青春の日々2・・・日課

木村 功


学習訓練は勿論のこと、日常生活は仲々厳しい毎日であった。朝の日課は海軍式の起床ラッパと共に始まる。寝具をたたんで校庭に駈け出す。体操を終って寮室に帰ると朝たたんだ寝具がひっくり返されている。当直生徒が見廻って整頓の下手なものはやり直しである。その上後述の罰が待っているのだ。

掃除を終えて腹ぺこになりガランガランのベルを待って食堂に入る。フォークを取る前に最上級生の一人が大声一番「聞けーっ!」と怒鳴る。続いて「本日寝具整頓の注意を受けた者は食後中庭に来い」もういけない。食事もそこそこに第一分隊と第二分隊の間の所謂中庭に行くと、肩をいからし煙草をくわえた怖いお兄ちゃん達が屯して待ち構えているのだ。「貴様か」「半歩開け」「歯を食いしばれ」二つ三つ喰らって釈放である。運が悪いと一日に二度三度の中庭である。

東京湾に面した校庭の先端にポンドがあり、帆船明治丸(明治天皇巡航の際のお召し艦)が繋留されている。航海科生徒六ヶ分隊が交代で朝一番の甲板磨きがある。当番に当った分隊の生徒は、起床と同時に本船に駈けつけ、裾をまくり、裸足になり、半割りの椰子の実で広い甲板をこすり磨くのである。冬の明治丸当番は手も足も凍りつくような流し洗いの海水の冷たさと、中腰作業の腰の痛さに泣かされた。



これを読んで「私の中学校とそっくりだ」と思った。私はミッションスクールである関西学院中学部に入学したのであるが、入学式の直後に新入生全員がバスに乗せられて学校が所有している千刈キャンプ場に連れていかれた。そこでは、起床後の毛布のたたみ方が悪いとチーム全員が罰として鉄拳こそ飛ばなかったが、全員の食器洗いをさせられた。集合に1人がたった30秒遅れても連帯責任の罰が待っていた。夜寝ていると、突然先輩がやってきて全員を叩き起こし、わけもわからぬまま外に連れ出されて説教を喰らった。日中は、汗だくになってキャンプ場の道路整備や校庭を拓くための開墾作業をやった。そうやって、上級生に厳しく面倒をみてもらいつつ、洗礼を受け、連帯責任を叩き込まれた。これを読んで、なんだ、あれは海軍式の鍛え方だったのか、と思った。こういった思い出は、今となっては忘れえぬかけがえのないものになっている。



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