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■■■FET差動バッファ式USB DAC Version2■■■
Simple and High Performance USB-DAC with FET Differential Buffer

ご注意&免責事項:この記事は書きたてのほやほやですので、いつものことですが回路図や記事に誤りが残っている可能性がありますのでよろしく。

2012年に発表したFET差動バッファ式USB DAC(Version1)はDC24VのACアダプタを使います。実はこれを設計した当初から、USBのVbus電源を流用してDAC用の電源回路を構成することで外部電源を省略できないだろうか、という考えがありました。そもそもは、ACアダプタを使わないでFET差動バッファ式USB DACを作るつもりだったのです。しかし、DC5VをDC24Vに昇圧するためのDC-DCコンバータのスイッチングノイズ対策やUSBホストPC側の電力負荷など、考えなければならない課題がたくさんあったためにこの方式は見送りになりました。しかし、なんとか実現できないものかという考えがくすぶり続けて4年が経ちます。

実際に設計を始めてみると、電源のノイズはさほど問題にはならず、フィルタ回路を仕上げることの方が難航しました。そして、ようやく完成したのが本機です。


●ハイライト

(1)高価なライントランスを使わずに比較的廉価にAKI.DACを実用レベルにアレンジできないか、というのがひとつめのテーマです。アクティブフィルタというと、エミッタフォロワを使ったものとOPアンプを使ったものが広く知られています。この回路を眺めているうちに、ちょっと工夫すればFET差動1段回路でも実現できるということに気づいたのがことの発端です。まず見かけないユニークな回路ですが、これがなかなか良い音を出します。

(2)ふたつめのテーマはPCのUSBによる電源供給です。PCから供給される電源を「どうせデジタルノイズだらけ」と嫌う人はかなり多いようで、AKI.DACにおいてもUSBのVbus電源を切り離して別電源から供給した記事もよく見ます。ましてやVbus電源にスイッチング方式のDC-DCコンバータを重ねた電源など、もうありえないと言う方も多いでしょう。「電源はトランスから整流したものでなければ話にならない」という声も聞こえてきます。

レコーディングの現場で必ずといっていいくらい登場するNeumannのU87はマイクロフォンの最高峰とも言われ、プロエンジニアの間では絶大な信頼があります。そんな人々が、このU87がDC-DCコンバータを内蔵していてコンデンサマイク・カプセルのための高圧を得ていること、そしてそのためのファンタム電源はなんと音声ケーブルに相乗りして供給されているという事実を知ったら何と言うでしょうか。

というわけで本機では、PCから供給される5VのUSBのVbus電源を使い、さらにDC-DCコンバータで24Vまで昇圧して回路を動作させます。こうすることで外部電源が不要になり、ケーブルが1本減って扱いが容易になりました。設計&製作は課題山積で、4台の試作機を経て2017.1.23にようやくこれなら公開できそうだというレベルの完成をみました。試作4号機はベテラン音響エンジニア諸氏の試聴評価でお墨付きをもらっています。

私は、このDACをパッシブ型ライン・コントローラに組み込んだので、このレポートの画像では入力セレクタやボリュームがついています。

パッシブ型ライン・コントローラの解説はこちら→ http://www.op316.com/tubes/pre/passive-pre.htm


●TI PCM2704と秋月電子のDACキット(AKI.DAC-U2704)

本機の母体となる秋月電子の廉価なDACキット「AKI.DAC-U2704」についてはこちらのページ(http://www.op316.com/tubes/lpcd/aki-dac.htm)を参照してください。

