6G-A4汎用シングル・アンプその2
6G-A4 SE Amplifier No.2

6G-A4sその1で紹介したアンプはそれなりのアンプには仕上がりましたが、A2級に魅力を感じなかったことと、得られた音もいまひとつであったため、思い切って改造したのがこの6G-A4sその2です。カソード・フォロワによる直結A2級ドライブを廃して、CR結合によるA1級に変更しています。

ドライバ段と出力段との間で綿密な2次歪みの打ち消しを行っており、このあたりの詳細は、本HP上の説明のほか、「無線と実験」誌1995年12月号のSIDEWINDER・・・MJ無線と実験1997年5月号にて「Sidewinder of the Year受賞」・・・に掲載されています。(注:同記事中の回路定数、真空管名に誤りがありますのでご注意ください。)



■特徴

<初段・ドライバ段>

初段にはFET 2SK30A(Y)(接続は右図のとおり)、ドライバ段には6SN7-GTをパラレル接続で使用しています。初段のドレイン負荷抵抗は16kΩで、このままだと20倍以上の利得が得られるところですが、ソース側の抵抗(470Ω)にバイパス・コンデンサがないため電流帰還がかかっていて利得は14倍程度です。

初段とドライバ段は直結になっていますが、真空管回路における直結回路と違って、前段(2SK30)のドレイン電圧が低いので6SN7-GTのカソード電圧も高くならずに済み、いい感じで直結できました。初段が真空管ではないことのメリットはまだあって、電源ON直後も6SN7-GTの第1グリッドが高圧にさらされることがありません。

しかし、不具合もあります。6SN7-GTという球はCg-pが大きいのでミラー効果で入力容量が大きくなっている上に、パラレル接続にしてしまったので入力容量がさらに2倍になってしまいました。高域特性に関する限り、パラレル接続はいいことありません。本機の無帰還時の高域特性に若干の不満があります。この状態で高域特性を良くするには、初段ドレイン負荷抵抗の値を小さくするしかありませんが、小さくすると今度は歪みが増加してしまいます。16kΩという値はその妥協点といえます。

Name 外観 >構造 ヒーター ピン接続
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 >No.7 No.8
6SN7GT US 双3極 6.3V×0.6A 2G 2P 2K 1G 1P 1K H H

<出力段>

6G-A4は、ごく一般的な固定バイアス動作です。最大プレート損失はスペック上では13Wもありますが、ほんとうに13Wを食わせると相当に高温になってしまいます。2A3に対抗して無理なスペックで発表したとしか思えません。そこで本機では10W〜11W程度に抑えています。それでも6G-A4にとっては過酷な条件です。

ドライバ段と出力段との間での2次歪みの打ち消しを効果的に行うためにOPT2次側の32Ωタップを使ってカソードNFをかけています。

本機もその1のアンプ同様さまざまな出力管の差し替えができます。EL34(3結)、5881(3結)、6AH4GTの3種について歪み率を測定してみました。(6AH4GTだけはピン接続が特殊なのでアンプ内部の接続を換えての測定です。)すべての球について2次歪みの量のバランスは、ドライバ段<出力段の関係にあります。6AH4GTは、球の用途からみても高歪み率となるのは仕方ありませんが、中域の充実した内容の濃い音を聴かせてくれました。

Name 外観 構造 ヒーター ピン接続>
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8
6G-A4 US 3極 6.3V×0.75A G H P - G - H K

<電源>

整流管5AR4を使用したごく普通の両波整流です。高耐圧ダーリントン接続トランジスタ2SD798を使用したリプル・フィルタ、および初段用の定電圧回路を挿入しています。わずか100Ωではありますが、出力段への電源は左右チャネルに振り分けてデカップリングしてあります。

■構成および各段の動作条件

初段ドライバ段出力段
使用真空管/半導体2SK30A(Y)6SN7-GT(パラ) Sylvania6G-A4 東芝
バイアス方式(Bias)自己バイアス前段と直結固定バイアス
電源供給電圧(Eb)33.3V251V274V
プレート/ドレイン電圧(Ep/Ed)16.8V151.7V266V
プレート電流(Ip)1mA3.28mA42mA
バイアス電圧(Eg1)-0.5V-5V-21V
負荷抵抗(RL)16kΩ23.5kΩ5kΩ
出力トランス(OPT)--TANGO H-5S

■特性

裸利得(RawGain)38.0dB-
最終利得(Gain)26.3dBNFB=11.7dB(KNF=4.0dB,Overall=7.7dB)
周波数特性(FrequencyResponse)10Hz〜90kHz+0dB/-1dB
クロストーク(CrossTalk)53dB10Hz〜20kHz
出力(OutputPower)3.3W5%歪み at 1kHz
歪み率(Distortion)0.09%0.1W at 1kHz
0.35%1W at 1kHz
2.1%3W at 1kHz
ダンピング・ファクタ(D.F.)10.8〜13.110Hz〜20kHz
残留雑音(Noise)0.1mVL-ch,R-ch同一値(A補正なし)

■回路図


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