともいえる状況なので、ひとつ考え方を改めてプリアンプというものを再設計してみようと思ったわけです。

我が家にはiPodや古いカセットデッキにはじまって、マスターレコーダー、ProToolsといったレコーディング機材などさまざまなオーディオ機材が混在しています。RCAプラグ/ジャックがついたアンバランス仕様の機材と、キャノンコネクタをつけた業務機材が混ざった環境でもそれらがスムーズに使えるようなコントロールアンプが必要でした。そこで入力ソースとして考慮したのは、バランス出力のプロ機材とアンバランス出力のコンシューマ機材、そしてiTunesなどを搭載したPCの3種類への対応です。PCソース用のDACは本サイトでおなじみのAKI.DACのキットを想定しています。まとめると以下のようになります。バランス入力回路は、何もしなくてもCold側を接地するだけでアンバランス入力としても使えるので、バランス入力仕様にしておきさえすればバランス/アンバランス共用アンプになります。

入力ソース 区分 アナログ信号レベル 伝送方式 端子
バランス出力ソース アナログ 1V〜3V(0dBFS時) バランス/アンバランス共用 キャノン/XLR3
アンバランス出力ソース アナログ 1V〜3V(0dBFS時) RCA
PC(iTunesなど) デジタル 0.61V(0dBFS時)←AKI.DACの定格 USB USB

本機と接続して使うパワーアンプには、アンバランス入力のものとバランス入力の両方を想定しています。どちらのタイプも無条件に接続できることが設計の要件ですが、出力側はキャノンコネクタの3番(Cold)を強制的にアース(すなわちレアショート)してしまっても問題なく動作する必要があるため、特別な設計をしないとバランス/アンバランス共用にはなりません。本機は出力のHot/Coldいずれの一方をアースとショートさせてもアンプ側には全く負担がかからず、利得も周波数特性もほとんど変化しないで安定動作します。

出力 出力先 利得 伝送方式 端子
プリ出力 ミニワッターあるいは通常のパワーアンプ +3dB程度 バランス/アンバランス共用
3番レアショートによるアンバランス出力可
キャノン/XLR3


●異なる入力の利得問題の解決法

本機は2種類の異なる入力信号レベルを扱います。メインアンプに送る信号レベルはひとつですから、どこかで入力感度を調整して揃えなければなりません。考え方は2つあります。

ソース機材の信号レベルに合わせる・・・いわゆるラインレベルのことです。一般的なCDプレーヤや多くのアナログ機材の出力信号レベルは2Vを中心として1V〜3V(0dBFS)くらいの範囲にばらついています。フルボリュームにしたiPod nanoのヘッドホン出力は1V(0dBFS)ですが、これは低い部類にはいります。

最も低い信号レベル=AKI.DACに合わせる・・・信号レベルが最も低いのはAKI.DACの0.61V(0dBFS)ですから、iPodよりもさらに低いことになります。本機ではAKI.DACを内蔵するつもりですので、この信号レベルにも対応しなければなりません。

回路をシンプルに構成するには、アンプ部の利得を最も低い信号レベルに合わせておき、高い信号レベルはアッテネータで減衰させることにします。


●全回路図(Version2)

Version2の回路図です。基本回路はVersion1と同じですが、利得の見直しを行ったのと、トランスのインピーダンス比が違うために回路定数もかなり修正をしてあります。回路図中の「要調整1」は、使用するトランスによって値が変わります。「要調整2」はTD-1、TDP-1、TK-10を使う限り取り付ける必要はありませんが、トランスの特性によってはチューニングの上で数pF〜十数pFのコンデンサが必要になることがあります。


●入力回路の解説

入力は3つあり、CH1はUSB DAC、CH2とCH3はライン入力です。ライン入力側の各チャネルにはバランス型のアッテネータがあります。Version2の入力インピーダンスは、バランス時で約80kΩ、アンバランス時で40kΩです。アンバランス入力として使う時はCold側を接地すればいいので、3番と1番をショートさせた普通の「RCA→キャノン・アダプタ」が使えます。音量調整ボリュームは、50kΩ4連ボリュームを使いました。なお、Version1のライン入力には高出力ソースに対応した-6dBのPADをつけましたが使うことがなかったのでVersion2では省略しています。

●DAC部の解説

DACは秋月のキットAKI.DACを若干アレンジして使いました。DACのアナログ出力の直後にLC1段のLPFを入れてあります。初期のバージョンはCR2段でしたが、その後のチューニングの結果LC型の方が良い結果が得られたためです。歪率特性および周波数特性ともに著しく改善されました。C5,6が47μFから470μFに大きく変更になっている点に注意してください。AKI.DACはアンバランス出力ですから、入力セレクタ・スイッチのところでCold側が接地されるようにしました。

