Mini Watt Tourer with USB-DAC
真空管式Tourer用電源ユニット
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トランス式ACアダプタ

電源部共通外部仕様

電源部は実験も兼ねてフル・スイッチング電源方式とトランス併用方式の2つのタイプを作ってみることにします。そのため、2つの電源ユニットは外部仕様を共通化させ、互換性を持たせることにします。仕様は以下のとおりです。

  • 入力: AC100V(日本)およびAC220V(欧州)に対応。
  • 出力: DC120V/55mA以上およびDC15V/0.4A以上。
  • 残留リプル: 0.1%以下(DC120V側:13mV以下、DC15V側:1.5mV以下)。

電源部とアンプ部の接続には4Pのコネクタが必要です。DC120Vがかかりますからあまり貧弱なものや、接触事故が起きやすい小型のものは適しません。下の画像は、2種類の4Pコネクタの重量を計っているところです。キャノンも悪くないのですがプラグとレセプタクル合わせて67gもあり、4Pメタルコネクタの28gの圧勝となりました。

電源部とアンプ部の接続には4芯ケーブルを使います。いろいろあたってみましたがなかなか適当なものがなく、比較的入手しやすいAISAN製のVCTF 0.3sq(12/0.18)を使うことにしました。これですと耐圧も許容電流も十分すぎるくらい余裕があります。線径は5.6mmあってかなり太いですが、しなやかで曲げやすく耐久性があります。コネクタおよびケーブルの接続は、コネクタピンの配置やケーブル色の順序を考慮して以下の通りとしました。

コネクタピンNo.ケーブル色接続
1DC120V-
2DC15V+
3DC120V+
4DC15V-


トランス式電源

ご注意:この電源ユニットの製作はかなりの経験と器用さを要求します。しかも、製作のガイドとなるような親切な記事はありませんし、必要部品の頒布も完全ではありません。初心者が作るのはちょっと難しいところがありますので無闇にチャレンジしないでください。

高圧(B)電源側はトランス式とし、ヒーター電源側のみ15V/0.8Aのスイッチング電源を使います。こうするだけで電源トランスの重量をほぼ1/2にすることができ、総重量も3/5くらいにおさえることができます。電源トランスは、東栄の5VAタイプの複巻絶縁トランスZ-5VAで、1次側0-90-100-110V、2次側が0-100-110-115Vというものを2個使います。1次側の巻き線をうまく組み合わせるだけで日本のAC100Vと欧州のAC220Vの両方に対応可能になるからです。

100Vの場合(日本)・・・100V巻き線を並列にする。
220Bの場合(欧州)・・・110V巻き線を直列にする。

右のグラフは、Z-5VAの整流出力の実測値です。このトランス1個あたりの電力容量は5VAです。2次側は110V巻き線を使いますので、取り出せる交流電流の最大値は、5VA÷110V=45.5mAとなります。これをブリッジ整流しますので、取り出せる直流電流の最大値は、45.5mA×0.62=28mAとなります。このトランスを2個並列にして使いますので、最大出力電流は28mA×2=56mAとなります。

低圧側は、秋月の100〜240V対応の15V/0.8AのACアダプタで小型のタイプを使います。ただし、狭い筐体に詰め込むので発熱を考えて取り出す電流の上限はやや控えめに0.5Vくらいを上限とすることにします。

<回路の説明>

全回路図は以下のとおりです。電源トランスの2次巻き線は2個並列にしてブリッジ整流しています。複数の電源トランスの並列使用には注意がいります。2次出力電圧が全く同じでないと、巻き線同士で異常電流が流れたり、負荷の偏りが生じるからです。同一メーカーの同じ型番のトランスであれば、巻き数が同じなのでその心配はありませんが、110Vと表示されていてもメーカーや型番が異なる場合は電圧が同じである保証がありませんので、確証がない限り並列使用はできません。

整流後は他のミニワッターと同じ2SK3767/2SK3067を使った簡易リプルフィルタがありますが、2SC1815を使った過電流保護回路が追加されています。この回路はどこにでもある最も一般的な方式で、0.55V÷3.3Ω=166mA以上の出力電流が流れないように制限する動きをします。これは、電源ユニットに通電した状態でアンプユニットをいきなりつなぐと、スパークが生じたり、アンプユニット側の電源のコンデンサに流れる過渡電流で2SK3767が瞬時に破壊されるリスクを回避するためのものです。しかし、電源の出力がショートした場合は、ごく短時間であれば耐えますが数十秒以上になると2SK3767が過熱して破壊します。つまり、電源回路のショート保護機能としては完全なものではありません。この回路は、電源部とアンプ部を一体で作った場合は不要です。

<製作および内部の様子>

小型化するには回路部分はプリント基板に詰め込むしかないと思っていたら、ケースの脇のすきまに15Pの平ラグがすっぽりと収まることがわかりました。15Pの平ラグ上にすべての回路が載っています。右半分は高さがあると具合が悪いので、できるだけ平たくなるように工夫しています。


↑左下の黒い線のつなぎ場所を間違えている! オレンジの線は4芯ケーブルをじかにつなぐのでこれをつける必要はなかった!

ご覧のとおりのすし詰め状態ですがきれいに収まりました。電源トランスの温度上昇はごくわずかで温度管理的にも問題ありませんでした。ケースから出ている2本の黒い線のうち細い方はAC100〜220V用の普通の平行ケーブル、太いのがDC出力用の4芯ケーブルです。平行ケーブルはケース内に入ってから2個の電源トランスの下を通って反対側にゆき、そこにヒューズ(黒い小さなBOX)があります。トグルスイッチはAC100VとAC220Vの切り替えです。平ラグから出たDC120VとDC15Vの出力は4芯ケーブルで外に出てゆきます。4芯ケーブルの先には4Pのメタルコネクタがつけてあります。電源スイッチは筐体側ではなく、AC100Vケーブルの途中に取り付けてあります。


スイッチング式電源

入力がAC100VでDC120V以上の出力が得られるスイッチング電源というのはいくつか売られているのですが、小電力で小型のものがなかなかなく、あっても基板サイズが案外大きかったり、残留リプルが多かったりでなかなか適したものがありません。樹脂モールドされた市販のACアダプタに中に, 入力がAC100V〜240Vで、出力が24V/0.25Aですが非常に小型軽量(たったの60g)かつ低残留リプルで廉価なものがあります。秋月ブランドですと1個650円です。これを5個直列にすればDC120V/0.25Aが得られます。これにDC15V/0.5Aタイプを加えても総重量は400g以下となり、いろいろ調べた中で最も軽量かつコンパクトにできることがわかりました。


<本機の特性>

仕様および測定結果は以下のとおりです。

---トランス式スイッチング式
入力AC100V or AC220VAC100V〜240V
高圧電源出力電圧130V(無負荷時150〜160V)120V(無負荷時120〜121V)
出力電流55mAmax0.25Amax
ヒーター電源出力電圧15V(無負荷時15.1V)15V(無負荷時15.1V)
出力電流0.5Amax0.5Amax
消費電力------
重量(ケーブル含む)937g---g


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