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■■■AKI.DAC-U2704 (秋月電子のDACキット) の使い方■■■
How to build and customise AKI.DAC kit


(左:秋月のWebサイトから、中央・右:実際に製作したもの・・・かなりの部品を入れ替えてある)

秋月電子からとてもシンプルかつ廉価なDACキットが売られていてネット上でも話題になっています。なんとなく気になっていたので、秋葉原に立ち寄ったついでに買ってしまいました。良く売れるのでしょうか、入り口を入ってすぐのレジ横にぶらさがっていました。早速作ってみたのですが、キットの状態では実用にならないことがわかりました。これをどう料理するかはみなさんの工夫次第ですが、そのために必要な最小限の説明をしようと思います。より専門的なことについては、より詳しいサイトに譲ります。

●TI PCM2704と秋月電子のDACキット(AKI.DAC-U2704)

使われているモジュールのPCM2704はTI製のUSB DAC用のICで、性能的には中庸を狙ったもののようですが、使い方ひとつ・・・ここがミソ・・・でかなり高品位な音が出ます。このICはどこでも廉価に入手できますし自作例やキットも多数ありますが、作例によっては「ノイズが多い」というコメントも見かけます。アナログ部の安定度が低下すると所定のスペックが出なくなります。アナログ出力部は、インピーダンスが32Ω以上のヘッドホンを直接駆動することも視野に入れた設計になっており、標準負荷はどうやら330Ωのようですから600Ω程度の負荷なら難なく駆動できるだけのパワーがあります。但し、負荷は重くなるほど歪みは漸増します。

秋月のDACキットは、おなじみPCM2704を教科書どおりに使い、ある程度の丁寧さ(BUS PoweredではなくSelf Poweredモード電源としている)と割り切り(S/PDIFの省略)が共存するある意味とても基本的なDACです。細かい作業を要する主要部分はすでに組みあがっており、キットといっても、ごく少数の大型部品をハンダ付けするだけのものです。ちょっと慣れた方ならものの5分で完成です。WiondowsでもMacでも、USBにいきなり接続するだけで一発で音が出(るはずでござい)ます。

左下はTIのドキュメントに掲載されている基本回路図、右下は秋月のキットの全回路図です。(クリックして拡大)

PCM2704のテクニカルドキュメントはこちら(pcm2704.pdf)。
秋月Webサイトはこちら(http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-05369/)。
AKI.DAC-U2704の取扱説明書はこちら(http://akizukidenshi.com/download/ds/akizuki/AKI-DAC.pdf)。


●このKITの基本特性

<出力信号電圧>

まず、デジタルフォーマットの最大音量(0dBFS)でどれくらいのアナログ信号出力であるかを調べてみました。

出力信号電圧測定条件
0.63〜0.64Vrms0dBFS時、1kHz

このDACはUSB電源(5V)で動作しますが、アナログ出力部の電源電圧が低い(3.3V)ためアナログ出力電圧を通常のラインレベルまで高くすることができません。実測してみたところ、デジタルフォーマットの最大音量である0dBFSにおいて0.63〜0.64Vでした。普通のCDプレーヤが2Vくらい、出力電圧が低いiPod nanoでも0.8〜1Vありますので、iPod nanoよりも音が小さいわけでこのままでは音量不足になります。アナログ出力信号を2〜3倍程度増幅してやらないと実用性がありません。


<ノイズ>

お次はアナログ出力におけるノイズについてです。PCM2704の14pin、15pinから左右チャネルのアナログ出力が出ているのですが、このキットでは高周波ノイズを十分に除去するためのフィルタが省略されています。ついているのは、回路の安定を確保するためのZobelネットワーク(C3+R6、C4+R7)とDC漏れを防ぐためのカップリングコンデンサ(C5,6)のみです。

ほとんど帯域制限をしないで測定すると3.4mVほどのノイズが出ています。右の画像は1kHzの正弦波を-20dBFSで出力した時に、その正弦波に乗っているノイズの様子です。ノイズが大きいため正弦波が太くぼやけています。主にこの高周波ノイズが原因だと思いますが、ザラつきのある荒れた再生音が出てきます。あまりにノイズがきたないので、自動歪み率計のカウンタが波形を認識できず、低い信号レベルでの歪み率特性は測定不能でした。