AKI.DACの取付部品の定数:
R6,7: 15Ω→15Ω(変更なし)
R8,9: 10kΩ→10kΩ(変更なし)
C3,4: 0.022μF→0.022μF(変更なし)
C5,6: 47μF→470μF(変更)
C11: 47μF→220μF/10V〜16V
C14: 470μF→1000μF/10V〜16V
C16,17: 100μF→220μF/10V〜16V

AKI.DACについては「AKI.DAC-U2704 (秋月電子のDACキット) の使い方」の記事に詳しい解説がありますのでそちらを参照してください。

LPF部の定数:
L: 2.7mH 10Ω
C: 0.01μF
R: 390Ω

●ラインアンプ部の解説

ラインアンプは2SK170-GRの差動回路による1段増幅の後、2SC1815-GRによるエミッタ・フォロワで出力トランスをプッシュプル駆動します。このような構成はプロ機のライン出力でよく採用されています。但し、プロ機の場合はFET差動回路ではなくOPアンプを使っているのがほとんどです。ライン出力にトランスを使うことで、音に一定のキャラクタを与え、また容易にバランス/アンバランス出力を得ています。この回路の面白いところは、入出力いずれもHotとColdを生かせばバランス出力となり、Cold側を接地するだけでアンバランス出力になり、しかも利得はバランスの時もアンバランスの時も同じになるという点です。つまり、つなぐ相手がバランス/アンバランスいずれであっても全く気にせずに簡易アダプタを使っていきなりつないでも問題が生じないということです。これを容易に実現させてくれたのは高性能のライントランスの存在です。

2SK170のドレイン電流は設計値で約1.45〜1.55mAとしましたので、GRランクが適しますがBLランクも使用可能です。JFETはドレイン電流が多いほどgmも高くなりますが比例して高くはなりません。同じ電源電圧であればドレイン電流を減らしてドレイン負荷抵抗を大きくした方が利得は高くなります。本機では高い利得が欲しいのでこのような動作条件としました。定電流回路の特性は2.9〜3.1mAが必要ですが、現実的には、2.7mA〜3.3mAくらいの範囲であれば実用上問題はありません。定電流ダイオードは熱を持つと電流値が低下するので、頒布では2.9mA〜3.4mAとしています。

負帰還は、ライントランスの2次側から初段ゲートにかけています。反転増幅器になりますので入力側と出力側の位相が逆転します。そのためトランスの2次側とPRE OUTのキャノンコネクタへの接続は2番と3番が入れ替わります。帰還信号は4.7kΩと1.3kΩの組み合わせによって0.215倍に減衰され、62kΩと56kΩの組み合わせによってさらに0.475倍の減衰なのでトータルで約1/10になります。本機の負帰還回路では、入力のところの56kΩと62kΩとで約0.53倍のロスが生じます。これらを合わせると総合利得は4.3倍くらいになります。負帰還において2段階で減衰させたのには理由が2つあります。負帰還回路に高抵抗を使いたくなかったのと、入力をアンバランス接続にした時の出力信号の平衡度の低下を防ぐためです。

負帰還量は15dB以上になるのでトランスの位相特性による周波数特性に乱れが出やすくなります。1号機では15pFくらいの位相補正コンデンサでバランスの良い周波数特性になりました。2号機ではさまざまなトランスが使えるように、トランスごとに実測したチューニングデータを公開します。

●電源部の解説

電源部は3つの機能に分かれます。1つめはノイズフィルタ、2つめは電源ON時の立ち上がりを遅くする回路、3つめは疑似±電源です。

(1)ノイズフィルタは、ノイジーなACアダプタを使った場合の対策です。1mHと470μFによるLPFと、2SC2655によるリプルフィルタ、そして15Ωと1000μFの3段階ですので、能力的には過剰なくらいです。

(2)ACアダプタを使う場合、AC100V〜240V側をON/OFFするならば、電源の立ち上がりはそんなに急峻ではありません。しかし、ACアダプタがONの状態でDC出力側をON/OFFすると、特にONの時にかなり大きなポップノイズが出ます。これを防ぐために、2SC2655を使ったディレー回路によって電源電圧の立ち上がりをスローにしてあります。電源スイッチをONにしてから電源電圧が安定するまでに30秒くらいかかります。

(3)本機は+17Vと-5Vの2電源です。±両レール〜アースライン間にはDC成分は全く流れず、AC成分もほとんど流れませんので、抵抗分割による簡易±電源で十分に足ります。アンプ側の回路におけるプラス電源側の15Ωと1000μF/25Vは左右別個ですが、マイナス電源側の1000μF/16Vは左右共通です。それは、プラス電源側の方が電源電圧の変動に弱く、左右チャネル間の信号漏れが起きやすいからです。

