私のアンプ設計マニュアル / 雑学編
16.リスニング・ルーム

おことわり

この章は、我が家の生活様式、私の好き嫌い、私が「こうありたい」と思っていることなどについてご紹介しています。多くのみなさんの嗜好や趣味とは合わないと思いますが、何かの参考くらいにはなるかもしれません。せいぜい、その程度の内容です。


雑誌などでよく、リスニングルーム探訪の記事が載っています。たいていは、お父さんがオーディオの趣味を持っていて、専用のリスニング・ルームがあって、正面には大型のスピーカーやビデオ・スクリーンなどがあり、部屋の中央にはヒアリング用の豪華な椅子、そして壁にはラックにきちんと整理されたさまざまなオーディオ機器があります。壁一面がレコードラックなんていうお宅のよくみかけます。

私の場合、こういう雰囲気がだめなんです。おそらく、こういう部屋には音楽好きの家族も寄りつかないだろうし、私も落ち着きません。うちの奥さんは、大きなスピーカーが嫌いです。その理由は、部屋の景観を損ねるから、というもの。そのくせに、出てくる音にはことのほかうるさい。球を替えて遊んでいると「なんかいじったでしょう。その音、すきじゃないわ、わたし。」とくるのです。Rogers LS3/5Aなどという小型スピーカーがメインシステムなのも、そういう理由が背景にあります。機材も、最小限のものしか置いていません。

それは、部屋の雰囲気になかに、できる限りオーディオ機器のにおいをいれたくない、できれば、絵画や家具や照明や植物といったインテリアで雰囲気をまとめたい、という欲求が根底にあります。この部屋は、おしゃべりや読書やティータイムをする部屋です。そういった中に、普段の生活と一緒なって音楽があり、あるいは時として音楽だけに集中したりもします。

左の画像:かるばどす氏提供のHomePageより

これは、吹き抜けになっている2階ロビーから我が家のリスニング・ルームを見下ろしたところです。リスニング・ルームというよりは、インドア・ガーデン・ルームといった方があたっています。写真では、白いテーブルが1つ、椅子5脚が散らばっています。同じテーブルをあと2つ出して大きなクロスをかけ、椅子を増やすと、6人から10人用のパーティー・テーブルが出来あがります。普段出ているのは、テーブル1つ、椅子は2脚だけです。ところで、写真右の部屋からわずかに円卓が見えていますが、こちらでも最大8人のディナーをセッティングできます。

このリスニング・ルームに隣接して左側に防音設備のある音楽の練習室があります。そして、練習室のガラス扉を全開にすると、練習室はステージになり、このリスニング・ルームと右奥のダイニングが客席になり、吹き抜けが音響効果を高めてくれるようになっています。

私は、天井の高さが非常に重要だと感じています。どんなに広い部屋であっても、天井が低いと得られる音はストレスの多いものになります。面積はなくとも、高さがあると実にのびのびとした、美しい響きが得られます。それは、マンションからこの家に移って最初に感じたことでした。いや、ほとんどカルチャーショックといっていいほど大きな変化だったのです。もうひとつ重要なポイントは、壁や床の材質と構造です。通常、私達が洋間と呼んでいる部屋は石膏ボードを貼った四角い箱です。畳の和室と対照的な部屋だと思っていますが、残念ながらこの構造の部屋から洋風な音は期待できません。西洋音楽らしい響きが欲しければ、「石膏」ではなく「石」が必要です。石膏ボードは叩くと「ぼこぼこ」と鈍い響きがしますし、叩き方を変えると「ぼーんぼーん」という太鼓のような音もします。

左の画像は吹き抜けの部屋を下から見上げたところ。画像では上半分が写っています。

これが濁った音を生む犯人です。しかし、日本の住宅で石造りというわけにもゆかないので、壁は3面が煉瓦タイル張り、残り1面はほぼ全面高さ6mまでペアガラスとしました。床はコンクリートの上にテラコッタ・タイルを貼っています。天井は一部ペアガラス、残りがクロス張りですので相当にライブな空間ですが、音のクリアさは失われていません。壁は広い意味では太鼓構造ですが、タイルを貼ったおかげで鈍い反響がなくなりました。また、床には空洞は全くありませんが、そのおかげでLS3/5Aから豊かな低域が得られています。尤も、1Fは狭いですが、2階の手すり(写真に白く写っています)の手前は廊下、踊り場、そしてロビーがあるので相当に大きな空間になっています。構造上、このリスニング・ルームはオープンな造りなので、ここで鳴った音は家中に伝わります。プライベート・ルーム以外のほとんどすべてのエア・ボリュームを音のために使っている、と考えていいと思います。音楽を楽しむ特等席は、実は、2階のロビーです。1階の音が、ほどよく立ち昇ってきて、どこかのリゾートホテルの吹き抜けのラウンジで寛いでいるような気分にさせてくれます。

幸い、家族全員がクラシック・ファンであり、オペラ狂いであり、ジャズもボサノバもフレンチもイタリアンも聴きます。だから、こんな構造でモメずに済んでいるのでしょう。もちろん、各個人はそれぞれ別にプライベートなシステムを持っています。

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