PHONOあるある
ハム対策


レコード再生はオーディオの世界では歴史があるので、さまざまなトラブルとその解決策については先人達が多くのアイデアを提供してくれています。本章では、主にカートリッジとPHONOイコライザアンプに関する電気的トラブルについていくつかのヒントを提供します。

■ハムが出た

レコード再生で出会うノイズの大半は「ハム」です。それもアンプ内部で発生する「ブーッ」という100/120Hz系ではなく、「ブ〜〜〜ン」とやわらかく響く低音の魅力の電灯線由来の50/60Hz系のハムがほとんどです。何故かというと、カートリッジからPHONOイコライザに至る信号経路は微小信号を扱う上に回路インピーダンスが高いため、容易に外部からの誘導を拾ってしまうからです。

誘導ハムを広いやすいのは、MCカートリッジよりもMMカートリッジです。MCカートリッジのインピーダンスが数Ω〜数十Ωであるのに対して、MMカートリッジは数kΩとかなり高いからです。


■カートリッジ周辺で拾うハム

カートリッジは、筐体が金属製のものと樹脂性ののものがあります。金属製の筐体はアースにつなぐことでシールド効果を発揮するわけですが、シェルとカートリッジをつなぐ線は信号系(Hot/Cold×ステレオ)の4本しかなくアースのための線がありません。そのため、シェルやカートリッジ周辺のシールドには工夫がいります。

SHUREのM95やM75は、金属製の筐体をアースにつなぐために右チャネルのCold側を流用して筐体とをつないであります(右の画像〜緑のケーブルのところ)。ortofonのF-15シリーズも、内部で筐体をR-ch(Cold)がつながっています。レコードプレーヤとPHONOイコライザをつないだ時、Cold側はPHONO入力のところで最終的にアースとつながりますから、そこで初めてシェルの筐体がアースと導通するというわけです。そのため、シェルのところで間違えてHotとColdを入れ替えてつないでしまうと、Hot側に筐体がつながってしまいシールドどころかHot側が外部に晒されてハムが出ます。また、カートリッジからのHot/Coldのケーブルをバランス入力で受けるようなことをするとやはりまずいことになります。(ちなみに、画像中の左側のM75はケーブルの色の使い方が正しくありません)

シェルの多くは金属製で、トーンアームとのコネクタ部分で電気的に接触します。トーンアームは後述するようにアースされているため、シェル自体もアースされてカートリッジを外部の誘導から守るシールドとして機能します。しかし、コネクタ部分の締め付けが甘いなどの理由で導通が悪いと、シェルがシールド機能を果たさなくなるだけでなく逆にハムを呼び込む働きをします。シェルとカートリッジの間に金属性のウェイトを追加した場合や、錆付いた古いトーンアームやシェルを使う場合も注意がいります。

木を使ってシェルを自作した人がいましたが、MCカートリッジの時は問題がなかったのにMMカートリッジをつけたら盛大なハムが出たという話を聞いたことがあります。


■トーンアーム〜レコードプレーヤ内部で拾うハム

カートリッジを出たオーディオ信号は、トーンアームの中のケーブルを通ってから、トーンアームの回転軸の中を下り、プレーヤーのケースの中を這ってからRCAケーブルとなって後面から出てきます。

トーンアーム、ターンテーブル、レコードプレーヤの筐体、内部の金属部品、モーターケースこれたすべてはアースとつながっています。もし、これらをつなぐアースの接触が切れるとハムの原因になります。古いレコードプレーヤでハムが出たら、アースとトーンアーム間の導通を調べたりプレーヤをひっくり返して中を開けて各部間の導通を確かめた方がいいでしょう。


■レコードプレーヤーのアースのしくみ

レコードプレーヤからは、以下の7本の線が出ています。

オーディオ信号ケーブル(RCAプラグ)L-ch(Hot)PHONOイコライザの入力端子につなぐ。
R-ch(Cold)はカートリッジの筐体につながっていることが多い。
L-ch(Cold)
R-ch(Hot)
R-ch(Cold)※
アース・ケーブル筐体やトーンアームPHONOイコライザのアース端子につなぐ。
内部的にL-chまたはR-chのColdに接続されている場合もある。
電源ケーブルAC100V電灯線のコンセントにつなぐ。
AC100V

レコードプレーヤによっては、アース・ケーブルが独立して出ていないものがあります。その場合は、L-chまたはR-chのCold側がアース・ケーブルを兼ねていますので、PHONOイコライザの入力端子にしっかりとつないでやればOKです。


■オーディオ信号ケーブル〜PHONOイコライザで拾うハム

冒頭で述べたように、カートリッジからPHONOイコライザに至る信号経路は微小信号を扱う上に回路インピーダンスが高いため、容易に外部からの誘導を拾います。たとえば、オーディオ信号ケーブルがAC100Vの電源ケーブルと平行していると、それだけで十分にハムを拾います。レコードプレーヤの設置では、レコードプレーヤの近くで周辺のオーディオ機器の電源ケーブルを不用意にたばねたりしないように注意します。

レコードプレーヤはトーンアームが右側についていますので、製品の多くは電源ケーブルは正面からみて左側から、RCAケーブルは右側から出ています(左下の画像)。本サイトの製作例である「PHONOイコライザー・アンプ 12AX7 Version2」は、左側にPHONO入力、右側に電源ケーブルが出ていますので右下の図のようにレコードプレーヤの右側に置くのがベストということになります(ラックを使って上下位置に置いてもかまいませんが)。こうすれば、オーディオ信号ケーブルは双方の電源ケーブルに近づくことなく平穏無事に仕事をすることができます。

←(例)DENON DP-1300

ハムの原因となる電源トランスがオーディオ信号ケーブルやPHONOイコライザの近く来ないような工夫も必要です。下の画像では、左からレコードプレーヤ、PHONOイコライザアンプ、USB-DAC、PCと並んでいます。この配置でUSB-DACの電源を入れたままPHONOに切り替えるとわずかにハムが出ます。PHONOイコライザアンプが隣にあるUSB-DACの電源トランスの漏洩磁束を拾ってしまうからです。そのため、レコードを聞く時はUSB-DACの電源を切らなければなりません。


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