私のアンプ設計マニュアル / トラブル・シューティング編
1.はじめに
オーディオ機器に限らず、どんなものであっても、いつか、こわれて動作しなくなったり、思い通りの動作をしてくれなくなったりするものです。これが自作アンプの場合では、こわれたからといって、1年以内のメーカー保証がきくわけでもなく、メーカーのサーヴィスセンターに送り付けるわけにもゆきません。製作者自身が、自分の責任において、自力で故障個所を発見し、自費で修理しなければなりません。欠陥商品だ、と騒いでも(残念ながら自作アンプのほとんどは欠陥商品である)、誰も助けてはくれません(このHomePageの掲示板でご相談すれば、多くのベテラン諸氏からのアドバイスが得られると思います)。

というわけで、トラブル・シューティングのコーナーを設けることにしました。私のごく限られた失敗経験のなかから、みなさんのお役に立ちそうなページが作れれば、と思っております。しかし、トラブル・シューティングはとても奥深いテーマであり、体系的な手順やさまざまな周辺知識が必要です。本サイトで扱うにはあまりに大きなテーマですので、ここでは基本的なことについて触れるのが精一杯だと思います。別の機会にしっかりとした形でご提供するつもりですのでその時には改めてご案内いたします。

さて、トラブルの原因の発見にはいつも手を焼かされます。原因がわからないまま何日も経過することも珍しくありません。しかしです、トラブルには必ず原因があります。ハムが出たならば、そこには必ずハムが出るメカニズムが働いています。わけもなくハムは出る、なんていうことはありません。音が出なければ、音が出ないなりのちゃんとした理由があります。ですから、トラブルに見舞われたら『必ずどこかに原因がある』と確信して、トラブルに立ち向かっていただきたいのです。

お手元の既製アンプであっても、古いモデルともなると、メーカーのまともなサーヴィスが受けられなくなってしまうケースも多くみられますので、そういう場合のトラブル・シューティングについてもできるだけ触れたいと思います。しかし、メーカー側の修理サーヴィスが受けられる限り、ご自分で既製アンプを分解したり、自力で修理したり改造したりすることはおやりにならないのが賢明である、ということも申し添えておきます。


頭を冷やし、頭を使え

トラブルが出るタイミングのほとんどは、製作途中、それも完成間際ではないでしょうか。配線もだいたい完了して、調子はまだだけれど音くらいは出るくらいの、いよいよ電源スイッチを入れて動作チェックができる段階です。そして、電源スイッチをONにした途端にヒューズが飛んだり、部品から煙が上がったり・・・。そんな大事件にはならなくても、音が全く出る気配がなかったり・・・。頭に血が上り、手当たり次第にあちこちを調べたり、いじってみるものの解決せず、どんどんわけがわからなくなってゆく。

トラブルはきわめて論理的なものです。繰り返しますが『必ずどこかに原因がある』のです。ヒューズが飛んだということは、ヒューズが飛ぶように作ったということであり、音が出ないということは音が出ないように作ったと考えるのがトラブル解決の近道です。何故、ヒューズが飛んだかではなく、どうしたらヒューズを飛ぶアンプを作れるか、どうしたら各部の電圧が正常なのに音が出ないようにできるか、と考えるわけです。この発想ができないとトラブルを効率的に発見できません。

トラブル・シューティングは頭脳プレーそのものです。なのに私達は、トラブルに遭遇すると頭をあまり使わないで手ばかり動かそうとます。この部品が不良なのではないか、この配線がおかしいのではないか・・・。初心者ほど「部品のせいにする」傾向があります。この部品が不良なのではないか、じゃあ取り替えてみよう。その部品がどういう風に不良だったらそういうことになるのかを充分考えないで、とにかく取り替えてみる、というすごいアプローチ。オーディオ・アンプは複雑な仕組みの機械です。まぐれ当たりを期待してはいけません。


どうしたらいいかわかりません

もの作りで「どうしたらいいかわかりません」は禁句です。ものを作るという行為の中には、トラブルを解決する、という行為も含まれます。「つくりかたがわかりません」と言ったら「じゃあ、作るなんて面倒なことしないで買えば?」ということになるでしょう?作っていてトラブルにぶつかるのはごく普通なできごとです。ですから「ハムが出ました。どうしたらいいかわかりません」と言ってしまったら、「じゃあ、何故、自分で作ろうとしたわけ?まさか、一発でうまくゆくと思っていたんじゃないでしょうね?」てなことになります。

はじめのうちは何がどうなったのかわからなくても、頭を使って考えてゆけば、そのうち少しずつ見えてきます。どこがおかしいかわからなくても、どこまでは正常なのかはわかります。たとえば、片チャネルだけからトラブルが出た時に、左右の球を入れ替えてみてトラブルが入れ替わらなかったらた球の不良ではないことがわかりますね。音が出なくてもテスターで各部の電圧を測定して設計どおりだったら、電流の流れに関する配線は正しいことになりますし、そもそも電源回路は問題なさそうだということがわかります。ハムが出た時、初段管を抜いてハムが消えたら、出力段は無罪ということになるでしょう。ある程度、できる範囲で調べた上でネット上の掲示板などで助けを求めたなら、間違いなく解決も早いです。

トラブル・シューティングのヒントはここにもありますので、是非、目を通してみてください。

http://www.op316.com/tubes/honneb/honneb25.htm


私のアンプ設計マニュアル に戻る