高い周波数帯域を制限する性能の良いローパスフィルタを段階的にかけて測定したところ以下のとおりとなりました。

ノイズ電圧測定条件S/N比
0.64Vに対して
3.4mV帯域=2MHz45.5dB
0.25mV帯域=80kHz68.2dB
0.125mV帯域=20kHz74.2dB

帯域を80kHzで切ってやるとノイズは0.25mVになり、20kHzで切れば0.125mVまで下がります。ということは、ノイズの多くは80kHz以上の帯域に分布し、20kHz〜80kHzの範囲にも若干存在する、ということがわかります。本キットをうまく使うこつは、アナログ出力以降でどのようなフィルタをかけるかにかかっているように思います。


<容量負荷>

今度は、容量負荷を与えた時の挙動についてです。測定帯域は2MHzです。

負荷容量出力電圧コメント
無負荷3.4mV容量が増えるにつれてノイズも大きくなる
100pF3.5mV
1000pF3.6mV
0.01μF6.4mV
0.022μF350mV約850kHzで発振

無負荷からはじめて徐々に容量を増やしてゆくにつれてノイズがじわじわと増加してゆきます。このノイズの波形は中央下の画像で、800kHzあたりを中心にしてやや不規則に分布したノイズです。0.015μFくらいまではこの状況が続きますが、0.018μF以上では発振してしまいました。発振波形は右下の画像のとおりで、発振周波数は負荷に与えた容量にもよりますが700kHz〜900kHzくらいの範囲です。PCM-2704のアナログ出力に直接に容量負荷を与えるのは事実上禁止といっていいでしょう。


●電源コンデンサについて

DACキットの基板側のアルミ電解コンデンサは、キット付属のものを使わずに以下のように置き換えています。

回路図部品名キット付属変更後
C547μF/25V回路によって異なる
C647μF/25V回路によって異なる
C1147μF/35V220μF/10V〜25V
C14470μF/25V1000μF/10V〜16V
C16100μF/35V220μF/10V〜25V
C17100μF/35V220μF/10V〜25V

C11、16、17を220μF/10V〜25Vに置き換えた理由は、右の実測データを見ていただけばわかるでしょう。C11、16、17の3つは内部電源のノイズデカップリング用ですが、通常タイプを使っているために高い周波数でも1Ωくらいのインピーダンスを持ちます。これを容量がより大きな220μFに置き換えることで全帯域にわたって電源インピーダンスを1/2以下に下げることができます。

(注:右図のデータは測定ポイントが少なく簡易データですので、大体の傾向をついかむ程度のものとして割り切ってください)

参考のためにOSCONのデータも入れてあります。100kHzまで測定して「流石だなあ」と思ったのですが、改めて100kHz以上についても測定したところ、130kHzを谷としたV字特性であることがわかったのでちょっとがっかりでした。それくらいなら220μFを2個パラで十分というか、ずっとましという判断をしました。メーカー資料によると1MHzあるいはそれ以上の周波数でV字になっているようにとれるものばかりですが、実体はそれほどでもなく過剰な期待は禁物なようです。

なお、この部分の電源ノイズの大きさとDACのアナログ出力でのノイズはほとんど関係がありません。DACの電源をきれいにすればDACのアナログ出力でのノイズや音質が改善できる、といういかにもありそうな話はないのでした。残念ながらいくらここで頑張ってもアナログ出力のS/N比や音質の向上はほとんど見込めないことがわかりましたので、ほどほどのところで手を打つという判断となりました。


●出力コンデンサ(C5、C6)について

アナログ出力のところにある2つのコンデンサ(C5、C6)はDCを遮断するためについています。キット付属にはニチコンのFineGoldというオーディオタイプで47μF/25Vのものが使われています。この場所のコンデンサの容量は、後続する回路がどんな構成でどんな入力インピーダンスであるかによって決めることになります。

後続の回路方式想定負荷インピーダンス推奨容量説明
<AKI.DACキットオリジナル>
プリアンプやパワーアンプ
ヘッドホン

10k〜100kΩ
32Ω以上
47μF
プリアンプやパワーアンプとしては過剰
ヘッドホン用としては不十分
LC型LPFのみ330〜390Ω470μFLCフィルタのみ
トランス式・・・600Ω250〜350Ω470μFLCフィルタ付トランス式USB DAC
トランス式・・・150Ω100Ω2200μFLCフィルタ付トランス式USB DAC
FET差動バッファ式330〜390Ω470μFLCフィルタ付FET差動バッファ式USB DAC

