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私のアンプ設計マニュアル / 雑学編 3.雑音対策 |
メインアンプ
B電源回路のリプル:
普通、メインアンプの電源回路では、交流200〜350Vくらいの電圧を両波整流して47〜100μF程度のコンデンサで受けると、数V程度の残留リプルが発生します。このリプルをどのくらいまで減らせば残留ハムを満足のゆく水準にすることができるのでしょうか。EL34を3結シングルで5KΩ負荷で構成したメインアンプを例に考えてみます。出力側を8Ωとすると、OPTの1次2次インピーダンス比は5000Ω:8Ωすなわち625:1になります。従って巻き線比は平方根の25:1です。仮に、8Ω出力側の残留ハムを0.5mV以下にしたいとするならば、単純計算でOPTの1次側にかかるハムレベルは0.5mV×25=12.5mV以下でなければならないことになります。
さて、EL34の3結動作時の内部抵抗(rp)はどのくらいかというと、エイヤで1.4KΩくらいです*。シングルアンプでは、B+とアースとの間にはOPT(5K)と出力管(1.4KΩ)が直列にはいりますね。OPT(5K)側にかかるリプルが12.5mV以下ということは、12.5mV×(5+1.4)/5=16mVとなって、B+とアースの間にかかるリプルは16mV以下でなければならないという計算になります。
*・・・後になって、EL34の3結時の内部抵抗を再度測定したところ、1kΩ〜1.2kΩになりました。
電源回路の整流出力のところでのリプルがかりに5Vあるとすると、5V÷16mV=312.5となりますから、整流出力から出力段のB+供給までに100〜120Hzにおいて312.5分の1の減衰が得られるリプル・フィルタが必要であることがわかります。これは5KΩ+100μFの組み合わせのπ型1段フィルタまたは10Hチョーク+100μFのπ型1段フィルタに相当します。2段フィルタとした場合ですと、(270Ω+100μF)×2に相当します。
このような場合、私は廉価なチョークまたはNPN型高耐圧トランジスタを使ったフィルタを使うことにしています。2SC5172や2SC3425が安価で供給されています。トランジスタ・リプル・フィルタの良い点は、抵抗に比べて少ない電圧降下で同等かそれ以上の効果が得られること、電源電圧のレギュレーションがあまり低下しないこと、設計如何でフィルタ効果絶大で簡単に残留リプルを1mV以下にできること、B+電圧を徐々に立ち上げる効果もあることです。一方、欠点としては、電源ON時B+電源のCを充電する突入電流で破壊されやすいことがあります。出力段を含むループで負帰還をかけた場合は、負帰還の効果として帰還量に比例してさらに残留ハムは減少するのはいうまでもありません。
B電源に含まれる残留リプルは容易に概算できますので、作ってハムが出てから慌てるのではなく、設計段階から「このアンプのB電源の残留リプルは何mV以下でなければならないか」を予測し、管理された状態で製作することが望ましいです。
電源トランス(PT)からの誘導ハム:
電源トランス(PT)からの誘導によるハムは、一旦、これにひっかかると大変厄介な問題になります。電源トランスの位置や向きを変えるしか解決する方法がない場合がほとんどなのですが、組みあがってしまったアンプのPTの位置や向きをどうやって変えろというのでしょう。ほとんど無理というものです。メインアンプの場合のポイントをいくつかまとめてみました。
(1)PTが電磁シールドされていない場合、OPTとは3cm以上離す。
(2)PTのコアの中心線上10cm以内に入力回路および初段まわりのアースループを配置しない。
(3)ちょっと贅沢ですが電磁シールドあるいはショートリングのあるPTを使う。(効果はまあまあ)
(4)かなり贅沢ですが磁気シールドケース入りのOPTを使う。(効果は大きい)以上です。OPTで拾う誘導ハムは、OPTの向きで大きく変化します。しかし、頭で考えて向きを決めても必ずしもその向きが最適かというとそうでもないことが多く、やってみなければわかりません。一般則としては、コアの中心の向きが互いに並行にならずに直交するようにします。これをシャーシに実装する前に確認する方法があります。
方法:
電源トランスにAC100Vだけ配線します。出力トランスの8Ω端子にACVレンジにしたデジタル・テスターを当て、表示される電圧の変化を見ながら、電源トランスのそばを移動させます。たぶん、数mVくらいが表示されると思います。この値が最小になるように位置決めをおこなえばよろしい。なお、この方法では、表示される電圧は回路に実装した時よりも大きめに出ます。余談ですが、カセットデッキからハムが出るようになったので調べてみたら、下に重ねたチューナのPTがカセットデッキのヘッドの真下にあった、ということがありました。PTからの誘導は、外部の機材にも迷惑をかけますので、配置には大人の心配りがいるようです。
