アンプ試験ワークベンチ



本機から上方に4本の線がでている。
左から、「オーディオ・ジェネレータ」、「オシロスコープ1CH」、「オシロスコープ2CH」、「電子電圧計」につながっている。

これは何か

これは、アンプの試験や測定を効率的に行う道具で、被測定アンプと測定機材をスイッチとアダプタを使って自由につなぎかえられるようにすることを目的として作りました。アンプの測定では、入力信号と出力信号の両方を精密に測定・観測する必要がありますが、手持ちの測定器がすべて2個ずつ揃っているわけでありません。精密さを要求する場合は、1つの同じ測定器で入出力を測定したいこともあります。そこで、入力側と出力側に何度もつなぎ変えての測定になります。しかも、1つの入出力端子に複数台の測定器や負荷をタコ足のようにつながなければなりません。被測定アンプの入出力端子の形状はまちまちですし、与える負荷もいろいろなパターンで行いますので、そういった煩雑さもなんとかしたいと思っていました。

被測定信号出力部

本機のパネル面左3分の1は「被測定信号出力部(to 被測定アンプ)」です。測定したいアンプに信号を入力するまでの配線を楽にするしかけです。

背面左端のBNC端子はオーディオ・ジェネレータの出力端子につながっており、オーディオ・ジェネレータから試験用の信号をもらいます。もらった信号は、手前のRCAジャックあるいはBNC端子から被測定アンプに供給します。背面の左から2番目のBNC端子はオーディオ・ジェネレータからの信号をそのまま外部に送り出すもので、今はオシロスコープのCH1につながっています。2つ並んだスイッチは、被測定アンプの左右各チャネルの入力に信号を送り込むか、アースにショートさせるかを切り替えるためのものです。送り出し端子はRCAとBNCの2種類です。BNCは実にさまざまなアダプタが出ているので重宝します(下の画像)。


被測定信号入力部

本機のパネル面右3分の2は「被測定信号入力部(from 被測定アンプ)」です。測定したいアンプから出力された信号を測定器に送り込むまでの配線を楽にするしかけです。

被測定アンプからの出力を受けるための端子群がいろいろついています(RCA、BNC、赤黒端子)。20Wまでの8Ω簡易ダミーロードが内臓されています(大出力および精密な測定では別途50Wタイプの無誘導ダミーロードを使います)。背面から3系統の出力が出ており(すべてBNC)、それぞれにオシロスコープのCH2、ミリボルト計、歪み率計などをつなぐことができ、手前のスイッチで左右の切り替えと、元の信号か被測定アンプからの信号かを選択できるようになっています。

内部的には、測定系におけるアースのグラウンド・ループができにくいようにアースラインは浮かせてあり、信号経路とアースと両方セットで切り替えを行っています。これができたおかげで、被測定アンプを持ち込んでから入出力特性や波形観測ができるまでに要する時間は1〜2分程度となり、測定効率がこれまでに比べて飛躍的にアップしました。但し、欠点もあって、引き回しが若干伸びた分条件によっては高周波数帯域での挙動に正確さを欠くことがありますので、場合によっては、個別にじかに接続して測定します。


回路図

回路図の上半分「TO」が「被測定信号出力部」で、下半分の「FROM」が「被測定信号入力部」です。

測定信号は「被測定信号出力部」の右端の「FROM OSC」と書かれたBNC端子から入力します。この信号はS1、S2を経てLチャネルおよびRチャネルに分かれて被測定アンプに送り込みます。S1とS2は信号出力のON/OFFを行うためのものです。スイッチをOFF側に倒すと被測定アンプの入力はショートされ、同時に安全のため、余計なアースループを作らないために、アース側も切り離されます。

被測定アンプの出力信号は「被測定信号入力部」の左端の「FROM」の3種類の端子のいずれかから入力されます。端子は「バナナ」、「BNC」、「RCA」があります。S3はL/Rの切替えです。ここには8Ω/20Wの簡易型ダミーロードがあり、S4でON/OFFができるようになっています。出力は3系統用意されていてそれぞれS5、S6、S7によって元の信号と被測定アンプからの信号が切替できるようになっています。この時、安全のため、余計なアースループを作らないために、アース側も切り離されます。1台の測定器で被測定アンプの入力信号と出力信号をスイッチで切り替えて測定できるので作業が効率的です。

常時、「FROM OSC」端子にはオーディオ・ジェネレータ、「EXT」端子にはオシロスコープのCH1、「OUT1」にはオシロスコープのCH2、「OUT2」にはミリボルト計が接続されており、「TO」および「FROM」に被測定アンプをつなぐだけで即時に測定が可能になっています。「OUT2」には目的に応じて歪み率計あるいはスペアナをつないでいます。


使用上の注意

2現象オシロスコープの2つのチャネルを同時使用した際、余分に生じたアースループが原因のわずかなオーバーシュートが観測されることがありますので注意を要します。また、本機がかかわることで測定系全体の浮遊容量が増しますので、1MHz以上の帯域で測定誤差が生じやすくなります。ダミーロードはセメント抵抗を使った簡易タイプですので、高い周波数帯域まで正確な測定を行いたい場合は別途無誘導巻きを施したダミーロードを使うことを推奨しますが、1MHz以下の帯域ではこれで充分です。また、電力容量が20Wなので連続して測定できる最大出力は10W程度が上限です。

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