●供給電源の考察

USBのVbus電源
USBは、Universal Serial Busの略でコンピュータ等に周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の1つです。USBの仕様は近年著しい変化をみせていますが、最も普及しているUSB2(2000.4公開)のVbus電源の仕様は以下の通りです。
・ホスト側電圧:5V(4.75V〜5.25V)
・機器側電圧:5V(4.4V〜5.25V)
・電流:500mAmax
USB2の場合、ホストから取り出せる電力の上限は5V×500mA=2.5Wということになりますが、実際には取り出す電流が多くなるにつれて5Vが維持できずに徐々に低下してきます。また、調子に乗って大電流を取り出すとホストであるPC側の負担が重くなってPCが過熱したりバッテリーが消耗します。AKI.DACはminiBタイプのUSBコネクタを使用していますが、このコネクタは大電流には適さないということも考慮しなければなりません。USB接続機器では、Vbusから取り出す電流はできる限り少なくするのがお約束です。
AKI.DACの電源
AKI.DACの電源仕様データは明記されていませんが、公開されている回路図から推定すると4V〜6Vの広い範囲でも問題なく動作するものと思われます。消費電流を実測したところ約24mAでしたが、PCM2704の消費電流の定格が23mA(無信号時)ですからAKI.DACの全消費電流の大半はPCM2704にまわっているということがわかります。

右図はAKI.DACの電源回路の周辺を切り出したものです。USB端子の右にあるF1はポリスイッチ(※)で常温時のDCRは約8Ω、ポリスイッチの電流定格は100mAかそれ以下のようなのでAKI.DACはローパワーデバイス扱いです。24mA×8Ω=約0.2Vの電圧降下が生じているため、ホストから5Vが供給されている時のポリスイッチを通った後の電圧は約4.8Vです。

※ポリスイッチ・・・電流を制限する素子で、通常は数Ωかそれ以下の抵抗値ですが、一定の電流値(トリップ電流という)を超えると急激に抵抗値が大きくなって電流を制限する自己回復型の切れないヒューズのようなもの。
PCM2704を動作させる電源はNJM2845によって安定化された約3.3Vの電源です。この安定化電源の手前にはVbus電源に含まれるノイズを除去するためのフェライトビーズ(L1)とC13、C14があり、このフェライトビーズを通ったことで電源電圧は約4.7Vに下がります。もっとも、NJM2845は入力電圧が4Vくらいまで下がっても十分に安定した3.3Vを出力する能力を持っていますから、ホストからの供給電圧が5Vから4.3Vくらいまで低下してもAKI.DACとしては問題はありません。
本機のためのAKI.DAC基板からの電源の取り出し
本機の電源は5Vで100mA程度でまかなうことを想定しています。そこで問題となるのが、AKI.DAC基板のどこから本機のための電源を取り出すかということになります。実装的に最も容易なのは後付けコンデンサであるC14の両端です。C14のリード線を基板の裏側で長めに出しておけば、そこに線材をからげることができるからです。しかし、このポイントではポリスイッチ(F1)とフェライトビーズ(L1)による電圧降下が生じてしまうので、100mAも取り出すとホストからの供給が5V確保されていたとしても3.8V以下に下がってしまいます。というわけで、このポイントから本機の電源を取り出すことはできません。

電圧降下の懸念なく一定量の電流を取り出せるのは、回路図中の●印(USB端子とF1の間)のところです。現実的には、AKI.DACの基板のUSB端子のすぐ脇、F1を取り付けているわずかなハンダ面だけです(右画像)。マイナス側は●印(C14のマイナス側)しか選択肢がなく、ここから取り出して問題ありません。

注意点としては、上記のポイントから電源を取り出すとVbusの過電流を制限するものがなくなるので、本機側の電源回路内でショート事故が生じるとPCのUSB回路を傷めるリスクが生じます。私は、作業中に2度Vbusのショート事故を起こしましたから、多くの方がやってしまうだろうと思います。PC側が過電流を検出するとOSの保護メカニズムが働き、一時的にVbusがシャットダウンされてUSB自体が使用不能になります。これを復帰するには、過電流の原因を取り除いてPCを再起動する必要があります。もし、PCを再起動してもUSBの機能が復帰しなかったら、OSによる保護が間に合わなくてUSBが壊れてしまったと思っていいでしょう。