直熱管のフィラメント・ハム:
一度は使ってみたい球のなかには、直熱管がたくさんあります。2A3、45、300B、VT62(801)などがその代表でしょう。はじめて直熱管を使おうとしたとき、最大の悩みはフィラメントを直流点火にするか交流点火にするかという問題です。これがキットならば(ひとまかせにできますから)あなた自身が悩むことはないかも知れませんが、自分で設計するとなるとそう簡単には答えが出ません。私が使った最初の直熱管は6B4Gでした。2A3のフィラメントが2.5V2.5Aなのを6.3V1Aにした球です。最初、ハム・バランサをつけて単純に交流点火にしたところ、どう調整しても我慢できないレベルのハムが残ってしまい、結果的に直流点火にしたのを覚えています。
PTの6.3Vヒーター巻き線をブリッジ整流して10000μFくらいで受けて1Aを取り出すと、電圧は6.5-6.8Vくらいになります。そこで整流回路に直列に0.2-0.3Ωをいれたところぴったり6.3Vになってくれました。この時の残留リプルはおおよそ150-200mVくらいでした。これでしっかりハム・バランサを調整してやるときれいにハムを消すことができます。Aカーブ補正なしで0.4mVくらい、8dBの負帰還をかけ、Aカーブ補正を行なって測定したところ出力側での残留ハムは0.03mVにまで減少しました。ここまでくると、スピーカーに耳をぴったり押し付けてハムがやっと聞こえるか聞こえないかくらいになります。
300Bの場合は、6.3Vをブリッジ整流した後、π型CRフィルタで5Vまで電圧を落としてやればいいわけですから話は簡単です。厄介なのは2A3や45といった2.5V管です。交流2.5Vをブリッジ整流したのではダイオードでの電圧降下のせいで1.5Vもとれません。直流2.5Vで2.5Aを取り出したかったら、交流3.5V3.5A以上の容量が必要です。かといって6.3Vを整流してから抵抗で電圧をドロップしようとすると、ドロップ抵抗が電熱器と化します。ただ、6B4Gと違って2.5V管の方が交流点火でもずっとハムが出にくいので、交流点火のままでほどほどの負帰還と組み合わせてハムを退治するのが一般的でしょう。
なお、2A3や45の場合は、2.5Vを直列にして5V/2.5AでDC点火するという大技があります。この場合、2管のフィラメント(=カソード)電位には2.5Vの差異が生じるのでグリッドバイアスにも2.5Vんp差異を与えてやるのがセオリーです。
固定バイアスからのハム混入:
出力段でのハムの侵入路は、B電源、フィラメントのほかにもうひとつ、固定バイアス電源があります。感度の高い5極管やビーム管の場合は特に要注意です。ここで1mVのリプルがあった場合、6L6シングルの場合ですとOPTの2次側には1mVちかくが現れます。固定バイアスの時にマイナス電源は過剰投資は必要ないですがあまり手を抜かないように。
初段・ドライバ段:
初段・ドライバ段で拾いやすいハムの最右翼はヒーターからのハムではないでしょうか。B電源の含有リプルによるハムは、計算で簡単に求まりますし、きちんとリプルを除去してやれば問題は簡単に解決できますが、ヒーターからの誘導ハムはそうはいきません。ヒーターからもっともハムを拾いやすい回路というのは、下図のようなカソードに抵抗にコンデンサが抱かせていなくて、カソードが交流的にアースから浮いていて、しかもヒーターが交流点火されているような場合です。
図上の2KΩのカソード抵抗に並列にコンデンサがあるかないかで、この段で発生するヒーター・ハムは大きく違います。メインアンプでは、初段のカソードを抵抗だけにして、ここにオーバーオールの負帰還を戻すような設計にするケースが多いです。しかし、後のページでもふれますが、3極管回路では、カソードに挿入された抵抗(インピーダンス)は球の内部抵抗(rp)をさらにRK×(μ+1)だけ上昇させることになりますので、何のための3極管だかわからなくなってしまいます。ここは、1本の2KΩを2KΩ+20Ωというふうにして、2KΩには並列にコンデンサを抱かせ、負帰還は20Ωの方に戻すようにします(本HomePageの「6G-A4シングル・アンプその1」の初段がこのような構成になっています)。20Ωという値は世間一般にみられる値よりもずいぶん小さいように思うかもしれませんが、ほんとうはもっと小さくてもよく、また小さい方が効果的です。
コンデンサの並列がお好みでない場合は、思い切って固定バイアスにしてしまいます。カソード抵抗は20Ωだけにして、グリッド側に適当なバイアスをかけます。この場合には、グリッド入力側にDC遮断のためにフィルムコンデンサ等のCが必要になります。本HomePageの「6B4Gシングル・アンプ」の初段がこの構成になっていますので参考にしたらいいでしょう。
どうしても2KΩのままでコンデンサなしでいきたいような場合は、ヒーターに+10V〜+50Vくらいのバイアスをかけることで、ごくわずかではありますがヒーター・ハムが減ることがありますが、期待するほどの効果はありません。それよりもヒーターを直流点火した方がはるかに効果があります。
