私のアンプ設計マニュアル / 雑学編
6.コンデンサ

コンデンサのストック:

コンデンサは、種類も多く値段もお安くないので抵抗器のようなフル・ラインナップのストックはとても無理です。しかし、真空管アンプで使う可能性の高い「0.047〜2.2μF」のフィルム・コンデンサや「10〜1000μF/10〜350V」のアルミ電解コンデンサあるいはタンタル・コンデンサ、そして「4.7〜2200pF」のディップ・マイカ・コンデンサやスチロール・コンデンサはストックするようにしています。

特に「4.7〜2200pF」のコンデンサは、アンプの調整の最終段階で負帰還抵抗とのセットでとっかえひっかえ使うことになるので、さまざまな値を用意する必要があります。これは、ほとんど消耗品といってもいいでしょう。


電解コンデンサ族:

最近のアルミ電解コンデンサはほんとうに使いやすくなりました。小型化され、周波数特性も温度特性も昔のものに比べればおどろくほど高性能になりました。しかし、いつかは必ず来る寿命の問題、寿命は高温に晒されることでいくらでも縮むという問題、ある周波数以上ではインピーダンスは横ばいになってしまうという問題、正接の問題、自己回復のために常に微少の漏れ電流があるという問題、容量精度が低いという問題、これらは依然として残されています。それでも、大容量を、この大きさでこのお値段で実現してくれるのは電解コンデンサしかありません。

電解コンデンサの仲間にもいろいろなヴァリエーションが出てきました。オーソドックスなアルミ電解コンデンサの構造のままで、漏れ電流による雑音を低減し、高域特性や正接を改善したオーディオ用といわれるものがあります。こういったコンデンサの中には結構お値段の高いものもありますが、では、どのブランドがいちばん音がいいかというと、ちょっと答えが出ません。

部品について音がいい悪いという主観的な観点で評価・議論すると、「なぜ」という追究や問題の解決がしにくくなります。一般に音がいいと言われている部品や球をかき集めてアンプを作ってみたところで、必ずしもすばらしい音のアンプができるわけではないということです。音のよいアンプというものには、必ず「なぜ、音がよいか」という理由があります。ただ、その「なぜ」がなかなかわからなくて、あれこれ試行錯誤をしなくてはならなくなるわけです。単に、電源のケミコンをどこそこのから別のどこかのに変えたら音が変わったの、変わらないのと一喜一憂していたのでは、何の進歩もありませんし学習にもなりません。

私は、高性能化された電解コンデンサについては、音よりも電解コンデンサ固有の弱点がどのくらい改善されているのかで評価することにしています。たとえば、寿命や温度特性、容量精度、コンパクトさ、漏れ電流などです。電解コンデンサの弱点を理解し、回路上あるいは実装上でさまざまな工夫をすることで、結果的にすぐれたアンプに仕上がってゆくのだと考えるようにしています。なお、各メーカーからはオーディオ用としてさまざまな電解コンデンサが供給されていますが、オーディオ用と謳った品種ほど音に色付けがあるように思います。通常品種で単に低ESRタイプと言われているものの方がニュートラルな音だったりします。過剰期待は禁物です。

電解コンデンサの仲間に、タンタル電解コンデンサがあります。タンタル電解コンデンサは、おしなべて特性的にはアルミ電解コンデンサよりも優れている点が多いのですが、唯一、逆電圧をかけるとパーになるという重大な弱点があります。アルミ電解コンデンサでは、5V程度の逆電圧には十分に耐えてくれますが、タンタル電解コンデンサでは全くだめで、簡単に昇天します。回路への組込みでは、電源ON/OFF時等の過渡的な電圧推移についても厳重な管理が必要です。

タンタル電解コンデンサは、チューブラ型が基本構造だという点で、アルミ電解コンデンサの縦形が基本なのと違っています。タンタル電解コンデンサでは、同一方向に2つの端子が出ていないので、プリント基板用の縦形とするためにはどうしても反対側のリード線をぐるっとまわしてやらねくてはなりません。市販されている縦型のタンタル・コンが樹脂で水滴型に固めてあるのは、中でリード線をぐるっとまわしたのが見えないようにするためです。従って、縦形のタンタル・コンのリード線をマタビラキにしてチューブラの代用として使うのは無駄というものです。