電源トランスを使ったAC電源のON/OFFではトランス側から出るサージ電圧を吸収するために電源トランスの1次巻線と並列にスパークキラーを入れますが、本機のようなDC電源をON/OFFする場合は電源スイッチ側にスパークキラーを入れます。1mHのインダクタはノイズフィルタ機能だけでなく、電源ON時に470μFに流れ込むサージ電流を緩和する役割もあります。インダクタが手に入らない場合は2.2Ωくらいの抵抗器と置き換えてください。2SC2655のエミッタ側に入れてある100μFのコンデンサ容量は欲張ってはいけません。大容量にすると電源ON時の過渡電流のせいで2SC2655が過熱死します。

●電源ON/OFF時のポップノイズ対策は不要

本機は電源回路に立ち上がりをスローにする回路を組み込んであること、回路は平衡状態を維持しながら起動すること、DCを遮断するトランスを使っていること、この3つのおかげで電源ON/OFF時のポップノイズはほとんど出ません。


●部品について

ライントランス

本機では600Ω:600Ωあるいはそれに準ずるライントランスを使います。トランスはそれぞれに個性があるだけでなく、送り出し側のインピーダンス(内部抵抗)と負荷インピーダンスの組み合わせで周波数特性が著しく変化する性質があります。また、高い周波数において周波数特性および位相が変化するために、負帰還をかけた時にピークを生じたり発振することもあります。トランスをうまく使いこなすには、特に高域側にピークがなく、素直な減衰特性を得る条件を与えることが必要です。そのためにはまず、個々のトランスの素の状態の特性を把握しなければなりません。

1号機では、小型でインピーダンス比が600Ω:1.2kΩ(巻き線比は1:1.41)のライントランスを使いました。該当する型番はTAMRA TpAs-1SとTpAs-41Sです。このトランスはあまりポピュラーではないので、2号機では入手容易なインピーダンス比が600Ω:600Ω(巻き線比は1:1)のライントランスを使います。代表的な型番としては、TAMRA TD-1、TD-1W、TDP-1W、TK-1、TK-10、TK-161などがあり、そのほかにもTpB-2、TpAs-202、TpC-202、TF-3などがあります。回路図中のピンNo.はTD-1/TDP-1のものです。他のトランスの場合は以下のドキュメントを見て読み替えてください。ライントランスTD-1は中古の供給が豊富なのでいくらでも出てきます。オークションに出たからといって競る必要はありません。競り合った後にドカッと出て安く手に入ることもあります。1個しか出ていない場合は2個セットよりも割安に手に入ります。オークションは目先を追わずにいくつか見送るくらいのペースの方が良い買い物ができます。

■参考・・・TAMRA製のトランスのpdfデータ(年度で製品が入れ替わっています)
2000年版→ tamura-200009.pdf
2012年版→ tamura-2012.pdf
ライントランスは秋葉原のノグチトランスや春日無線で扱っていますが新品はかなり高価です。トランスは少々古くなっても塗装が剥げても特性には影響がありませんので、私はオークションで安く調達しています。しかし、モノに対する基準は人によってかなり差があるようで、中にはかなりボロボロのトランスを出品する人もいます。意図的に「素人なので何もわかりません」といった記述をしてとぼける人もいます。端子が錆びていてハンダが乗らない、端子が欠けていて異常に短いなど「こんなものを出品するなよ」と言いたくなるようなものに出会うことがあります。画像が不明瞭なもの、情報が不十分なものは避けた方がいいでしょう。本機で使ったのはスタジオ機材から取り外した中古品です。TD-1やTDP-1の取り付けは一般的なサイズ(3mm、2.6mm)のビスでOKですが、TK-1は専用のホルダーが必要なのでこれがないと不便しますのでご注意ください。

ライントランスの負荷チューニング

トランスは、以下のような一般的性質があります。

・ソースインピーダンスが高いほど低域側の歪が増え、高域側は低い周波数から減衰が始まり、損失も増える。
・ソースインピーダンスが低いほど低域側の歪が減り、高域側の帯域が広くなり、やがて持ち上がってピークができる。損失は減る。
・負荷インピーダンスが高いほど高域側の帯域が広くなり、やがて持ち上がってピークができる。高域側の減衰角度は急になる。損失は減る。
・負荷インピーダンスが低いほど高域側の帯域は狭くなるが、高域側の減衰の角度は緩くなる、損失は増える。
トランスは、ソースインピーダンスと負荷インピーダンスの組み合わせで特性は大きく変化します。どんな条件でもフラットで広帯域になる、というものでは全くありません。ですから、トランスを使う場合はソースインピーダンスと負荷インピーダンスの両方についてきちんと設計しなければ良いパフォーマンスは得られないわけです。そこで、本機で使うトランスについてどんな性質であるかをまず把握するところからチューニングが始まります。ライントランスを負帰還をかけた回路に組み込むと、元の特性の特徴を残しつつ別の顔も現れます。従って、本機に組み込んでから周波数特性を精密に測定しつつ、さらにチューニングをする必要があります。