DC-DCコンバータMAU108の採用
本機のFET差動回路は20V以上の電源電圧を必要としますので、DC-DCコンバータを使ってVbusから得たDC5Vを24Vまで昇圧しなければなりません。5V入力で24Vが得られる廉価でコンパクトなDC-DCコンバータのひとつにMAU108があります。MAU108についてはこちら(http://www.op316.com/tubes/datalib/dcdc-mau108.htm)に解説と実験レポートがありますので、是非お読みください。

MAU108は1W型のDC-DCコンバータで、5Vの入力で24Vの出力電圧が得られ、最大42mAの出力電流を取り出すことができます。MAU108の良いところはスイッチング周波数が比較的扱いやすい100kHzに設定されているということです。周波数がこれより低いと効率が低下するし、高すぎるとノイズの始末が難しくなります。100〜500kHzというのは性能の良いLPFが作りやすい帯域だといえます。MAU108の長所は、小型で高効率かつ入出力ともにノイズが少ないことで、欠点は出力電圧の安定化フィードバックを持っていないことです。しかし、FET差動回路は消費電流が定電流化されているので電源が安定化される必要はありません。

MAUシリーズのテクニカルドキュメントはこちら。→http://www.op316.com/tubes/datalib/image/mau100.pdf
すべてのページに目を通してほしいですが、特に重要なのは3ページのデータと5ページの解説です。

MAU108を、入力電圧=5V、出力電流=10mAで動作させた時の出力電圧の実測値は約25Vです(左下図)。また、その時の入力電流は約80mAです(右下図)。本機の全消費電流を100mA程度にするためには、FET差動アンプの消費電流は8mA〜13mAあたりでやりくりしなければなりません。

出力電圧vs電流特性 入出力電流特性


●回路図および説明

回路図は以下のとおりです。(2017.1.24版)

ボツになった試作機の回路

LCフィルタ部
デジタルノイズをカットするための一段目のLPF(ロー・パス・フィルタ)は、2.7mHのインダクタと0.01μFそして470Ωのダンプ抵抗です。頒布しているグレーのインダクタは272K(2.7mH±10%)と表記されていますが、実測すると2.54mHくらい、DCRは約8Ωです。本機の回路定数は実機の環境で実測してチューニングしてあります。

LPFフィルタの設計では2つのことを考慮する必要があります。1つめは、LPF本来の機能としての22kHzから上の周波数帯域をどのようにカットするか、2つめはカットされない帯域(22kHz以下)のフラットネスをどうデザインするかです。LCフィルタは-12dB/octの減衰特性を持ちますが、インダクタとコンデンサと抵抗それぞれの値によって肩特性が変化します。後述するアクティブフィルタの設計如何で肩特性が変化しますから、両者の特性をそれぞれどうデザインして総合特性として仕上げるかをよく考えなければなりません。

LCフィルタでは、ダンプ抵抗値が小さいと高域側の減衰の肩の部分がなだらかになり、大きいといかり肩になって、さらに大きいと小さな山が現れ、撤去すると激しいピークが現れます。一方でダンプ抵抗値はAKI.DACのC5/C6との関係で超低域側にも影響があるため、本機では大きめの470Ωとして高域側の減衰の肩の部分にはわずかなピークを作り、後述するアクティブフィルタ側でなだらかな肩特性とすることで全体としてのフラットネスを得ています。このあたりのバランスをどうするかはさまざまな組み合わせがあります。

FET差動アンプ+アクティブフィルタ部
FET差動アンプの役割は、増幅とさらなるデジタルノイズの除去です。

デジタルノイズ除去のために、FET差動回路にVersion1よりも強力なアクティブフィルタを追加で組み込みました。2個の2.7kΩと2個の1500pFがフィルタ素子で、39kHz以上をカットします。出力側のエミッタ負荷抵抗を分割したポイントから帰還をかけてフィルタの肩特性をチューニングしてあります。このチューニングでは、実際に回路を組んでドレイン負荷抵抗の分割比率を少しずつ変化させて最適ポイントを模索しました。最終的に選んだ値は、2.2kΩ+2.7kΩです。このFET差動アンプ+アクティブフィルタとLCフィルタ(2.7mHと0.01μF)の効果を合わせて、30kHz以上をなめらかかつ急峻にカットしています。

