私のアンプ設計マニュアル / 自作オーディオ心得
自作に向く人、自作には向かない人
<自分で調べて考えて確かめる>
インターネットが生活に中に入り込んできた結果、ちょっとググれば簡単に調べ物ができる時代になりました。質問を掲示板に書き込めば、たちどころに誰かが回答をくれます。しかし、自分で考える、自分で調べる、安易に人に回答を求めない、ということの重要さは自作オーディオに限った話ではなく、人として生きるためにはとても大切なことです。私のHomePageや掲示板では特にこのことを重要視しています。

わたくしごとで恐縮ですが、私は電子回路やオーディオに関して、人に答えを求めたことはほとんどありません。自分で調べ、学習し、考えてなんとかやってきました。すべての疑問や抱えている問題の回答が得られているわけではなく、未解決な問題はたくさんありますがそれを解決するのに人に聞こうとは思っていません。そのため、行き詰って作りかけのままになっているアンプが何台もあり、失敗した基板の山があります。1996年前に壁に当たって放置されていたアンプが、2015年の夏に解決して完成したこともありました。

こんなことを書くと「あなたは初心者ではない、自力で解決できるだけの経験や知識があるからそんなことが言えるのだ」とおっしゃる方がいます。では、私が超初心者であった頃はどうだったか、やはり誰にも聞かずに自分で調べ、勉強し、勘違いし、何度も失敗し、長い間自分の間違いに気づかずにいたり・・・そうやって解決してきました。どんなに時間がかかっても。そのせいで現在の私程度の経験を得るのに50年もかかってしまいましたが、これでよかったと思っています。

私が失敗した数は誰よりも多いかもしれません。掲示板で自作したアンプのトラブルの質問が書き込まれた時、たまに私が一発で原因を見つけてしまうことがありますが、何故そういうことができるのか。答えはじつに簡単、私も過去にみなさんと同じ間違いをやったことがあるからです。私も過去にさまざまな思い違い、無知による失敗を繰り返してきました。ですから、初心者がどんな思い違いをするのか、どんな間違いを犯すのかわかるだけのことです。


<自作に向く人、自作には向かない人>

人の能力は失敗を繰り返すことで学習し磨かれます。知らないこと、間違えること、失敗することは恥ずかしいことではありません。言い換えると、他人よりもよく知っていること、間違えないこと、失敗しないことが偉いわけでもありません。失敗しないために他人に答えを求める、効率的に作業を進めるために他人を利用する・・・そういう人はものづくりには向いていません。

自作に向く人自作には向かない人
完成への道いろいろな問題に出会うと思っている一発で完成すると思っている
失敗へのスタンス失敗を恐れない
ミスや失敗は想定内
ひたすら失敗したくない
ミスや失敗するのはダメな奴
問題解決のスタンス自分で解決しようとする解決のために人を使う
トラブルのスタンス自分が原因を作った部品の不良など自分以外の何かのせい
トラブルシューティングのスタンス原因やそのようになるメカニズムを探ろうとする原因を知ろうとせずに解決法ばかり求める
正解がない問題について好む苦手
質問のスタンス自分で解決するためのヒントを求めるすぐに回答が得られると思っている
道の選択遠回りに価値を見出す最短コースを選ぶ
リコメンド私はあなたを歓迎しますこのHomePageを見ること自体が人生の無駄
自作などしないで製品を買いなさい

ビジネスの世界では、生産性や効率やスピードが成功への条件だと思われているふしがあります。自分で考えて自分で解決することよりも、仕事を人に振って人にやらせて速やかに成果を出した人の方が早く出世したりします。長い人生を大きくとらえてみると、こういうやり方は人が生きる道としてだけではなくビジネスの世界においても賢明な道ではないという気がします。このことは、60歳を過ぎていよいよ実感しています。うまいことやって最短距離を通るよりも、道草しながらつまづきながら遠回りをした方がじつは得るものが多いのだということ、生産性や効率やスピードといった価値観は、30代から50代前半にかけて誰もがかかる「はしか」のようなものであることです。


<ささやかなプライドを持って意地を張ってほしい>

インターネットの世界では、ちょっとしたことも検索したりどこかの掲示板で質問するとたちどころに回答を得ることができます。それは人の成長にとっては必ずしも良いことではありません。人に聞く前にまず自分で考えてください。「そんなこと安易に人に聞けるか」と意地を張ってください。多くの場合、答えは自分の中にで見つけることができます。但し、すぐには答えは得られず時間がかかります。

人から聞いた答えはその人のものでしかありませんが、苦労して工夫して遠回りして自分で得た答えは自分のものになります。それも最終的な答えだけでなく、答えを導き出すための思考プロセスのすべてが自分のものになり、自己成長の糧になります。


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