大人の自由空間
トランジスタも使います
パワー・トランジスタ

ダイオードのページで、出力段は流れる電流が大きいのでこれに対応できる定電流ダイオードがないため、いくつかの部品を組み合わせて定電流ダイオードと同じような性質を持った回路(定電流回路という)を作ると書きました。その立役者はパワー・トランジスタです。トランジスタの増幅作用を応用して、柔軟性があってしかも性能の良い定電流回路を作ります。

トランジスタには実にさまざまなタイプ、特性、規模のものがありますが、本アンプでは「2SC」タイプまたは「2SD」タイプ(どちらでもよい)のパワー・トランジスタを使います。パワー・トランジスタは、真空管アンプでいえば出力管に相当する役割を持ち、1個あたり十数ワットから数十ワットもの電力を扱うことができます。それなのに、パワー・トランジスタ本体は下の画像のようにボタン電池程度の大きさしかありません。


↑左から、定電流用に買ってきた"2SC3254"、耐圧500VでB電源でも使える"2SD799"、テフロン絶縁板(グレー)とマイカ絶縁板(透明)、絶縁ワッシャ。ほぼ原寸大。

パワー・トランジスタは、大きな放熱板に取りつけて熱を逃がすことで、トランジスタ内部の核心部の温度(接合部温度という)が規定された温度(この場合は150℃)を越えないようにして使います。ちなみに、上の画像の2SC3254は、無限大サイズの放熱板に取り付けた場合で35Wの電力を食わせることができますが、全く放熱しなかった場合は冷房が効いた環境でも2Wが限界です。本アンプでは、トランジスタ1個あたり0.5W程度しか電力消費がないため、放熱板は不要です。

パワー・トランジスタは、一部の例外を除いて、左から「ベース(B)」、「コレクタ(C)」、「エミッタ(E)」という3本の脚が出ています。この3本の脚は、3極管でいうと、

「ベース(B) 」 = 「グリッド(G)」
「コレクタ(C)」 = 「プレート(P)」
「エミッタ(E)」 = 「カソード(K)」
に該当します。

本アンプの定電流回路で使用するトランジスタは、パワー・トランジスタと呼ばれる比較的大きなサイズのもので、耐圧が50V以上、流れる電流(コレクタ電流という)の最大定格が1A以上、そしてhFE(電流増幅率)が60以上(大きいほど良い)のものであればOKです。この条件を満たすパワー・トランジスタは掃いて捨てるほど種類があります。以下の表には、秋葉原の部品屋の店頭に並んでいた中からピックアップしておきました。

部品名 使用個所 規格 数量 Notes
パワー
トランジスタ
出力段
定電流回路
耐圧>50V、
コレクタ電流>1A、
コレクタ損失>15W、
hFE(電流増幅率)>60
東芝 2SC3709 (80V、12A、30W、hFE=70〜240)
東芝 2SD2531 (60V、4A、25W、hFE=100〜320)
三洋 2SD1667 (50V、5A、25W、hFE=70〜280)
ローム 2SD1763 (120V、1.5A、20W、hFE=60〜320)
4 放熱器に取りつける時
絶縁板不要タイプ
足の接続:
左から「B-C-E」
日立 2SC1061 (50V、3A、25W、hFE=35〜320)
東芝 2SC1624/1625 (120V/100V、1A、15W、hFE=70〜240)
三洋 2SC3254 (80V、7A、35W、hFE=170)
東芝 2SC2238 (160V、1.5A、25W、hFE=70〜240)
NEC 2SC2275 (120V、1.5A、25W、hFE=150)
三洋 2SC3252〜3254 (60V、3〜10A、30〜40W、hFE=170)
放熱器に取りつける時
絶縁板必要タイプ

一般知識として

ほとんどのパワー・トランジスタは、3本脚の中央の「コレクタ」は穴が開いた金属製の放熱フリンジと中でつながっています。ですから、このパワー・トランジスタをいきなりシャーシなどにネジ止めすると、コレクタがシャーシにショートしてしまうのです。そうならないために、熱を通し易く絶縁性能が優れているテフロン製やマイカ(雲母)製の絶縁板を挟み込み、さらに、ネジが放熱フリンジの穴に触れないような構造の樹脂製の絶縁ワッシャをはめ込むということをやります。更に、熱伝導を良くするために、接触面にはシリコングリスを薄く塗っておきます。

但し、今回、上記部品表の例に掲載した4種類のパワー・トランジスタは、全面が樹脂モールドされたタイプなので、「絶縁板」は不要です。

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