当初の試作機ではトランジスタによるエミッタフォロワを省略し、2SK170による差動回路のみとしました。ところが、1kHz以下の帯域は良好ですが数kHz以上では周波数が高くなるほど歪率が増加してしまいました(右のグラフ)。高い周波数で歪が増加する原因は、差動回路の入力側のLPFの抵抗値(2つの13kΩ)でした。この抵抗値を小さくすると5kHz以上の帯域での歪が激減したので、フィルタの定数を低抵抗側にスライドさせ、その変更に対応できるように出力側に2SC1815によるエミッタフォロワを追加しました。

電源電圧が17.3Vであるのに対してドレイン電圧は7V程度とやや低めに設定しています。多くのオーディオアンプでは電源電圧の1/2をめやすに設定するのが普通ですが、限られた電源電圧をより有効に使って高い利得を得るには、ドレイン負荷抵抗側にまわす電圧を高く設定した方が有利だからです。デジタルフォーマットを再生した時の本機の最大出力電圧は約1.4Vでこれを超えることはありえませんから、この振幅をカバーするためにはドレイン電圧は5Vもあれば足ります。ところが、試作機を組んで検証してみると、そこのところで欲張ってみても利得の増加はわずかしか得られないばかりか、ロードラインがJFETの肩特性にひっかかるためにかえって歪が増えてしまいました。ドレイン電圧を下げすぎるのはNGです。

定電流回路で使用する2SK30A-GR(または2SK246-GR)のIDSS値は3.1mA〜3.9mAの範囲のものが使えるように設計しました。この時、ドレイン電圧を一定の範囲に保つ必要があるので、IDSS値に応じドレイン負荷抵抗(回路図中のRd)の値を変更する必要があります。

差動回路のデバイスは、2SK170-BLのほかに2SK117-BLと2SK30A-Yと2SK246-Yでも試作しましたが最終的に選んだのは2SK117-BLです。もっとも、2SK170-BLに差し換えても回路定数の変更なしに十分な性能が得られますが、周波数ごとの歪みの差がやや大きくなります。若干の回路定数の変更で2SK30A-Yや2SK246-Yも使えます。で2SK30A-Yや2SK246-Yでは、周波数ごとの歪みの差は非常に小さくなりますが総合利得がやや下がります。変更すべき回路定数は以下の通りです。

2SK117-BLまたは2SK170-BLの場合:
・ドレイン抵抗:5.1〜6.2kΩ
・定電流回路:Idss=3.1〜3.9mAの2SK30A-GRまたは2SK246-GR
・エミッタフォロワ抵抗=2.2kΩ(上側)、2.7kΩ(下側))
・0dBFS時の出力電圧:2SK170-BL=1.40V、2SK117-BL=1.34V
2SK30A-Yまたは2SK246-Yの場合:
・ドレイン抵抗:11kΩ
・定電流回路:Idss=1.95〜2.05mAの2SK30A-Yまたは2SK246-Y
・エミッタフォロワ抵抗=1.8kΩ(上側)、3kΩ(下側))
・0dBFS時の出力電圧:2SK30A-Y/2SK246-Y=1.20V
出力のDCカットコンデンサは、当初はアルミ電解コンデンサを使いました。ところがアルミ電解コンデンサの漏れ電流の影響で差動回路の右側のゲート側に数mVの電圧が現れて差動バランスが狂ったのと、電源ON後の動作の安定まで相当に時間がかかりました。アルミ電解コンデンサの漏れ電流は電源ON/OFFのたびに変動し安定するのにかなりの時間を要します。そのため漏れ電流の問題がないフィルムコンデンサに変更しました。手頃なサイズで2.2μFが手に入らなかったので1μFを2個並列にしています。