結合コンデンサは自身の容量と受け側の入力インピーダンスによってローカット特性のフィルタ(HPF)を形成します。上記のケースですと、1k〜1.3kΩと100μFの組み合わせではローカットがはじまる(-3dBになる)周波数は1.2Hz〜1.6Hzになります。オーディオ帯域を考えると10Hzとか20Hzくらいでもいいのではないかと思うかもしれません。しかし、アルミ電解コンデンサはフィルムコンデンサなどと違って低い周波数での電圧特性が想像以上に劣りますので、低めの周波数に設定する必要があるためこのような定数にしてあります。しかし、調子に乗ってあまり大きな容量にしてしまうと、電源ON後に動作が定まるまでに時間がかかってしまうので限度があります。


●キットの組み立て

このキットの説明書ははなはだ不親切で、どんな手順で作業したらいいか、どの部品をどこに取り付けたらいいかがちゃんと書いてありません。電子工作に慣れない人は戸惑うと思います。

画像左・・・キットのオリジナルどおりに組み立てるとこのようになります。
画像中央・・・本サイトの製作例では端子台を使いましたが接触導通の信頼性を欠くので廃止しました。端子台を使わずに画像右のように処理する方法を推奨します。
画像右・・・C5,6を省略or外出しする場合はこのようにするといいでしょう。アース(黒)は心線を「U字」にしたものを穴に入れてハンダで埋めています。

  

基板に取り付ける部品は以下のものがあります。

作業自体は難しいものは何もありませんが、このキットの基板のランド(ハンダ付けする部分)が非常に小さいため、先端が細いこて先で、細めのハンダを使わないときれいに仕上がりません。基板の穴はスルーホール(穴の内側が上下にメッキが貫通している)なので、部品のリード線と穴の内側のメッキとの間で毛管現象を利用してハンダをゆきわたらせるようにす。確実かつきれいにハンダ付けするこつは、取り付ける部品のリード線を長いままにせず、穴から0.5mmくらい出るあたりで切ってからハンダづけすることです。長いままでハンダづけをするとハンダがリード線の上の方に固まってしまって穴にうまく浸透しません。短く切ってからですと溶けたハンダが穴のすきまにすいすいと入ってゆきます。なお、コンデンサ類は基板に密着させないで数mmほど浮かせておくと、穴へのハンダの浸透具合が確認しやすいです。

C5,6は直径8mm以下のものでないと基板を取り付けるナットに当たります。頒布している470μF/10Vの直系が8mmでして、取付可能なぎりぎりのサイズです。C6側がぎりぎりになりますので、コンデンサの足を長めにするなどして互いに当たらないように工夫してください。

最近は私は端子台を使わないで、丸穴に斜めにリード線を突っ込んだ状態でハンダを流し込んで固定しています。


●LED点灯回路

LEDの点灯には3つの考え方があります。

(1)USB DACがPCを認識した時に点灯・・・AKI.DACの基板上の青色LEDの両端から線を引き出す。駆動抵抗不要。
(2)とにかくUSBのバスパワー(電源)がきたら点灯・・・AKI.DACのC14の両端から線を引き出す(トランス式はこの方法)。駆動抵抗は820Ωくらいが適当。
(3)本キットや付属回路をUSB以外の外部電源で動作させる場合、PCの有無に関係なく外部電源がONになったらLEDを点灯。

まず(1)ですが、AKI.DACの基板上にある青色のLEDの両端に細い線をハンダづけして、その先に黄緑色のLED(PG3889Gなど)つなぎます。極性は下の画像(クリックして拡大)のとおりです。非常に細かい作業になりますのでAWG27かAWG28くらいの非常に細い線材と先が細いハンダごてが必要です。LEDの順電圧は黄緑色よりも青色の方が高いですから、青色と黄緑色を並列にすると黄緑色だけが点灯します。基板上の青色LEDはそのままにして単に線を引き出して黄緑色のLEDをつなぐだけでOKなわけです。黄色や緑色以外では赤色や橙色もOKです。

基板からの線の引き出し→

(2)の場合は、C14(いちばん大きなアルミ電解コンデンサ)の足を長めに残しておき、そこから線を引き出してLEDを点灯します。ここには5Vの電圧がきていますので、適当な抵抗を直列に入れてLEDの動作電流を決めてやります。通常の赤、橙、黄、緑のLEDでしたら820Ωくらいがいいでしょう。明るいLEDの場合は抵抗値を大きくして調整します。


