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私のアンプ設計マニュアル / 雑学編 1.私の自作観 |
自分ですることの価値人の脳や体は、自分で考えたり作業したり歩いたり工夫したり作ったり・・・いろいろなことをするようにできているのだそうです。そして、そういう使い方をしないと調子を崩してしまったり機能しなくなったりします。
休日に部屋で寛いでいてコーヒーが飲みたくなったとします。自分はそのままぼけっと座ったままで誰かにコーヒーをいれて持ってきてもらったり、飲み終わったら誰かが下げてくれるのと、自分でキッチンまで歩いていって、コーヒー豆や器具を出したりお湯を沸かしたりしてようやくコーヒーができ、それを持って部屋に戻り、飲んだ後はまた自分で下げて食器を洗う、というのとの違いです。自分でコーヒーをいれるとなると、豆を買いに行き、行った先で今日はどの豆にするか悩んだりするでしょうし、コーヒーをいれる時もお湯の温度の加減とか豆の蒸らしとか、いろいろと考えなければなりません。おいしくいれることができなくても、とびきりおいしくできても、なんでだろう?と考えるようになります。コーヒーだけではちょっと物足りないので、タルト生地など仕込みつつ林檎をむいて火にかけて調理し、それを入れた林檎のタルトを作ったりしようものなら、すること、考えることが急に増えて脳も手お大忙しになります。
オーディオ・アンプの自作もこれと同じです。こんな面倒くさいものをわざわざ自分で作る必要はあるのか、それは大袈裟にいうと、可能ならば作った方があなたのために、ひいては人類のためになるということになります。脳は使わないと老化(劣化)が早まるのだそうです。体の機能も同様です。「便利」と「老化(劣化)」とは表裏一体をなすものです。
モノを自分で作っていると「面白い」と感じますが、これは脳が喜んでいることを意味します。モノをうまく作るためには、何度も失敗を重ね、学習しなければなりません。頭でしくみを理解したり、あるいは体で覚えたり、そうやって経験が蓄積していきます。ここで申し上げたいのは、持っている知識や経験の多さではなくて、そういうプロセスの重要さです。「よく知っていること」よりも「考え工夫する行為」の方が重要であり、上等であるということです。
「1個6万円もする出力トランスにベルマークの300Bを投入したにもかかわらずアース配線がでたらめなアンプと、ペアで3000円のEHのEL34と手ごろな価格の出力トランスFE-25-8を使った静粛かつ安定に動作するアンプと、一体どちらが上等かというと、もしかしたら前者の方が価格的には上等かもしれません。しかし、前者のアンプを作った人と、後者のアンプを作った人を比べたら、アンプ製作者としては後者の方が上等であることに異論はないでしょう。」という文章をこちらのページに書きましたが、同じことを言わんとしています。
* * *自作で陥りがちな傾向あなたがコーヒーを上手にいれることができるとします。コーヒーを飲みたいな、でも面倒くさいしな、という人がいたら「じゃあ、僕がおいしいコーヒーをいれてあげるよ」と言っていれてあげるわけです。「君がいれたコーヒーはほんとにおいしいね、ありがとう」と言われて悪い気はしません。もし、ここでコーヒーをいれてもらった人が「僕が作った林檎のタルトを一緒に食べましょう。これ、おいしいですよ」と言って二人でつくる楽しいコーヒータイムになったら、もう何も言うことはありません。
しかし、たぶん世の中はそうではありません。あなたがその人にコーヒーをいれてさしあげる時には、あなたは毎回講釈をせずにはおれないでしょう。コーヒー豆の産地の気候や積出し港による違いからはじまって、器具による違いからペーパーの違いまでたらたらと。そして、もう一人が作ったその林檎のタルトは、たぶんおいしくないでしょう。千疋屋で買ってきた高級林檎を使い、タルト生地は大理石の調理台で作っているのだけれど、何を作ろうとしたのかわからない食べ物が出来上がっています。
自作オーディオでは、良い音のものを作りたい、できればデザインも良くしたい、という願望が働くものですがなかなか実現できません。出口を求めて部品教に入信する人、回路教に入信する人、貼り物教あるいはケーブル教に私財を投じる人がでてきます。そんな風に自分失いかけたと思ったらこの扉を開けてみてください。怪しげな導師があなたをより危険な道に導いてくれるかも。
* * *キットは自作といえるかキットは自作の範疇に含まれます(キッパリ)。「キットなんか自作ではない」という人がいたら、その人はキットの話題に乗じて単に自慢したいだけなのです。そんな程度の低い人と議論するのはばかげていますから適当に褒めてさっさと帰ってきましょう。
どんなものでも自力で作るためには非常に多くの知恵や工夫や技術が必要です。半田づけひとつとっても、熟練するには相当の訓練が必要です。回路図なんか描けなくても、シャーシの穴あけなんかできなくても、最高の半田づけができたら大いに自慢してください。「キットなんか自作ではない」という人の下手糞な半田づけを見て、悟られないように「くすっ」と笑ってやりましょう。(半田づけがへたくそな薀蓄野郎はものすごく多いのです!)
キットは、ベテランにとってもものすごく愉しい工作です。熟練したベテランがてがけたキット工作は、仕上がりが格段に違います。ものづくりの技術は非常に幅広いものです。はじめて作ろうというのでしたら、家でも、家具でも、オーディオ・アンプでもキットではじめたらよろしい。そこで学ぶことはたくさんあります。但し、キットからちゃんと何かを学んでくださいね。お願いしますよ。
* * *大切なこと考えること。何故?と疑問を抱くこと。何故なのかみつけようとする態度。学習すること。当たり前だと言われていることに疑問を投じること。頭だけで考えないこと。実験をして確かめること。経験に頼らないこと。知識を自慢しないこと。自分でやってみること。人に頼り過ぎないこと。失敗しても落ち込まないこと。周囲に迷惑をかけないこと。怪我をしないこと。命を落とさないこと。
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