私のアンプ設計マニュアル / 雑学編
アルミ電解コンデンサの逆電圧と無(両)極性化

アルミ電解コンデンサに逆電圧をかけたら・・・

アルミ電解コンデンサの向きを逆につけてしまったアンプの電源を入れてしばらくしたら・・・・ポン!プシュウ、なんていう音がして臭いニオイがした、なんていう経験はベテランなら誰でもやっていると思います。

アルミ電解コンデンサに逆電圧をかけると、漏れ電流が増加して、その増加した漏れ電流のせいでコンデンサが過熱し、内圧が上昇して破裂に至るわけです。耐圧以上の高い電圧をかけても同じことが起こりますし、耐圧以内であっても非常に古いアンプの中を開けてみると、アルミ電解コンデンサがパンパンに膨らんでいるのに出会ったりします。アルミ電解コンデンサは破裂事故が非常に多いので、アルミケースの上面にあらかじめ切れ目を入れて、内圧が一定値以上に上昇した時には積極的に破裂させるように解慮されているくらいです。


無(両)極性化の方法とメカニズム

普通のアルミ電解コンデンサを無(両)極性化するには、容量が等しい2個のコンデンサを互いに逆向きに直列につなぐ方法が推奨されています。この場合、耐圧は1個分となり、容量は半分になります。つまり、かさが4倍になるわけです。

何故、このような方法でいいのかというと、アルミ電解コンデンサに存在する漏れ電流のメカニズムがうまく働くからだと考えられます。アルミ電解コンデンサの漏れ電流は、印加する電圧の正逆で著しい違いがあります(右図、出展:ニチコン、アルミニウム電解コンデンサの概要)。

そして、アルミ電解コンデンサに正しい極性で直流電圧を印加すると、漏れ電流が流れるについれて自己補修作用が働いて漏れ電流は徐々に減少する(抵抗が大きくなるような変化)という性質があります。アルミ電解コンデンサに逆電圧を印加すると、逆に漏れ電流は徐々に増加します(抵抗が小さくなるような変化)。

2個のアルミ電解コンデンサを互いに逆向きに直列につないだ状態で電圧を印加すると、正しい側のコンデンサの漏れ電流は減少しますが、逆接続側のコンデンサの漏れ電流は増加します。そのため、正しい極性で接続されているコンデンサにかかる電圧が徐々に高くなり、逆接続側のコンデンサにかかる電圧は徐々に低くなるわけです。この変化が継続的に生じてやがてほとんどの電圧は正しい接続のコンデンサにかかるようになり、逆接続側のコンデンサにかかる電圧は限りなく低くなってしまうというわけです。


実験によるメカニズムの検証

2個のアルミ電解コンデンサを使って無極性化した時に、何が起きているかを調べてみました。実験回路は下図のものを使いました。DC12Vを電源とし、3kΩの抵抗器と6Vのツェナダイオードを使った簡単なシャント型の6Vの定電圧電源を用意します。こうしておけば、万が一コンデンサ側でトラブルが起きても、3kΩがあるために過大電流が流れことが回避できるからです。この回路にC1とC2の2個のアルミ電解コンデンサを取り付けて、逆向きになった側のコンデンサ(C2)にかかる逆電圧の状態を測定・監視しました。

C1、C2として1000μF/10Vのアルミ電解コンデンサを使った結果は以下のとおりとなりました。

初期状態 ・・・ 容量が同じで直列になった2つのコンデンサに6Vを印加した直後は、2つのコンデンサには同じ電圧すなわち3Vずつが生じます。実測結果もそのようになりました。
10分後 ・・・C2側にかかる電圧はじわじわと低下しはじめ、10分後には2Vくらいまで下がりました。
1時間後 ・・・1時間ほどするとC2側にかかる電圧は0.6Vくらいまで下がり、電圧の下がり方がペースダウンしてきました。どうやらこれくらいのところで落ち着きそうです。
条件を変えると ・・・ 条件を変えると同じコンデンサであっても0.9Vくらいで一時的に均衡することもありましたが、時間が経つと0.6V〜0.7Vあたりのどこかに収束するようです。容量や耐圧が異なるアルミ電解コンデンサでも実験しましたが、収束電圧が1Vを超えることはないようです。


逆電圧は1V以下にする

アルミ電解コンデンサは、たしかに極性に合わせて正しい方向に電圧をかけて使うことになっていますが、1V以下の逆電圧であれば長期にわたって正常に機能するというのを何かで読んだことがあります。本ページの冒頭のグラフを見ても、1V以下の逆電圧では漏れ電流が激減しています。この実験では、C2にかかる逆電圧は1V以下のどこかに落ち着きそうだということがわかりましたが、これくらいの逆電圧であれば回路に組み込んでもかまわないということなのでしょうか。

これはニチコンのテクニカルドキュメントからの引用ですが、「逆接続でも1Vほどの耐圧がある」というニュアンスの書き方が見られます。


無(両)極性化のポイント

アルミ電解コンデンサは、無(両)極性化したからといって比較的大きな電圧や電流を扱う交流回路に使うことはできません。何故なら、逆接続になった側が耐えてくれるのは緩慢に生じた直流電圧の均衡のおかげであって、短いサイクルで大きな逆電圧をかけていいというわけではないからです。そういう意味では、交流ほどでなくても頻繁に±が入れ替わるような回路もダメです。


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