●基本特性とまとめ

AKI.DAC-U2704キットの実測特性は以下のとおりです。信号源にはWaveGeneを使用し、出力側には10kΩのダミーロードをつけました。デジタルフォーマットにおける最大振幅の0dBFSにおいて0.63〜0.64Vの出力しかありませんので、一般的なオーディオソース機材と肩を並べて実用性のあるDACにするためには6dB〜12dBくらいの利得を稼げるアンプの追加が必要です。

測定項目備考
出力信号電圧0.635Vrms0dBFS時、1kHz
残留雑音(S/N比)3.4mV (45.4dB)
0.25mV (68.1dB)
0.125mV (74.1dB)
帯域=2MHz
帯域=80kHz
帯域=20kHz
C5,6値47μF/25V〜35Vキット付属のまま
周波数特性7Hz〜20kHz+0dB、-0.2dB
雑音歪み率特性---雑音が多く測定不可

周波数特性はご覧のとおりで申し分のない特性です。問題は歪み率特性で、フィルタをかけない出力信号をそのまま測定しようとすると自動歪み率計のカウンタが波形を認識できず、1kHzでは0.5V以下の測定ができませんでしたし、100Hzに至っては測定は全くできていません。ですからグラフらしいグラフになっていません。1kHzの0dBFS付近で0.5〜1%くらいの歪み率を示します。80kHzのフィルタをかけると0.01%くらいになりますが、フィルタのせいでノイズが減るからそうなるだけの話で一体何を測定しているのかわからないということになっています。無理に測定してもウソのデータが取れるだけなので断念しました。

TI発表のPCM2704のデータシートでは、雑音歪率は0.006%とあります。注意書き(5)には、400Hzから下をカットし、20kHzから上もカットした時の値とあって、そんな条件の数字しか出さないなんてずるいぞ、と思うのは私だけ?つまり、アナログ部にどんなフィルタを仕込んで仕上げるかはあなたの問題ですよ、と言っているわけです。その最も肝心なフィルタをつけずにキットにした秋月電子さん、ちょっといけませんなぁ。せっかく、廉価で誰にでも作れる形にしてくれたのですから、説明書にフィルタについての補足をつけてほしかった。


●CR 2段ローパスフィルタ例

このキットをトランスを使ったりFET差動バッファを使わずに単体でそのまま使う場合や、キット自体を自作のヘッドホンアンプなどに組み込んでしまう場合は、最低限のローパスフィルタが必要ですのでその回路をご紹介しておきます。トランス式USB DACFET差動バッファ式USB DACの場合のLPFについては、それぞれのページを参照してください。

フィルタ回路は、抵抗器とコンデンサを使ったフィルタを2段重ねたシンプルなもので、40kHzで-3dBの減衰となり、それよりも高い周波数では-12dB/octの減衰特性を持ちます。推奨値は100Ωと390Ωです。この時の20kHzにおける減衰は-0.8dB、100kHzでは-9.6dBです。このフィルタをつけたことでこのキットの出力インピーダンスは約490Ωとなるため、ヘッドホンを直接鳴らすことはできなくなります。入力インピーダンスが20kΩ以上ある普通のプリアンプやヘッドホンアンプなら問題ありません。10kΩの抵抗はAKI.DACのC5,C6に溜まった電荷を放出するためのもので、これがないとプリアンプやヘッドホンアンプにつないだ時にポップノイズが出ます。キットにこの目的の抵抗がついていないというのも問題だと思うのですが。

このローパスフィルタをつけた状態の周波数特性および歪率特性は以下のとおりです。フィルタなしの雑音歪率特性は惨憺たる結果でしたが、フィルタ付ではかなり改善されています。3.4mVもあった残留雑音も220μV(0.22mV)まで減りました。

測定項目備考
出力信号電圧0.63Vrms0dBFS時、1kHz
残留雑音(S/N比)220μV (69.1dB)
47μV (82.5dB)
14μV (93.0dB)
帯域=2MHz
帯域=80kHz
帯域=20kHz
C5,6値47μF/25V〜35Vキット付属のまま
周波数特性5Hz〜20kHz+0dB、-0.7dB
雑音歪み率特性最低歪率0.06%(80kHz)1kHz

周波数特性は、元の特性と比べて20kHzあたりが心持ち下がる程度のセッティングとしてあります。フィルタの定数を82Ωと330Ωとすればもうすこしまっすぐになりますが、雑音歪率が2割ほど悪くなります。フィルタをつけたおかげで雑音歪率がちゃんと測定できるようになりました。歪率特性図中の細い線は80kHzのローパスフィルタをかけた状態のものです。真空管アンプですとそれくらいの帯域から上がカットされますから、そういった条件を想定した特性だと思ってください。