いくつかのライントランスについて実測したデータがありますので是非ご覧ください。同じメーカー、同じインピーダンス規格でもトランスごとに実に個性的であることがわかります。なお、末尾のWはワイヤラッピング対応の端子付きの意味でトランス本体の特性は同じです。

TK-10
TD-1、TD-1W
TDP-1、TDP-1W
TF-3、TF-3W
TpB-202
E-8480 NIHON KOHDEN
TpAs-41S
TpAs-4S
TpAs-1S
http://www.op316.com/tubes/datalib/line-trans.htm

半導体

初段差動回路には2SK170-GRのバイアス特性による精密選別品を使います。特性が揃っていればBLランクでもかまいません。差動DCバランス調整ボリュームには、Version1では100Ωを使いましたがちょっと動かすと大きく変動してしまって調整しづらいのでVersion2では10Ωに変更しました。そのため50mVほどあったばらつの吸収能力が14mVくらいまで狭くなり、精密に選別したペアでないと調整範囲内に収まりません。頒布しているものは±4mVの精度ですので十分に調整範囲内です。

定電流回路には2SK30A-YからIDSSによる選別品を使い、定電流ダイオード接続(ゲートとソースをショートさせる)したものです。IDSSが3mAくらいの2SK30A-GRは滅多に取れません。実際に製作される場合は、2本合わせて2.9〜3.4mAになるようなIDSS=1.2〜2.1mAくらいの2SK30A-Yから選別されるか、自力で定電流回路を組まれることをおすすめします。ノイズの関係で石塚電子の定電流ダイオードやLM317などを使った定電流回路はおすすめしません。

出力段エミッタフォロワには2SC1815-GRの一般品を使いました。Version1ではYランクを使いましたがVersion1、Version2ともにGRランクの方がわずかに有利です。電源回路は2SC2655ですが、耐圧が35V以上、コレクタ電流定格が0.2A以上でhFEが140以上のものであれば大概のトランジスタが使えます(2SC2235、2SC4408、2SC3419、2SC3421、2SC3422、2SC2120など)。2SC1815はコレクタ電流が50mA以上になると飽和領域に入ってきてhFEがガタッと落ちてしまうので2SC2655の代替としてはおすすめしません。

FETおよびトランジスタのリード線の接続は下図のとおりです。いずれも下から見た図(bottom view)です。たとえば、2SK170の場合は、印字面に向かって左からドレイン(D)〜ゲート(G)〜ソース(S)の順になりますが、2SK30Aはその逆で左からソース(S)〜ゲート(G)〜ドレイン(D)の順です。2SC1815、2SC2655は、印字面に向かって左からエミッタ(E)〜コレクタ(C)〜ベース(B)の順です。この順序を間違えることが非常に多いので注意してください。

2SK170 2SK30A 2SC1815 2SC2655

ケース

キャノンコネクタ類を取り付ける後面パネルには、最低限60mm×104mmの有効面積が必要です。これが得られるケースとしてタカチのOSシリーズ「OS-88-26-16SS」を縦長方向に使いましたが、もちろん横長方向でも十分に収まります。このケースはパネルが独立しているので加工がやりやすいですが、板厚が3mmもあって手ごわいのと高価なのが欠点です。

コネクタ類

キャノンコネクタはさまざな外形のものが出ていますので好みで決めていただいてかまいませんが、本家ITTキャノン製は高価なので下手をすると合計で1万円近くかかってしまいます。頒布しているのはNEUTRIK製で廉価な割に高品質でプロの現場でもよく使われています。USB-A/Bリバーシブル・コネクタはNEUTRIK製しかありません。

ケーブル類

基板のジャンパーで使ったのはホームセンターで売っている0.28mm径の銅線です。この銅線はホームセンターやamazonで扱っており、15m巻きを200円程度で買えます。秋葉原などでよく見かける銅線はポリウレタンで被覆してあるのでいちいち溶かさなければならずジャンパーには使えませんのでご注意ください。

本機の内部でAKI.DACとつなぐUSBケーブルは「Aタイプ〜miniBタイプ」がついたものです。頒布もしていますがamazon.comで買えます。microBではなくminiBですのでお間違いのなきよう。本機とPCをつなぐUSB B〜Aケーブルはどこでも手に入りますが、1mと1.8mなら頒布しています。

ユニバーサル基板

ユニバーサル基板は当サイトでも頒布しているタカス「IC-301-72」が2枚です。ジャンパー線には0.28mm径のコーティングしていない銅線を使います。これは大型ホームセンターで扱っていますが頒布もあります。

部品の頒布

ケース、ツマミ、ライントランス、ACアダプタ以外のほとんどの部品は頒布可能です。→ http://www.op316.com/tubes/buhin/b-sadopre.htm