利得すなわちアナログ出力電圧の大きさは15kΩ:20kΩの比率で決まります。利得を下げたい場合は22kΩ:13kΩくらい、利得を上げたい場合は12kΩ:27kΩにすることで最大±3dB程度変化させることができます。但し、フィルタの特性が変わるので再チューニングが必要なのと、歪率は利得に比例して変化します。

電源部
DC-DCコンバータは、入力電源を高速でスイッチングして高周波を作り出し、それを小型の高周波トランスで変圧したものを整流して異なる電圧の直流出力を得るしくみです。入力電源を高速でスイッチングするために、供給電源はそのスイッチングループのスピードに追従できなければなりません。普通のオーディオ電源のように大容量のコンデンサを入れても意味はなく、小容量でいいので100kHz〜500kHzあたりで特に低いインピーダンスとそれを裏付ける低いESRが必要になります。この用途に適しているのがOSコンです。MAU108の入り口のところに入れてある22μF/20VのOSコン(右図のCc)がこの役目を果たします。

DC-DCコンバータは、入力電源側に向けて逆方向に100kHz〜数MHzあたりのスイッチングノイズを放出します(右図の下半分)。MAU108の入力直前に現れる高周波ノイズの実測値は約2.7mV(帯域20MHz)でした。このノイズがAKI.DAC側に逆流されては困るのでノイズ対策が必要です。本機では、22μFのOSコン+0.047μFのフィルムコンと22μHのインダクタによるノイズフィルタを2段重ねることで必要十分なノイズ対策を行っています。2段合わせて100kHzにおいて-70dB以上の十分すぎるくらいの減衰を得ています。ちなみに、私が使用しているThinkPad 430cのUBSのVbus電源に含まれるノイズは約1.0mV(帯域20MHz)でした。

Vbusからの電源の入り口には最低限の安全対策としてポリスイッチを入れました。AKI.DACの基板内蔵のものは常温DCRが8Ωもあるので使用せず、抵抗値がもっと低いものを実装しました。選んだのは0.4AタイプのRXEF040で常温DCRの実測値は約0.7Ωです。しかし、ポリスイッチは動作が緩慢なので急激なショート事故に対しては効果的ではありません。まあ、これが入れてあることでショート事故が起きた瞬間でも0Ωショートになることだけは回避でき、数秒後には電流がかなり制限されるという程度のものです。

MAU108で昇圧した出力電圧は手持ちのPCから供給したVbus電源(4.97V)と本機の動作条件の組み合わせで24.2Vでした。昇圧された出力側にも高周波ノイズが含まれており、これを始末するのが2個直列になった22μFのOSコンと後続のインダクタ(2.7mH)とコンデンサ(1μF)です。整流直後のところで実測したところノイズは1.2mV(帯域20MHz)とかなり優秀でした。このノイズはLCフィルタとCRのフィルタを経て左右チャネルに供給されます。

注意点としては、MAU108は出力側にぶら下げることができる容量に制限があることです。MAU108の場合は各端子ごとに100μFですが、調子に乗って大容量を入れるとMAU108内のダイオードが壊れます。本機では、最も負担が重い整流直後は22μF×2と控えめな値としました。擬似±電源は、コンデンサを抱かせた16kΩと4.7kΩで電圧を分割して作っています。

LEDは、Vbus電源の確認用をつけました。ドロップ抵抗は820Ωですから、Vbus電圧が5V、LEDの順電圧が1.8Vだとして動作電流は、(5V−1.8V)÷820Ω=3.9mAになります。輝度が低い緑・黄・橙・赤が適します。青ですとものすごく明るく輝くのでドロップ抵抗の値を調整してください。このLEDはUSBのVbus電源が送られてきただけで点灯するので、ノートPCによってはPCの電源がOFFになっていてもバッテリーが充電中で点灯することがあります。PCが動作しPCM2704がPCのオーディオを認識したことを確認するためにLEDを点灯させたい場合は、AKI.DACの基板上のブルーのLEDのところから線を引き出す必要があります。