ちなみに、管種によってヒーターハムの出やすさには大きな差があります。6SN7GTや6FQ7はハムが出やすく、12AX7や12AU7は出にくくなっています。
プリアンプ
ACライン:
プリアンプでは、AC電源を伝って侵入する外部雑音への対策が重要になります。家庭あるいはご近所で使用されるさまざまなデジタル機器、冷蔵庫やクーラーの電源のON/OFF、調光器が発生するきたない波形や近所の工場のプロセス電源からオーディオの微少信号を守ってやらなければなりません。オーソドックスな手法としては、市販されているライン・ノイズ・フィルターの使用です。そのとき、ACラインのアンプ内への引き込みからフィルターまでをできる限り短く配線しなければ意味がありません。ACラインから電源スイッチを経由して、それからフィルターなんていうことをしてはいけません。また、ライン・ノイズ・フィルターには許容電流があるので、ACアウトレットで外部にも電源を供給するような場合には、最大電流値を検討しておく必要があります。ライン・ノイズ・フィルターはしっかりシャーシに密着して取り付けます。フィルターからのアースラインも最短でシャーシに落とします。相手が高周波ノイズですのでオーディオ回路の常識は通用しません。
パワートランス:
プリアンプの電源では、電源トランスは電磁シールド付きであること、あるいは最低限ショートリング付きであることが必要です。加えて1次2次巻き線間に静電シールドがあることも必要です。トランスのノイズ対策は、メインアンプでは問題なくてもプリアンプでは全く別です。電磁シールドやショート・リングは電源トランス自身が雑音源とならないため、静電シールドは外部からの雑音を遮断するためです。外部からのノイズのうち、コモンモード・ノイズと呼ばれるタイプの雑音は、1次2次巻き線間の静電シールドでのみ遮断できるからです。ライン・ノイズ・フィルターでもある程度カットできますが、静電シールドはさらに強力です。ということは、ACラインではライン・ノイズ・フィルターを出てからPTに至るまでも短く配線しなければならないということを意味します。
ACラインの2本の往復の線は、当然ですが捻るようにします。往復の2本を離して配線したり、輪っかをつくってはいけません。ここまで配慮すれば、冷蔵庫のON/OFFのノイズがMCカートリッジの入力に侵入したりすることがなくなります。
ヒーター電源:
プリアンプでは、迷わずヒーターを直流点火することにしています。12AX7(T)や6AU6、6267では交流点火時にヒーターハムを減らすために、スパイラル巻やダブルスパイラル巻等の工夫がみられますが、納得のいく低雑音性能を得るにはまだまだ十分とはいえません。私のプリアンプでは、DENON DL-103からの信号を12AX7で受けていますが、これくらいの微少信号になるとヒーター電源のリプルも問題になります。トランジスタ・リプル・フィルター等を使ってきれいな直流を得る必要があります。
カソード・フォロワ回路にした場合、カソードの電位がヒーターの電位よりも数十V程度高くなることが多いですね。この時、微少ながら不規則にピー、チリチリ、ジュルジュルといった雑音(ホイッスリングともいう)が出ることがあります。はじめのうちは発振ではないかと疑ったりしたのですが、なかなか消えてくれなくて苦労したことがあります。私は、12AX7、12AU7、12AT7で同じ経験をしました。この原因は、カソードとヒーターの電位差によるもので、H-K耐圧以内であっても充分発生します。これは、カソードの電位を下げるか、ヒーターにプラスのバイアスを与えることで解消します。カソード・フォロワでは、カソード側のインピーダンスが高くなるため、どうしてもヒーターからのノイズを拾いやすくなります。
B電源:
B電源は、整流後を2つのフェーズに分けて設計します。「第1フェーズ」は充分なるリプルの除去、「第2フェーズ」は各段ごとのデカップリングです。「第1フェーズ」では納得のゆくレベルまでリプルを除去し、できるだけきれいな直流を得るようにします。このままPHONOイコライザーの初段に使っても大丈夫なくらいきれいにします。このフェーズが終了するまでは、電源部から外に出ないように設計・配線します。各段にもデカップリング用にコンデンサがあるからそこでリプルがとれればいいや、というのはだめです。リプルがとれたように見えても、リプル電流はしっかりB+ラインとアースを通ってぐるっと一周しているからです。
「第1フェーズ」を終えたB+ラインは「第2フェーズ」で各段ごとにコンデンサ等でしっかり交流的に接地してやります。この場合のB+ラインは電圧こそ高いものの、交流的にはアースラインと同格になります。こうすることによって、少々アースの引き回しに無理が生じても、ハムに悩まされることがほとんどなくなります。
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