●製作と実装

全体のレイアウト、ケースの使い方と加工

ケースを縦長にして使いました。キャノンコネクタはかなりスペースを食いますので、後面パネルの面積と取り付けたいコネクタの数によってレイアウトはかなり制限されます。ケースの選定と使い方を考えるのにかなり時間を使いました。部品を購入して実寸を測り、図面を何度も描きなおしてようやくこのようなレイアウトになりました。ケース内部は結構すきまがありますが、後面パネルはすし詰め状態ほぼこのサイズが限界です。

タカチのOSシリーズのケースは縦・横どちら向きにも使うことができます。Version1とVersion2ではケースの使い方の向きが90°違います。メーカーが意図しているのはVersion1の使い方のようです。このケースの使用にあたってはいくつかの注意点があります。

向きによってパネルの厚さが違う・・・OSシリーズのパネルは、前面・後面パネルの厚さが1.2mm、左右側面の厚さは3mmです。Version1では1.2mm厚を前後面パネルに使いましたが、Version2では3mm厚を前後面パネルとして使っています。3mm厚の穴あけ加工はかなりしんどいです。キャノンコネクタの24mm径の穴あけをテーパーリーマーで行うのは非常に困難でホールソーが必須です。

本体と1.2mm厚パネルとは導通がない・・・電子機器では、ケースを構成するすべてのユニット間で導通があることによって正常なシールド効果が得られます。このケースは、2mm厚パネルと上下パネル、そしてそれらをつなぐジョイント間は導通が得られますが、1.2mm厚パネルは導通せずに電気的に浮いてしまいます。本機では、2枚の1.2mm厚パネルそれぞれにアースラグを取付けて、アースとの導通を確保しています。

3mm厚パネルと上下パネルは一体・・・ケース全体を組み立てた状態で1.2mm厚パネルのみをはずすことはできますが、3mm厚パネルをはずすことはできません。3mm厚パネルをはずすためには、上下パネルもはずさなければならない構造になっています。配線を間違えたまま基板や端子を取りつけてしまうと、後からやり直すのが非常に困難です。

後面パネルの様子

新タイプのキャノンコネクタは不規則な形状であるため変形した穴を開ける必要があるように思えますが、実はオス・メスともに24mm径の丸穴でOKです。24mm径の穴をテーパーリーマーで開けるのは骨が折れます。今後もキャノンコネクタを使った機材を作る予定があるのでしたら、少々高価ですが24mm径の精密ホールソーを買って持っておくことをおすすめします。右画像は愛用しているユニカ製ですが、実にすいすいと穴あけができます。

私は、キャノンコネクタの本体用の24mm径の丸穴だけ先の開けておき、それからキャノンコネクタの実物を穴に当てて取り付けビスの穴位置を決めています。先にすべての穴を開けてしまうと、何故か取り付けビスの穴位置が合わなくなるのです。下の画像のDCジャックの隣の黒いものは間違えて開けてしまった穴でして、穴ふさぎ(ホールプラグと言う)で埋めてあります。

USB-A/Bリバーシブル・コネクタは、購入時はAタイプが表側、Bタイプが内側になっているのでビスをはずして前後を入れ替えます。右下の画像では、黒いのが購入時の状態、シルバーが入れ替え後の状態です。

電源&入力部の基板パターン

タカスのユニバーサル基板の使い方はこちらに重要な解説があります。ユニバーサル基板の一般的な使い方とは考え方が異なりますが、この基板パターンで製作する時に必要な知識であり、さまざまなメリットがあるので必ずお読みください。
ハンダごては、セラミックヒーターを使った30Wくらいのものが適切で、こて先は円錐形に細くテーパーした標準タイプを推奨します。ハンダは標準(1mm径)よりも細め(0.8mm)の方が作業性が良いです。

1枚の基板に電源部と入力回路が乗っています。左側1/3が電源部で、右側2/3が入力回路です。ポイントとしては、電源部のアースと入力回路のアースが分離してあることです。後面パネルのCH1〜CH3の順序と、基板上のパターンのCH3〜CH1の順序が逆になっていますので注意してください。H=Hot、C=Coldの略です。電源ユニットからの輻射ノイズはほとんどありませんので、電源ユニットをことさらに隔離する必要はありません。

ラインアンプ部の基板パターン

基板上側から出る線はアース(GND)以外はすべてライントランスにつながります。アース(GND)は後面パネルのキャノンコネクタのアース側につなぎます。基板左側から出る3本の線は電源ユニットにつながります。基板下側から出る線は入力セレクタスイッチを経由して音量調性ボリュームに至りますが、アース(GND)だけは直接音量調整ボリュームのつなぎます。

トランスとの接続のPin番号は、TD-1およびTDP-1に対応しています。それ以外のトランスの場合はPin番号が異なりますのでご注意ください。※印のコンデンサは位相補正用ですがTD-1およびTDP-1では不要です。4個ある22Ωの2SC1815側はDCバランス調整時にテスターを当てますので、基板に密着させないでリード線が露出するように立てて取り付けてください。リード線が隠れてしまうとDCバランスの調整ができません。