本機をUSBのVbus電源ではなくACアダプタで動作させたい場合は、DC-DCコンバータは削除し、回路図中の<<記号の左側をDC24VのACアダプタと置き換えます。但し、24VのDCアダプタはMAU108よりもノイジーなものが多く、しかもノイズは数百Hzの可聴帯域から分布します(MAU108は可聴帯域のノイズは出ない)ので、S/N比は若干低下するかもしれません。2.7mHに続く100μFを1000μFに増やしてください。

電源ON後の過渡状態の検証
電源回路を構成するコンデンサの総容量は、プラス側が100μF+1000μF+1000μF=2,100μF、マイナス側は470μF+1000μF+1000μF=2,470μFです。本機の電源がONになった直後の初期電圧比率は2,100μF:2,470μFの逆数、すなわち0.54:0.46ですから、プラス側=約13V、マイナス側=約11Vになり、時間とともに変化して最終的に16kΩ:4.7kΩの比率、すなわちプラス側=18.6V、マイナス側=5.5Vに落ち着きます。

電源電圧の安定に要する時間は、30秒で90%、60秒で97%となりました。アナログ出力側に現れる過渡的なDC電圧は、電源ON直後はプラスとなり約30秒で+4mV以下に収束し、電源OFF後はマイナスが現れて約1分で-4mV以下に収束します。こうした現象は本機に限らずあらゆるオーディオ機器で生じているものですので、殊更に神経質になることはありません。PCのUSBの仕様によっては電源ON時に若干のポップ音がしますが問題となるほどではないと思います。電源OFF時にもプツッと小さな音が出ます。

USBとAKI.DACとFET差動バッファ基板間の接続とアースの処理
AKI.DACとFET差動バッファ基板間をつなぐラインのアース側には2種類の電流経路が存在します。
(1)AKI.DACのアナログ出力〜FET差動バッファをつなぐアースにはオーディオ信号電流が流れる・・・太い黒い線。
(2)Vbus〜DC-DCコンバータをつなぐアースにはスイッチング電源のリターン電流が流れる・・・細い黒い線。
ということは、AKI.DACとFET差動バッファ基板を不用意に1本のアースラインでつなぐと、上記の2つの異なるアースが混在して、オーディオ信号が流れるアースラインにDC-DCコンバータのリターン電流が重なって相互に干渉します。この2つの電流経路は完全に分離する必要があります。

そこで、FET差動バッファの基板側のアースはオーディオ回路専用として基板内を引き回すことにして、DC-DCコンバータ側のアースは基板上では絶縁して浮かせています。このようなことができるのは、MAU108が絶縁型のDC-DCコンバータであるからです。非絶縁型にはこういう芸はありません。FET差動バッファの基板とAKI.DACとのアース(GND)および各線路は右図のようになります。

オーディオ回路側のアース(GND)・・・AKI.DACのアナログ出力のアース(GND)とFET差動バッファの基板の入力付近のアース(GND)とをつなぐ。AKI.DAC側のアース(GND)は左右が中でつながっているのでどちらか一方からだけ引き出す。左右別個のつもりで2本引き出しても意味はなく、むしろアースループができるのでNG。

オーディオ回路の左右の信号ライン・・・右図のとおり。

Vbus電源のマイナス(アース)側・・・AKI.DACのC14のマイナス側とFET差動バッファのDC-DCコンバータ側のマイナス側をつなぐ。

Vbus電源のプラス側・・・AKI.DACのF1のUSBコネクタ側とFET差動バッファのDC-DCコンバータ側のプラス側をつなぐ。


●部品のことなど

2SK117-BL or 2SK170-BL・・・無調整で一定の差動バランスを得るために、バイアス特性が揃ったペアを選別して使います。これまで頒布していた2SK117は選別精度が低かったので、本機のために高精度で再選別するように変更しました。

