私のアンプ設計マニュアル / 雑学編
12.安全対策、長寿命対策

考え方:

本「Tips & Hints」のあちこちで触れていますが、電子機器はたとえアマチュアが製作したものであっても、それが家庭等で実用に供される限り、安全性や耐久性が問われます。我が家の場合は、レコード、CD、LD、Video、TV、衛星放送、FM、AM、Tapeといったあらゆるソースが1セットのプリアンプとメインアンプを通過します。このアンプ群が故障すると音という音が全く出なくなってしまいます。

1日の平均稼動時間はおそらく8時間以上、年間で3000時間を超えます。プリアンプは、稼動しはじめてかれこれ8年経ちますから、単純計算で24000時間無故障ということになります。メインアンプは、6B4Gシングルが連続7年間頑張ってくれたので21000時間無故障です。昨年から6AH4GTppアンプに主役の座を譲ったものの今でも現役です。

耐久性を劣化させる要因としては、アルミ電解コンデンサのような化学変化による劣化のようなもの、真空管のガス発生やヒーターの断線のような消耗的なもの、抵抗器の値の変化のような特性変化のようなもの等いろいろあります。残念ながらアンプを構成するあらゆる部品が、多かれ少なかれ何らかの劣化や消耗をしてゆきます。ちょっとした設計上あるいは実装上の工夫や配慮で、部品の寿命は10倍にも10分の1にもなります。

とにかく温度を高くしない:

・・・ことはあらゆることに優先します。アルミ電解コンデンサに限らず、ほとんどの部品が温度が高いほど劣化や特性変化が速まります。温度を低く保つには、(1)放熱効率を高める、(2)そもそも消費電力を低く(電流を少なく、電圧を低く)する、(3)無駄な熱が出ないような回路構成にする、等の工夫が必要です。

私が、出力段を滅多にカソード・バイアスにしない最大の理由はここにあります。たとえば、2A3を3.5KΩ負荷で動作させてカソード・バイアスとした場合、カソード抵抗は約2.5W(=50mA×50V)の電力を消費しますが、固定バイアスでは両チャネルで合計5Wの発熱をなくすることができます。

本ホームページでご紹介した「6AH4GT全段差動ppアンプ」では、発熱の大きいリプル・フィルタ用トランジスタをシャーシ外で放熱させていますが、これもシャーシ内部での総合発熱量をできる限り少なくするための工夫の結果です。

通測用あるいはSQ管と呼ばれる高信頼管のいくつかが、カソードの温度を低く抑えるような設計となっているのも、球の熱による寿命の短縮を最小限にしようという理由によります。

熱疲労:

電源をONにした直後は、アンプのあちこちで過渡電流が流れます。フィラメントを直流点火しているような場合、整流ダイオードには通常時の数倍の電流が流れます。ダイオードの内部は、瞬間的ですが相当な高温になり、やがて一定の動作温度にまで下がり、電源OFFとともに徐々に室温にまで戻ります。アンプの電源のON/OFFが繰り返されるたびにこの温度サイクルが繰り返されます。そのたびにダイオード内部の接合部やモールド部はそれぞれ異なる膨張率で熱膨張と収縮を繰り返します。このような状況のなかで、部品の熱疲労が進行してゆきます。

部品の熱疲労の進行を抑制するためには、そもそも部品を高温にしないだけでなく、過渡時の瞬間的な温度上昇もできるだけ抑えなければなりません。整流回路では、ダイオードと直列に抵抗器を挿入することで、わずかですがこの傾向を抑えることができます。

熱膨張と収縮は、部品の寿命を縮めるだけでなく、緊締したネジ類をゆるめてしまうこともあります。

接点:

接点の劣化はなかなか厄介です。電源スイッチでは、電源ON時のチャタリング(接点がついたり離れたりを繰り返す)と電源OFF時のスパークで接触面が劣化します。市販されている抵抗器+コンデンサの簡単なスパーク・キラーの併用は必須です。ロータリー・スイッチ類は意外に長期にわたって安定動作してくれます。トグルスイッチのような圧着接点と異なり、ロータリー・スイッチ類のような摺動接点では接触面の自己クリーニング作用があるためです。

圧着接点の問題点を抱え込んだのがリレーです。大きさの大小にかかわらず電力用のリレー(ごく普通のリレーはみんな電力用途です)を音声信号経路に使用してはなりません。一般のリレーは、一定以上の電流を流した場合のみその性能が保証されていて、音声信号のような微少電流ではその性能は保証されていません。接触抵抗値はゼロではなく、一定値以上でしかもその都度変化します。そのため、微少な信号を扱った場合は相当量の歪みが発生します。実際、接触不良のトラブルでひどい目に遭ったことがあります。トグルスイッチについても同様のことがいえます。大型のスイッチだから音声信号にも信頼して使用できるというわけではありません。

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