私のアンプ設計マニュアル / 基礎・応用編
平衡と不平衡
平衡回路については、こちら「平衡プロジェクト」を参照してください。本ページよりもはるかにきちんとした説明があります。


工事中

2つの信号伝送方式:

電流が流れるためには、行きと帰りの2本の線が必要です。懐中電灯の電池と電球を結んだ回路もそうですし、AC100Vの電源ラインもそうです。スピーカの配線も、テスターのリード線も行きと帰りの2本で構成されています。機器をつないでいるオーディオの信号経路も同じ理屈で、RCAケーブルを分解してみると、芯線とシールド被覆の2本の線からなるシールド線が使われていますね。そして、このオーディオ回路の接続などでは、2本の内の一方をアースと呼んで、シャーシにもつながっています。このような伝送方法を「不平衡である」とか「不平衡回路・不平衡伝送」といいます。

ところが、世の中には3本の線によって構成されている伝送方法も存在します。業務用のマイクロフォンなどでよく使われているキャノンコネクタは3つの端子があり、そこには2芯のシールドケーブルがつながっています。電流が流れるためには、行きと帰りの2本の線が必要なわけですが、このような接続方法では1本余計な線があるのです。そして、信号電流が流れる2本の線はどちらもアースとは切り離されていて、余計な1本だけがアースに接続されています。このような伝送方法を「平衡である」とか「平衡回路」「平衡伝送」といいます。

図1

この様子を絵にしたのが図1(↑)です。不平衡回路ではアースラインに電流が流れますが、平衡回路ではアースラインには電流が流れません。この様子を水の流れにたとえたのが図2(↓)です。

図2

電流のかわりに水が往復して流れています。一方は、行きはパイプの中、帰りは地面の上を流れており、もう一方は、行きも帰りもパイプの中を流れています。これは、それぞれ不平衡回路と平衡回路に該当します。このように、不平衡回路では平らだと思っていた地面に水が流れているのです・・つまり、わずかでも傾斜があるため場所によって高さが違います。平衡回路には水の流れはありませんから、どこまで行っても平ら・・高さは同じです。(ここでいう高さとは、アースに対して電位が同じか異なるか、という意味をさします)

平衡回路では・・・「アースには信号電流は流れない。単に、各段の電位揃えるため。」
不平衡回路では・・・「アースの電位は一定ではない。場所によって異なる。」


不平衡回路の矛盾:

市場に流通しているオーディオ機器や、我々が自作するアンプのほとんどが不平衡回路をベースにしています。その代表が、RCAピンプラグ/ジャックがついている接続ケーブル(シールド線)です。そして、不平衡回路の矛盾は、ステレオ用のオーディオケーブルで起きます。

図3(↓)は、ステレオプリアンプ(ソース機材)とステレオメインアンプ(後続のアンプ)、そしてこの2台のアンプをステレオ用のオーディオ接続ケーブル(シールド線)で接続した様子です。

図3

まず、ステレオプリアンプ(ソース機)側です。ステレオ用のオーディオケーブル(シールド線)は、シールド線の両端にRCAプラグを取り付けたものを2本対にしていますが、それぞれのアース側・・・図中の(b)と(d)・・・は絶縁されたままです。これをステレオプリアンプ(ソース機)側のRCAジャックに挿すと、それぞれのアース側はステレオプリアンプ(ソース機)のアースにつながります。これが図中の(a)点です。

今度は、ステレオメインアンプ(このアンプ)側です。ステレオ用のオーディオケーブル(シールド線)をステレオメインアンプ(後続のアンプ)側のRCAジャックに挿すと、それぞれのアース側はステレオメインアンプ(後続のアンプ)のアースにつながります。これが図中の(c)点です。このように、不平衡回路では、ステレオ構成の2台の機器をオーディオケーブルで接続した途端に、(a)点と(c)点をつなぐアースラインは、回路(b)と経路(d)の2つができてしまいます。

プリアンプのL-CHを出たオーディオ信号は、L-CH側のオーディオケーブルの芯線を通ってメインアンプの入力に達しますが、さて、その帰路がどうなるのでしょうか。(c)→(b)→(a)でしょうか。それだけではないですね。(c)→(d)→(a)を通ることもできます。R-CHの信号の帰路も同様で、(c)→(d)→(a)だけではなく、(c)→(b)→(a)を通ることもできます。つまり、不平衡回路で構成された伝送系では、左右チャネルの信号の帰路(すなわちアース)は常にいっしょくたになってしまうため、独立させることができません。これが「不平衡回路の矛盾」です。

不平衡回路では・・・「左右チャネルのアースを分けることはできない。いっしょくたである。」


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