AKI.DAC基板の組立て

AKI.DACの基板に取り付ける抵抗器はキットのものをそのまま取り付けますが、コンデンサ類はかなり変更があります。上記「●DAC部の解説」の章を参照してください。C5,6は直径8mmの470μF/10Vですが、基板を取り付けるナットとぶつかりそうになります。C6側がぎりぎりになりますので、コンデンサの足を長めにするなどして互いに当たらないように工夫してください。AKI.DACに関する詳しい記述は「AKI.DAC-U2704 (秋月電子のDACキット) の使い方」の記事にあります。

2枚の基板の取り付け

25mmと10mmのスペーサを使って2階建てにしましたが、この構造は合理的のように見えて、配線を間違えた時の修正が非常に困難だという問題があります。基板は左右の1.2mm厚のパネルに取り付けた方がよかったと思っています。基板と周囲とをつなぐ配線は線を短くし過ぎないのがポイントです。本機の配線はいずれも少々長くなっても性能には影響ありません。390Ω2W抵抗器はかなり熱くなりますので、配線材が密着しないようにしてください。

AKI.DAC基板の取り付け

後面パネルの面積とキャノンコネクタのサイズの都合で、後面パネルにじかにAKI.DACを取り付けるスペースの余裕がありません。そこでAKI.DACを側面に取り付け、後面パネルにはUSB-A/Bリバーシブル・コネクタを使うことにしました。コネクタとAKI.DACとは20cm長のUSB A/miniBケーブルでつなぎます。こうすることでAKI.DACの取り付け場所を自由に選べるようになりました。

AKI.DACからの線出しは、丸穴の下側から線を突っ込んでハンダを流し込んで埋めただけですが、この方法が最もシンプルで作業性も良いです。アースの穴が2つありますが中で左右がつながっているので、左右それぞれに出す必要はなく1本出せば足ります。アースの穴が1つ余るのでそこから出した線はAKI.DACを取り付けている金属スペーサを介して側面パネルと導通させシャーシアースを確保するのに使います。画像ではAKI.DACの下の方にアースラグが見えています。

キャノンコネクタまわりの配線

右側の4つは入力CH2、CH3のキャノンコネクタ(メス)です。1番=アース、2番=Hot、3番=Coldです。1番は4個すべてつないでしまいます。使用した新タイプのキャノンコネクタは1番のすぐ脇に本体アースのための端子が出ているので、これもアースにつなぎます(右上端)。後面パネルのシャーシとアースの導通はここで確保します。2番(Hot)と3番(Cold)はチャネルごとに捻じって配線します。本機ではシールド線は必要ありません。

中央はUSB-A/Bリバーシブル・コネクタです。陰になってよく見えないのがDCジャックです。

左側の2つは出力のキャノンコネクタ(オス)です。こちらも1番=アース、2番=Hot、3番=Coldですがメスタイプとは左右が逆なのでご注意ください。こちらも1番はアースとしてまとめます。シャーシアースは入力側でとったのでこちらはつなぎません。このアースから線を1本出して左側面パネルの導通をはかっています。

アースラインの引き回し

アースラインの引き回しのポイントは、個々のユニット間は1本のアースでつなぐことにあります(右図参照)。

入力端子およびAKI.DACからのアースは入力アッテネータ基板のところで合流し、ボリュームを経てラインアンプ部に至ります。ラインアンプ部を出たアースは出力端子につながってゆきます。電源部のアースは独立しているので、別途ラインアンプ部とつないでやります。

このシャーシは、天板〜フレーム〜底板および前後パネル間の導通は確保されますが、左右の側縁パネルと本体との導通がありません。そこで、この3つのコンポーネントをどこか1点でアースにつないでやる必要があります。

なお、入出力の端子群や基板のどのポイントにつなぐかはあまりクリティカルではないので、配線しやすいポイントを選んでください。本機は、交流電源を内蔵していませんし、ラインレベルの信号しか扱いませんので、アースポイントの不都合でノイズが出るようなことはまずありません。


●DCバランスの調整

本機は2SC1815の出力段とライントランスが直結になっているため、ライントランスに直流が流れて低域特性が劣化しないようにDCバランスをとらなければなりません。DCバランスは2SK170の差動回路のソース側の10Ωの半固定抵抗器を調整して行います。

測定ポイントは回路図中の※マークの2点間です。測定しやすいように22Ωは基板に密着させずに立ててリード線を露出させた取り付け方をしています。2SC1815の2個所のエミッタ間に1mVくらいまで測定できるデジタルテスターを当てて電圧差ができるだけなくなるように調整します。2SK170の温度によってDCバランスが変化しますので、通電してからしばらく置いて本機全体の温度が落ち着いてから作業します。風を当てたり手で部品を触ったりすると条件が狂ってしまうので慎重に行ってください。

