<超簡単・超廉価>

FET式差動ライン・プリ・アンプ
Simple FET Differential Line Pre Amplifier


実験は何度も行いましたが、完成型はまだ作ってもいないのでお見せできるような画像はありません。
真空管6DJ8を使った単段差動プリアンプがとてもうまくいったので、同じ構造でFETを使ったプリアンプを作ってみることにします。高級部品など使い、大げさに仕立て上げるという作戦もなくはないのですが、そういうのは全く性に合わないので、いつもどおり、簡単、安直、廉価路線でいくことにします。

Since Tube Differential Line Pre Amplifier has been very successful, I am going to try another Differential Line Pre Amplifier using FET. In the same concept, the same configuration.


■特徴および構成

<基本回路>

FET差動ラインプリアンプの基本回路の最新版(2014.6改訂)は右図のとおりです。

この回路方式はとても変則的なもので、過去・現在ともにオーディオメーカーが採用した形跡はありません。差動回路1段しかありませんので、裸利得はあまり大きくありませんがそれでも35倍程度は取れているようです。特徴的なのは負帰還のかけ方です。差動回路の右側のドレイン出力をそのままゲートに戻しているからです。このような構成にすることで、1段増幅回路であるにもかかわらず非反転増幅器とすることができ、しかも入力インピーダンスを高くできます。

差動回路を陰で支えているのが2SK30Aを使った定電流回路です。JFETをこのような結線にすると性能の良い定電流特性を得ることができます。本機で必要な定電流特性は約4mAですので、2SK30A-GRの中からIDSS値が3.9mA〜4.2mAくらいのいものを選別して使いました。

最終利得は39kΩと18kΩの比でコントロール可能です。18kΩの値を大きくすれば利得が下がり、小さくすれば利得は高くなります。この抵抗は負荷の一部を構成するので合計値が50kΩよりも小さくならないように配慮しますが、逆にあまり大きな値だと超高域の帯域特性が劣化します。初期の設計では100kΩ+47kΩの組み合わせでしたが、今回の改訂で39kΩ+18kΩにすることで帯域が若干広くなっています。また、負帰還回路を構成する抵抗値を下げたことでS/N比も若干改善されています。

出力のところにあるCdsは電源ON/OFF時のポップノイズを低減するための回路のカプラの一部です。このカプラは、発光側がLEDで受光側がCdsです。この回路についてはこちらに詳しい説明があります。なお、少々のポップノイズは気にしないというのであればこの回路は省略可能です。その場合は出力のところの4.7μF/50Vのアルミ電解コンデンサを0.68μFくらいのフィルムコンデンサに変更してください。

電源は、+19Vと-4Vの2電源です。供給はDC24Vのスイッチング型のACアダプタで、24Vを抵抗で20Vと-4Vの分割して疑似±電源を得ています。全消費電流はわずかに15mA程度なので小型のもので十分に足ります。


<信号ループ>

本回路の信号の流れについて説明します。下図は、寿々郎氏が書かれた回路図をもとに私が一部手を加え、さらに信号経路の矢印を書き加えたものです。

差動回路の場合、増幅された信号は2つのFET(2SK170)と2つの負荷(4.7k)で作られた輪っかで信号ループを形成します・・・青い矢印。オーディオ信号は交流ですからどっち回り、というものはありませんが説明の都合上矢印を使いました。この信号電流うちのおこぼれが0.47uFから出力側に出てきます。その一部は負帰還抵抗(100kΩと47kΩ)の中を通ってアースに至ります。もうひとつは出力端子から外に出てパワーアンプに入力回路の中を通ってから出力端子のアース側に戻ってきます。そしてこの2つの信号の流れは一緒になって470uFの中を通り、B電源を経て差動回路に戻ってゆきます。

B電源とアースの間に挿入された470μFのコンデンサは今述べたオーディオ信号の重要な通り道になります。このコンデンサがないと増幅回路として成り立たないのです。このコンデンサはこのような役割とは別に、B電源における残留リプルを除去するフィルタとしての機能も果たさないわけではありませんが、残留リプルがない電池式の電源であってもこのコンデンサは必要です。従って、このコンデンサを取り付ける場所はB電源側ではなくアンプ側でなければならないわけです。もし、このコンデンサを電源回路側に取り付けてしまうと、オーディオ信号は電源回路まで迂回させられてしまいます。

回路図上では、入力側のアース(50kΩボリュームや470kΩ)と出力側のアースが離れて描かれていますが、実装ではこれらアースはすべて接近させて配線するようにしてください。