アルミ電解コンデンサは、数V程度の逆電圧にはかなり耐えてくれます。コンデンサの極性を間違えて実装してしまった場合で、逆電圧が1V程度であるならば、あわてて交換する必要はありません。業務用機器でこのようなミスが納品後に発覚した場合、次回のメンテナンスが1年後であるならば、業務を停止するよりもそれまではほっておくというディシジョンもなされるくらいです。

電解コンデンサにおいて特に目立った問題点ひとつにESR(等価直列抵抗)が大きいということと、高周波特性が悪いという2点があります。最初にこの問題を解決したのが、前述したタンタルコンデンサなのですが、タンタルコンデンサもさまざまな弱点があり、特に、結晶の成長と貫通によるショートモードトラブルが大きな問題となっていました。この問題を最初に解決したのが三洋電機佐賀のアルシコンだったのですが、かさばる、大容量のものができないという欠点がありました。

三洋電機佐賀ではさらに研究を重ね、やがてOSコンの開発、成功に至ります。OSコンは、フィルムコンデンサ並の低いESRと、すぐれた高周波特性を持ち、ショート破壊のトラブルもなければ、アルミ電解コンデンサ以上に高い逆耐電圧特性を持ちます。OSコンにおいてもさらなる改良が重ねられてきているので、今では発表当初のものよりもかなり良くなってきています。注意して欲しいのは、OSコンはオーディオ用途よりもデジタル機器や映像機器での問題解決を主たる課題として開発されたため、多くのモデルではリード線にスチール線を採用しています。スチール線を採用したOSコンをオーディオ用に使って、思わしい結果がでなくても文句は言えません。OSコンにも、銅線を使ったオーディオ用がありますので、こちらを使うようにしてください。

電解コンデンサは、ナマモノ(消耗品)ですからアンプへの実装では、後日の交換がやりやすいような工夫がきわめて重要です。たとえば、ブロック・コンデンサの場合、アース・ラインを端子の穴に貫通して配線したくなりますが、これをやってしまうと後日コンデンサをはずす際にえらい苦労をさせられます。アース・ラインから太い枝を出して、ブロック・コンデンサに繋ぐようにすれば、枝をチョンと切るだけで簡単にはずせるようになります。また、この種のコンデンサは熱にも弱いので、セメント抵抗器等の高温になる部品であぶられることのないような配置を考えなくてはなりません。

電解コンデンサを電源のリプル除去に使用する場合、リプルが多い程発熱しやすくなります。ですから、もっとも発熱するのは整流直後のコンデンサということになります(さわってみればわかる)。2段目以降のコンデンサはほとんど発熱しません。これは整流直後の電解コンデンサの寿命がいちばん短いということを意味します。もっとも、他のコンデンサが整流管などの熱であぶられていれば話は別ですが。コンデンサを長持ちさせたければ、電解コンデンサを整流管や出力管の熱にあぶられないようにする、整流直後のリプルを除去するケミコンは特に風通しの良いところに配置することは重要です。


フィルム・コンデンサ族:

フィルム・コンデンサの誘電体には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等さまざまなものが使われています。素材によって、加工のしやすさ、誘電率、温度特性、コストが異なるため、コンデンサ・メーカーもさまざまな種類のものを目的と需要に合わせて生産しています。一般論ですが、ポリプロピレンを使ったものが温度特性も高周波特性も優れており、ただ、欠点としては他の素材ものもと比較してやや大型になってしまい、かつ割高だということがいえます。

フィルム・コンデンサは、フィルムをぐるぐると巻いた構造なので、巻きおわると2つある電極のうちのどちらか一方が外側ということになります。これを真空管アンプの高圧部で使用した場合、高圧のかかった電極が外側になるのか内側になるのかで、10年後の汚れ具合に大きな違いが生じます。高圧のかかった電極が外側になると、長い間に静電効果でコンデンサの表面が空気中のちりや煙や花粉を吸着してまっくろになります。市販されている静電式の空気清浄器と同じ原理です。どっちが外側かわからない場合は、1個犠牲にして分解してみることをおすすめします。

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