エミッタ抵抗値が22Ω×2で、ライントランスのDCRが20〜50Ωくらいありますから、電圧差を20mV以下に追い込むことができればライトランスに流れる直流を0.5mA以下にできます。タムラのこの種のトランスはプロ用ミキサーのファンタム電源などの要求仕様を満たすために、2つの巻き線のDCRを精密に揃えてあります。これは一般のオーディオ用トランスにはみられない特徴です。使用するライントランスの1次側の2つの巻き線それぞれのDCRを測定して確認してください。

2個の2SK170を温度結合させればDCバランスはより安定します。非常に原始的な方法ですが、下の画像のように太めの銅線を渡してエポキシ系ボンドで固定してやるととても効果的です。温度差が生じてDCバランスが崩れても、やがて収束して落ち着いてしまいます。なお、隣の2SC1815はそこそこ熱を出して不安定要素になりますので、2SK170に近づきすぎないようにしてください。


●チューニングと測定

本機の最終調整は、負帰還をかけた状態での高域側のチューニングです。以下のデータは、5つの異なるライントランスを実機に組み込んで周波数特性を測定した結果です。信号レベルは0dB=1Vです。負荷には本機の負帰還抵抗(合計12kΩ)も並列合成されますので実質的な負荷は、470Ω//12kΩ=452Ω、680Ω//12kΩ=644Ω、1kΩ//12kΩ=923Ω、1.5kΩ//12kΩ=1.33kΩです。

TK-10
位相補正Cなしで負荷を変化させた
TD-1、TD-1W
位相補正Cなしで負荷を変化させた
TDP-1、TDP-1W
位相補正Cなしで負荷を変化させた
TF-3、TF-3W
位相補正Cなしで負荷を変化させた

負荷=680Ω/1kΩ+位相補正5pF/10pFの比較
TpB-202
位相補正Cなしで負荷を変化させた

負荷=680Ω+位相補正5pF/10pFの比較
E-8480 NIHON KOHDEN
位相補正Cなしで負荷を変化させた
TpAs-1S
位相補正Cなしで負荷を変化させた

負荷=1.5kΩ+位相補正10pF/15pFの比較
TpAs-41S
位相補正Cなしで負荷を変化させた

負荷=1.5kΩ+位相補正10pF/15pFの比較
TpAs-4S
位相補正Cなしで負荷を変化させた

負荷=1.5kΩ+位相補正10pF/15pFの比較

TK-10TD-1TDP-1はそれぞれに帯域特性に違いがありますが傾向が同じです。AKI.DACは200kHz〜1MHzあたりにノイズが集中しているので100kHz以上での減衰が大きい方が都合が良いため680Ω負荷が適します。位相補正コンデンサは不要です。

TF-3は独特の癖があり、定格通りの600Ω負荷では40kHz〜90kHzにかけて凹み、120kHzにピークができます。これは送り出し側のインピーダンスが低いのが原因です。へたに位相補正せずに680Ω負荷をかけたままが最も素直です。680Ω負荷にして62kΩに5pFのコンデンサを抱かせると頭がすこし下がりますのがこれもOKです。5pFの適当なコンデンサがなかったので10pFの積セラを2個直列にしています。

TpB-202は680Ω負荷にして62kΩに5pFのコンデンサを抱かせます。10pFですと段差ができます。5pFの適当なコンデンサがなかったので10pFの積セラを2個直列にしています。

E-8040は日本光電製の600Ω:600Ωタイプのライントランスです。TD-1と非常に良く似た特性で、680Ω負荷が適し位相補正コンデンサは不要です。

TpAs-1STpAs-41STpAs-4Sは抵抗負荷だけですと必ずピークが生じます。1.5kΩ負荷にして62kΩに15pFのコンデンサを抱かせたくらいがベストです。この条件はVersion1とほとんど同じです。

オーディオジェネレータを持っていない場合の簡易チューニング法:

オーディオジェネレータを持っていない方でも、以下のグラフを参考にしつつ、フリーソフトのWaveGeneと電子電圧計があればある程度のチューニングが可能です。下のグラフはWaveGeneを使って100Hzから21kHzまで発振させ、それを本機のプリ出力で精密に測定したデータで、TD-1でチューニングしたものです。縦軸を拡大してありますので1kHz〜20kHzの状態がよくわかります。この高域減衰特性は「AKI.DACの特性」と「本機のLPFの特性」と「本機のラインアンプの特性」が混ざったものです。もし、ラインアンプのトランスのチューニングがうまくてきていないと、この特性から著しく逸脱します。

どんなトランスを使った場合も、この特性に近づくように(10kHzで±0.2dBくらい、15kHzで+0dB/-0.4dBくらいの範囲)チューニングすれば大体OKだといえます。