<使用半導体と動作条件>

東芝の高gmFETである2SK170-BLを使用します。2SK117-BLも使えます。2SK170の代表的な個体の静特性は右図のとおりですが、現実的には、IDSSはランクによって2.6mAから20mAに分布します。本機で使用するのはBLランクで、IDSSは定格データ上は6mA〜12mAの範囲となっていますが、実測するとおおむね8mA〜11mAの範囲でした。

2SK170のデータシート(.pdf)はこちらにあります。

2SK170は特性の範囲によってランク分けされていますが、しかし、これでもばらつきが大きすぎます。揃わないまま差動回路を組んでしまうとドレイン電流のバランスが悪くなるため、所定の出力特性が得られませんし、各部の電圧も揃いません。そのため、2SK170を数十個買い求めて同じドレイン電流においてゲート〜ソース間のバイアス値が揃う個体を選別しています。バイアス特性が揃ったFETは当方で頒布していますのでご利用ください。

右図は2SK170の特性図上にロードラインを引いたものです。電源電圧は19Vを想定し、ドレイン電流は2mAのつもりなので、ロードラインの右下ポイントは19Vからバイアスとして想定される0.3Vを引いた18.7Vとしています。傾きは4.3kΩでちょうどいい感じになりました。回路図では4.7kΩになっていますがどちらでもかまいません。

本機では当初4mAのCRD(定電流ダイオード)を使いました。4mAぴったりという定格のCRDはありません。しかも、知っている人は知っているとおり、CRDのばらつきははなはだひどいものなので1mAタイプ(E102)か2mAタイプ(E202)あたりを複数購入してきて選別し、合計が約4mAになるように並列にして使ったのですが、パワーアンプからかなり大きなサーというノイズが出ました。これと同じ回路で組んだ方からも同様の報告があります。そこで、2007年3月にはいてから、CRDをJFETの2SK30A(GRランク)を使った定電流回路に置き換えたところ、サーというのいずがきれいになくなりました。2SK30A(GRランク)は、当方で精密に分類したものを頒布していますのでご利用ください。CRDやJFETを使わなくても、ご自分で定電流回路を組んでもかまいません。


<バス・ブースト回路>

6DJ8を使った真空管式差動プリ・アンプにはバス・ブースト回路を追加しています(右回路図)。本機でも全く同じ機能がつけられますので、小型スピーカーをお使いでバス・ブースト回路が必要な方は追加されたらいでしょう。回路図中の右端「P(out)」のプレートは「D(out)」ドレインに読み換えてください。回路定数は以下のように置き換えてください。



<トーンコントロール回路>

控えめな±6dBのトーンコントロール回路を組み込んだ回路例です。トーンコントロール回路についての解説はこちら

ご注意:電源回路の1000μF/25Vと180Ωが記載漏れです。冒頭の回路図を参照してください。


<電源回路・・・AC100V電源を使う(工事中)

電源トランスを使い、オーソドックスに電源回路を組み込む場合は、以下のようにします。

残留リプルのない上質な24Vを得るには、まず30Vくらいの整流出力電圧を得て、これを24Vまでドロップさせます。小型の市販トランスの規格品は、2次巻き線電圧が18V×2くらいならたくさん出ていますが、それ以上の電圧となると急に少なくなってしまいます。そこで入手容易な12V×2のものを24V×1として使ってブリッジ整流することにします。電流容量は0.05Aもあれば充分なので高さ3cm程度のものが1000円かそこいらで入手できます。残念ながらこの規模のトランスでプリアンプ用途を意識した電磁シールドなどの対策を施したトランスはまず存在しません。従って、あまり小型のケースに詰め込んでしまうとトランスの漏洩磁束によるハムを拾いやすくなるので、配置にも充分注意してください。

AC24Vをブリッジ整流して非常に軽い負荷で使用すると、整流直後の電圧は30V〜35Vのどこかになると思います。ここから定電圧ダイオード+トランジスタ1本の簡易型安定化電源を経てDC24Vを得れば、あとは上記の24Vスイッチング電源を使った回路と同じものが使えます。

工事中



<シャーシとケース>

工事中。

■特性

工事中。

予測としては、周波数特性は、10Hz〜300kHzくらいでフラットな特性になり、歪み率特性は1V出力時で楽に0.05%を割ると思います。乞うご期待。


■補足

こんな検証をしているページをみつけました。→ 超簡単・FET差動アンプを LTSpice でシミュレート


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