大人の自由空間
抵抗器
抵抗器とオームの法則

抵抗器の働きを理解するには、どうしても「オームの法則」を理解する必要があり、できれば暗記して欲しいと思います。オームの法則は、アンプの設計で必要なのはいうまでもありませんが、誰かが設計したアンプをガイドに従って製作する場合であっても、部品の選定、動作の確認、トラブルの解決、改造とグレードアップ、といったあらゆる局面で必要になってくるからです。カスタードプリンのレシピを覚えるよりも簡単ですから、頑張って覚えてください。

2.オームの法則その1
3.オームの法則その2
覚えましたね。では早速、演習問題です。

設問1. 100Ωの抵抗器に60mAの電流を流した時、抵抗器の両端には何Vの電圧が生じますか?
設問2. 設問1.の抵抗器が消費する電力は何Wですか?
設問3. 設問2.の抵抗器と直列にトランジスタが存在し、その両端に18Vの電圧が生じています。このトランジスタは何Wの電力を消費していますか?

はい、よくできました。こういう計算は、いつでも「そら」でできるように練習しておいてください。(答えは本ページ末尾)


抵抗器いろいろ

抵抗器にはいろいろな素材、構造のものがあり、それぞれに長所・短所があります。中でももっともシンプルで安価なのが「カーボン皮膜抵抗(通称カーボン抵抗)」です。カーボン皮膜抵抗は、1Ω〜数MΩの広い抵抗値が作れ、1W型以下の小型抵抗として広く使われています。精度はK級(5%)が一般的で、特性も優れています。秋葉原あたりでは1本5円〜10円程度で入手できます。

金属系抵抗器には、金属皮膜抵抗金属酸化物皮膜抵抗などがあります。金属皮膜抵抗は、10Ω〜2MΩくらいの範囲で、1/2W以下の高精度な小型高性能抵抗ですが価格は高めです。10Ω〜100kΩくらいの範囲で、1W以上数Wまでの中電力用としては金属酸化物皮膜抵抗が安く普及しています。タンタル合金薄膜抵抗は安くはありませんが、高精度・高安定性で普及しつつあります。

巻き線抵抗には大電力系と超高精度系の2種類があります。大電力系の代表選手であるセメント抵抗は、0.1Ω〜数kΩくらいの抵抗値で、1W〜10W程度のものが一般的ですが、放熱フィンを取りつけた数十Wのものもあります。また、数十W規模では、ちくわ状のボビンに巻いたホーロー抵抗があります。一方で、超高精度系の巻き線抵抗では、精度1%以下のもので抵抗値は1000MΩなんていうものまであり、しかも温度による誤差が極小(数ppm/℃)のものが作られていますが、オーディオ用途としてはあまり意味はないでしょう。

←安価で手軽に入手できる抵抗器。

左上から下へ、
7W型セメント抵抗器、
3W型金属酸化物皮膜抵抗器とセメント抵抗器、
2W型セメント抵抗器と金属酸化物皮膜抵抗器2種、

右上から下へ、
1W型金属酸化物皮膜抵抗器2種、
1/2W型カーボン皮膜抵抗器2種。

抵抗器は所詮電熱器なので、一定の大きさがないと熱を逃がすことができない。同じW数でより小型の抵抗器は、耐熱性能が高いだけで、現実にはより高温になるので注意がいる。


抵抗器の選択と実装

抵抗器の実装で注意しなければならない最大のポイントは、電力(熱)設計です。本ページの冒頭の演習問題にもありましたように、抵抗器が消費する電力がどれくらいであるか、どのタイプの何W型の抵抗器を選ぶかが設計のポイントです。1/2W型の抵抗器に定格どおり「0.5W」の電力を食わせると、その抵抗器の温度はさらに50℃〜100℃上昇します。シャーシ内温度が40℃だった場合、その抵抗器の表面温度は90℃〜140℃にもなります。それは、抵抗器のW数が「その抵抗器が燃えない」ことを条件に決められているのが普通だからです。しかし、部品の温度がこんなにも高温になったのでは、アンプ本体が異常に熱くなってしまうわ、部品の寿命が縮むわで、ろくなことがありません。

そこで実装では、定格W数に対して余裕を持たせる(ディレーティングという)を行います。私の推奨ディレーティング率は「25%」です。1/2W型の抵抗器に食わせる電力は1/8W、すなわち125mW以下に抑えます。こうすることで、温度上昇は15℃〜40℃くらいにとどめることができます。

次に、抵抗器の種類の選択ですが、まず、基本ルールとしてどんなに消費電力が小さくても1/2W未満の小型抵抗は使わないことにします。部品の信頼性の視点から、いちばん小さくても1/2W型を使うということです。特に高価な抵抗器である必要はなく、最も安価なカーボン皮膜抵抗と、セメント抵抗金属酸化物皮膜抵抗ですべて揃うと思います。

なお、小型抵抗器のほとんどは、抵抗値がカラーコードで表示されています。はじめての人にとって、これほどわけのわからないものはないでしょう。慣れた人でも間違えて購入してしまうことが多いので、購入したら必ず1本1本テスターで抵抗値の確認をしてください。

参考ページ: 7.抵抗器の種類と使い方(カラーコード表付き)


可変抵抗器の選択と実装

可変抵抗器、俗称=ボリューム。本機では、音量調整のために入力のところに1個使います。可変抵抗器は、抵抗体(炭素皮膜)を円形に塗ったところに回転する接点を当てて、接触する場所によって抵抗値が連続的に変化するようにした部品です。可変抵抗器のタイプには「A型」と「B型」があります。「C」とか「D」もありますが使うことはありません。

A型・・・音量調整で使った時に、人間の耳が感じる音量の変化が直線的に聞こえるように、意図的に塗りムラをつけたもの。
B型・・・全体に均一に塗ることで、回転とともに抵抗値が直線的に変化するようにしたもの。

本機で推奨するのは、「アルプス製ミニ・デテント・ボリューム 50kΩAタイプ×2連」です。回転とともに、コリコリッとクリックがあるタイプで、抵抗値精度が高く、音質的にも定評があるものです。下図は、角度による抵抗値の変化と、左右チャネル誤差の実測値です。ちょっとびっくりするくらいの高い左右精度が出てます(グラフでは見事に線が重なってしまっている)。お値段ですが、若松通商(通販もある)で1,800円でした。

下図のデータは、秋葉原のジャンク屋で1個140円で購入した「100kΩAタイプ×2連」です。実測してみたところ、左右でかなりの誤差があり、一方のチャネルの方が最大で1.4倍(3dB)ほども差があります(下図右の赤い線)。こんな現象は、家にあるステレオやWalkmanで経験された方も多いと思います。そこで、これを補正するために、ボリュームについている3つの端子のうち、入力側〜出力側(真中)間に一定の抵抗(180kΩと360kΩ)を入れてみることにしました。その結果が、下図右の青い線です。良く使う範囲(30%〜100%)の間ではチャネル間の誤差は±1.1倍以下にまで低減できています。これならば、違和感なく使えるでしょう。


演習問題の答え:

設問1. オームの法則 E=IR より、 0.06A×100Ω=6V または 60mA×0.1kΩ=6V 。
設問2. オームの法則 P=IE より、 0.06A×6V=0.36W または 60mA×6V=360mW 。
設問3. オームの法則 P=IE より、 0.06A×18V=1.08W または 60mA×14V=1080mW 。

講座メインメニュー に戻る
Mail to:→ teddy@highway.ne.jp