本機の特性:

利得の状態は以下のとおりです。トランスはTD-1/TD-1Wです。ラインアンプの利得は4.3倍となりました。AKI.DACの出力信号レベルの最大値は0.610V(0dBFS)ですから、これを4.3倍すると2.62Vになります。本機をフルボリュームにしてiTunesなどにつないで再生すると、デジタルフォーマットの最大音量時にプリ出力からは2.62Vが出てきます。

CH1/CH2CH3
ライン入力USB DAC
入力信号レベル1.76V(換算値)0.610V(0dBFS)
アッテネータ減衰率0.34倍(-9.3dB)---
ラインアンプ利得4.3倍(12.7dB)4.3倍(12.7dB)
総合利得1.49倍(3.5dB)4.3倍(12.7dB)
出力信号レベル2.62V2.62V(0dBFS)

ライン入力(CH1とCH2)には-9.3dBのアッテネータがあり、その後に利得4.3倍のラインアンプが続きますから、総合利得は1.49倍(3.5dB)になります。ほんのわずかに利得を持ったプリアンプというわけです。同じCDソースを使って、手持ちのCDプレーヤ(STUDER 727)と本機のUSB DACの両方の音量感じをチェックしましたが、ほぼ同じくらいになりましたので使用感は良いです。

ラインアンプの残留ノイズは、帯域80kHzで71μV、帯域20kHzで42μVです。負帰還に56kΩと62kΩを使ったことが発生原因の主たるものですので、入力インピーダンスが下がることを容認して抵抗値を小さくすれば残留ノイズの値は下がります。USB DAC側は、帯域20kHzで67μVです。この値は私が調べた限りではPCの種類やWindows/Macで変わることはありません。

ライン入力における周波数特性および歪率特性は以下のとおりです。0dB=1Vで表示しています。歪率は帯域=80kHzで測定しています。歪率特性は完成直後は最低歪率は0.15%以上ありましたし、最大出力電圧ももうすこし低かったですが、回路定数を見直しつつチューニングを行ったところだいぶ良くなりました。

USB DAC入力における周波数特性および歪率特性です。LC型LPFがうまくチューニングできたため申し分のない周波数特性が得られました。歪率特性における0dBはデジタルソースのFS(フルビット、最大振幅)です。ボリュームポジションは4時で、その時のプリ出力は0dB=2Vです。歪率特性は20kHzのLPFを入れた状態の値です。100Hzと1kHzではラインアンプの特性に迫る低歪が得られました。10kHzで歪率は増加しているのは、アンバランス入力であるためです。

AKI.DACの低出力に対応するためにラインアンプ部に4.3倍の利得を持たせましたが、その必要がない場合は入力のところにあるアッテネータは不要になり、ラインアンプ部の利得は1.4倍あれば足ります。負帰還量が増えますので最低歪率は0.012%よりもぐっと下がって0.05%くらいになります。但し、負帰還量を変えることになるので回路定数の選択に工夫が必要で、負帰還量が増えるということは位相補正が非常に難しくなるということでもあります。ここから先は応用問題ですから、おやりになる方はご自分で切り拓いてください。


●本機をアンバランス機材とつなぐ

左側の画像は、普通に売られているRCA〜キャノン変換アダプタです。どちらも1個1,000円くらいします。キャノン側の3つの端子のうち2番をRCAのHotにつなぎ、1番を3番はショートさせてRCAのCold(アース)につないであります。このつなぎ方をした変換アダプタは万能ではなくダメなケースもあるのですが、本機は入力・出力ともに万能なのでこの簡易アダプタがそのまま使えます。

右側の画像はどこかのアンプのオマケでついてきたRCAピンケーブルを流用して自作した変換アダプタで、内部的な接続は左の画像のアダプタと同じです。機能は同じですからこのようにして自作すれば半額以下にできます。


●単体DACとしての応用

本機の入力セレクタ、アッテネータ、音量調整ボリュームなどのプリアンプ機能をすべて省略し、AKI.DACとラインアンプだけにすれば単体のDACになります。その場合は利得はもう少し低い方が具合がいいので、4個ある1.3kΩの負帰還抵抗を1.8kΩに変更してください。この程度の利得の変化であれば位相補正は不要です。単体DACバージョンは、そう遠くないうちに製作するつもりです(期日不明)。

●コメント

我が家のモニター環境で使っていますが、腰の据わった落ち着いた音がします。どんな入出力仕様の機材でも接続できるのは本当に便利。ただ、真空管の姿が見えないのがちょっとさびしいかな。

本機はプロフェッショナル・ユースに耐えますので、実際にレコーディングやライブの現場に持ち込んでラインバッファとして使っているエンジニアもいらっしゃるようです。デジタル卓からの送り出しがいまひとつシックリこないような時、本機を通すと音がまとまるのだとか。



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