当サイトの掲示板に、上記のローパスフィルタをうまく組み込んだ例(by mac氏 & T氏)の投稿がありました。キットの付属部品を無駄なくをそのまま活かせる賢い方法ですのでここでご紹介しておきます。

(1)C5、C6はキットの基板上には取り付けないで、C5、C6の4つの穴を利用してそこから線を引き出します。
(2)別のラグ板上にローパスフィルタを組みますが、C5、C6もそのラグ板上に組み込みます。
(3)ローパスフィルタの入力と出力を(1)の4つに穴につなげば完成です。なお、基板上のC5、C6のところに描かれている白いマーキングがある側にローパスフィルタの出力(戻し)をつなぎ、反対側にローパスフィルタの入力をつなぎます。
(4)なお、ローパスフィルタのアース側は、キットの基板のRCAジャックの左右いずれか側から引き出したらいいでしょう。

右の画像では、あり合わせの抵抗やコンデンサを組み合わせて使っているのでラグ板上が少々込み入っていますが、これを見ればどんな風にしたらいいかよくわかると思います。ご注意としては、この例では誤ってRCAジャックの赤・白を逆に取り付けてしまったとかで、左右の配線がクロスするというへんてこなことになっています。まあ、ちょっとした頭の体操です。

平ラグパターンを2つほどご紹介しておきます。部品配置やアースの取り方にはほとんど制約はありませんので、みなさんそれぞれに工夫してみてください。


●LC 1段ローパスフィルタ例

フィルタ回路は、インダクタとコンデンサを組み合わせたものです。青い線がCR型で赤い線がLC型です。LC型はインダクタのQ値によって肩特性が著しく変化しますので、条件次第ではこの図のように減衰する手前にピークができます。Q値の制御は、インダクタ自体の直流抵抗(DCR)と負荷側にコンデンサと並列に入れる抵抗とで行います。グラフは2.2mH+0.012μFのものですが、最終的には左下の回路図の定数になりました。

インダクタの値は、470μHから4.7mHまでさまざまな値で実験をしました。どの値でもチューニングさえしてやれば実用レベルの音を出しますが、1mH以下ではPCM2704からみた負荷が重くなるので歪が増加します。インダクタンス値を高くしてゆくと歪は減ってきますが、インダクタの共振周波数が下がってくるため高周波領域でのフィルタ効果が得られにくくなってきます。2.2mH〜3.9mHあたりが折り合いをつける手頃な値な気がします。一方で、リードタイプのインダクタがのきなみ製造中止となり入手可能なものでやりくりするという事情もあります。2.2mHの場合は0.012μFと330Ω、2.7mHの場合は0.01μFと390Ωです。

測定項目備考
出力信号電圧0.61Vrms0dBFS時、1kHz
残留雑音(S/N比)190μV (70.1dB)
23μV (88.5dB)
13μV (93.4dB)
帯域=2MHz
帯域=80kHz
帯域=20kHz
C5,6値470μF/10V変更
周波数特性7Hz〜20kHz+0dB、-0.3dB
雑音歪み率特性最低歪率0.045%(80kHz)
最低歪率0.008%(20kHz)
1kHz

周波数特性は下図のとおりです。非常にきれいなフラットネスが得られています。ところで、歪率のデータが2つあります。左側は太陽誘電のLHシリーズで、右側は秋月で扱っている台湾製のマイクロインダクタ1mHを2個直列にしたものです。秋月のは超廉価なのでこれが使えたらよいな、と思って試してみました。残念ながら200mV以上で歪がどんどん増えてゆき、また周波数が高いほど劣化が目立ちます。インダクタは、インダクタンス値が規定値であればいいわけではなく、オーディオ信号を流した時に生じる歪の程度をチェックして低歪のものを選ばなければなればなりません。日本の大手メーカーのものでも歪が多いものが結構あります。

参考までに、1mH×2と2.2mHにおけるデータです。2.2mHzは太陽誘電のアマガエル、1mH×2は秋月のものです。すべて0dBFS時の値ですが、見やすくするためにグラフをずらしてあります。2.2mHと2.7mHとではほとんど同じ結果が得られますが、10kHzにおける歪率は2.7mHの方がわずかに有利な数字を出します。


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