2SK30A-GRまたは2SK246-GR・・・定電流素子として使うので、IDSS=3.1mA〜3.9mAのものを選別して使います。IDSS値が3.3mA以下の場合はドレイン抵抗値を6.2kΩに変更し、3.7mA以上の場合はドレイン抵抗値を5.1kΩに変更します。

フィルタで使用するコンデンサ・・・1500pF、0.01μF、0.047μFは通常のフィルムコンデンサで十分です。1500pFと0.01μFは相対的に値が揃ったペアが良いので可能であればLCRメーターで選別してください。選別済みのものを頒布する予定です。

出力の1μFコンデンサ×2個並列・・・フィルムコンデンサを推奨します。このサイズで2μFのものが手に入るのであれば1個でOK、わざわざ2個並列にする必要はありません。アルミ電解コンデンサは漏れ電流の影響で差動バランスが狂うので使えません。

電源の1μFコンデンサ・・・積層セラミックコンデンサまたはフィルムコンデンサを推奨します。容量は0.47μF〜2.2μFくらいで厳密さは要求しません。

DC-DCコンバータ周辺の22μFコンデンサ・・・22〜47μFくらいのOSコンを推奨します。MAU108は100kHzにおいてESRが1Ω以下のコンデンサを指定しています。本機で採用したOSコンのESRは0.05Ωと非常に低い値でした。アルミ電解コンデンサですとESRは0.5〜1Ωほどもあるのでフィルタ効果が低下します。

その他の100μF〜1000μFコンデンサ・・・通常のアルミ電解コンデンサあるいは低ESRタイプを推奨します。

LPFの2.7mHインダクタ・・・LPFで使用する2.7mH(DCR=8-9Ω)はオーディオ帯域において低歪みが要求されるので頒布しているものを推奨します。

電源の2.7mHインダクタ・・・厳密さは要求しないので、1mH〜3.3mHくらいでDCRが30Ω以下、高周波特性が良好であれば大概のものが使えます。

電源の22μHインダクタ・・・小型のアキシャルタイプでインダクタンスは22〜47μH程度、DCRは0.4Ω以下で定格電流が200mA以上のものを推奨します。

ポリスイッチ・・・遮断しない定格電流が0.4A、トリップ電流が0.8Aで常温DCRが低いRXEF040を使用しました。ポリスイッチに関するわかりやすい解説はこちらサイトがよろしいかと思います。→http://www.nahitech.com/nahitafu/trg78k/poliswitch.html

LED・・・私の製作ではDAC側の確認程度のためなので廉価な橙色のLEDを後面パネルに取り付けています。前面パネルで点灯させたい場合はもう少し格好の良いものをつけたらいいでしょう。動作電流は3.9mAなので低輝度のものが適します。青色は害して高輝度なのでドロップ抵抗の値を適当に調整してください。

* * *

★ようやく頒布の準備ができました
http://www.op316.com/tubes/buhin/buhin.htm


●製作

AKI.DACキットの組み立て
詳しい説明はこちらにあります。→ http://www.op316.com/tubes/lpcd/aki-dac.htm
AKI.DACの基板に実装するCR類でキット付属のものと異なる定数は以下の通りです。(表中のC5〜C17はAKI.DACの取説の回路図中の記号)

回路図部品名キット付属変更後
C547μF/25V470μF/10〜16V(直径8mm以下のもの)
C647μF/25V470μF/10〜16V(直径8mm以下のもの)
C1147μF/35V220μF/10〜16V
C14470μF/25V1000μF/10〜16V
C16100μF/35V220μF/10〜16V
C17100μF/35V220μF/10〜16V

