私のアンプ設計マニュアル / 半導体技術編
1.はじめに
私のことを真空管で自作オーディオをはじめたと思っている方が非常に多いようですがそうではありません。確かに1990年代、NiftyServeでは真空管の話題がほとんどでしたし、1996年にオープンしたHomePageのタイトルも「情熱の真空管」ですから、そのように思うのは無理もないなあとは思います。

私が最初に接したデバイスはゲルマニウム・トランジスタの2SB54と2SB56で1966年頃のことです。当時は最後の真空管全盛期だったのですが、一方でトランジスタが登場してものすごい勢いで真空管からトランジスタに切り替わってゆく時代でもありました。1966年から1972年にかけて、我が家のラジオやテレビ、オーディオなどが次々と真空管式からトランジスタ式に切り替わっていきました。私の意識としては、真空管なんて時代遅れでカッコ悪い、これからはトランジスタの時代だ思っていました。

1970年代にはいると高性能なシリコン・トランジスタがどんどん出てきて、世の中はいよいよ本格的な半導体時代に入ってゆきます。私はそんな時代に育ちましたので、中学から高校にかけて半導体回路の洗礼を受けました。OTL回路の技術書をぼろぼろになるまで読み、自分用の勉強ノートを作った記憶があります。SONYの初期のTAシリーズやONKYOのインテグラシリーズ、そしてMarants7TやQuad33の回路図は格好の教材でした。そんなわけですから、真空管など見向きもしなかったというのが当時の私です。

私が真空管アンプを意識したのは、真空管の製造が終焉を迎えた1984年になってからのことです。

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時は移って21世紀。消えそうで消えない真空管。プロオーディオの世界ではあいかわらず真空管が特別なポジションを占めていますが、半導体が主流であることに変わりはありません。本サイトは一応「情熱の真空管」などというタイトルをつけていることもあって真空管オーディオのネタが多いですが、オーディオを論じるのに半導体は避けて通ることはできません。本章では、もっぱら半導体オーディオに関する基礎知識ややや応用的な内容についてふれてゆきます。可能な限り理系的な記述は避けて、文系の頭脳でもストレスなく理解できるように平易な解説になるように努めました。なお、本章はその1から順番に読んでいくとわかりやすいようにコンテンツを構成してあります。学習目的の方は上から順番に読んでください。

残念なことに3本足のトランジスタは2000年を過ぎたあたりからどんどん姿を消しつつあります。その理由は2つあって、1つめは、工業製品の基板が面実装化したために、リードタイプの部品がなくなってチップ抵抗など面実装部品にどんどん切り替わっていることが挙げられます。トランジスタがなくなったわけではありませんが、アマチュアアンプビルダーが扱いやすいリードタイプの部品がどんどんなくなっているのです。

2つめの理由は、そもそも単体のトランジスタが消えていっているという事実です。1個1個のトランジスタで回路を組むのではなく、OPアンプのような集積回路が主流になってしまいました。増幅回路も電源回路もゲジゲジの形をしたICばかりで、3本足のトランジスタを見つけるのが困難なくらいです。しかし、回路の集積化は技術の空洞化を引き起こします。トランジスタ回路の基礎を全く知らない人でも、ヘッドホンアンプやパワーアンプが自作できてしまいます。しかし、そういうことで本当にいいのか、というと私はいいわけないと思っています。「はじめてのトランジスタ回路設計」(黒田徹著/CQ出版社)という名著中の名著がありますが、この本の冒頭に「いまどき個別半導体で回路を組む人があるでしょうか。OPアンプがあるのに・・」という文章があります。まさに、基礎技術の空洞化について警鐘を鳴らしているのだと思います。

増幅素子としてその仕組みや挙動を理解するのに、真空管は比較的わかりやすいものがありますが、トランジスタはちょっと難しい気がします。私がはじめてトランジスタ回路に接したのは小学校6年生頃でしたが、どの参考書を見てもわけがわかりませんでした。自分なりに理解してなんとか自在に設計できるようになったの高校2年生くらいでしたから、トランジスタの性質をある程度理解するのになんと5年もかかっています。その最大の原因は、わかりやすい解説がなかったことにあります。トランジスタにはhパラメータというのがあって、これがよくわからなかったのです。

本サイトでは、過去に私が理解に苦労した障壁をできるだけ取って、文系の方でもわかるように工夫したつもりです。ここを見て。やっぱりわからなかったら・・・私の説明のしかたが下手なのか、それとも・・・・(以下、自粛)。


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