基板パターン
現在進行形の基板パターンは下図のとおりです。

抵抗器やアルミ電解コンデンサは足が太めなのでできるだけ同じ穴でジャンパー線とかぶらないように工夫してあります。OSコンは足が細く差し込んだ時にぶかぶかで安定せずハンダづけしづらいので意図的にジャンパー線とかぶるようにしてあります。製作しやすいように各自工夫してください。画像では手持ちのジャンク部品も活用しているので頒布部品とは異なるものもついています。(画像はクリックで拡大)

基板パターンを設計するにあたって考慮したこと:

基板実装上の注意点:

全体の組み立て
すでに詳しく解説したとおりにAKI.DACとFET差動バッファ基板とをつなぎ、FET差動バッファ基板からの出力をRCAジャックにつなげば電気系は完了。画像では音量調整ボリュームをつけたために出口側でシールド線をつかいましたが、ボリュームをつけない場合はシールド線にする必要はありません。これらを適当なケースに収めれば完成です。

パネルの文字は、以前はインスタントレタリングをよく使いましたが画材屋が置かなくなったため入手が困難になりました。レーザービームプリンタ(またはコピー機)で接着式の透明フィルムに印字したものをカッターで切って貼り付けています。少々見栄えが悪いですが、手軽に作れるのと文字をこすってもはがれなところが◎です。

調整と動作確認
指定部品で製作する限り本機は調整箇所はありません。各部の電圧が回路図中の値からかけ離れていなければOKです。

重要・・・USBのVbus電源の電圧が下がると本機の電源電圧もそれに応じて下がります。そうなると差動回路の各ドレイン電圧が7Vを大きく割って歪みがじわじわと増加するので、Vbus電源の電圧が十分高めに確保されているかどうかは重要なチェックポイントです。PCについている複数のUSB端子は、内部的にそれぞれに別個の電源回路に分かれているものと、中で共通化されているものとがあります。共通化されているPCでは、どれかひとつのUSB端子に外付けHDDなど消費電力量が大きなデバイスがつながっていると、別のVbus電源の電圧も下がってしまいます。この記事のデータは、Vbus電源の電圧=4.97Vで測定していますが、お持ちのPCやPCの周囲の条件によってこの電圧はまちまちです。本サイト記載どおりの性能を出すためにはできるだけ4.9V以上を確保することを推奨します。


●特性

本機の特性は以下のとおりです。

消費電流の測定結果は次のとおりです。MAU108の入力側にあるインダクタ(22μH)のDCRは0.32Ωで動作中の両端電圧は27.3mVでしたので、MAU108の消費電流は、27.5XmV÷0.32Ω=88mAとなりました。

周波数特性は以下のとおりです。

歪率特性はご覧のとおりです。何台もの試作を経てこれくらいのところで落ち着きました。デジタルノイズやパルス性のノイズが乗っていると0.1V以下での歪率測定が困難になるのですが、本機は0.03Vでも測定値に乱れがありません。データは、左から2SK117、2SK170、2SK30Aでそれぞれに特徴が出ています。

上記の3つともに歪率に大差がないように見えますが、AKI.DACと切り離してFET差動アンプ単体で評価すると歪みの量にはかなりの差があります。0.7V出力時の1kHzの歪率は、2SK170=0.005%、2SK117=0.005%、2SK30A=0.02%です。


●コメントなど

ストレート&ワイドレンジで雑味のないキレの良い音といえばいいでしょうか。
物理スペックもVersion1を超えることができました。
外付けの電源いらず、USBケーブルをつなぐだけで動作することがこんなに便利だとは予想以上でした。

2017年のお正月に、19V版のミニワッターとセットで音響エンジニア諸氏に聞いてもらったところ、「使える」というコメントを得てホッとしているところです。

「USBのVbus電源なんか・・・スイッチング電源なんか・・・」と頭からダメ出しする人も多いと思いますが、まあ騙されたと思って期待しないで作ってみたら、予想と結果とのギャップを味わえて面白いと思います(笑)。



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