大人の自由空間
特性の測定
警告!
本機のヒーター回路はトランスレス式であり、2014年現在の安全基準を満たしていません。その昔、ごく当たり前に行われていたトランスレス式のヒーター回路は現在では使うことができません。従って、本機の電源回路をソックリそのまま製作しないでください。ヒーターは必ずAC100Vから十分に絶縁されたトランス式やスイッチング電源式を採用してください。

16A8(3結)全段差動おまけアンプの概要

ほんのついでに製作したのは、東栄変成器製トランスを使った「16A8(3結)全段差動プッシュプルおまけアンプ」です。1.5W×2の小出力でしかも総製作費15,000円のエコノミーなアンプですが、期待以上のパフォーマンスが得られ、我が家においてはメイン・システムとしても通用するものができました。東栄製の2,500円出力トランスは超お買い得であると思います。

初段管:16A8(3極部)
出力段管:16A8(5極部を3極管接続)
出力トランス:東栄 OPT-10P×2
電源トランス:東栄 ZT-03ES
消費電力:55W

 左チャネル右チャネル
総合利得(無帰還):8.23倍8.48倍
総合利得(NFB):5.88倍6.06倍
D.F.(無帰還):1.631.70
D.F.(NFB):2.572.70
NFB量:2.9dB2.9dB
残留雑音(補正なし):0.61mV0.62mV


全回路


周波数特性

東栄製のOPT-10Pは、2,500円というきわめてお手軽なプッシュプル用出力トランスです。塗装もないむき出しのトランスですが、重量は正味0.75kgありますので、その実態は見かけほどちゃちではありません。

アンプとしての仕上り特性では、無帰還のままでも10Hz〜20kHzで-0.8dB以内に収まっていますから2,500円トランスもあなどれません。無帰還状態の周波数特性(細い線)で、50kHz、170kHz、450kHz付近に小ピークが見られます。

位相補正なしで2.9dBの負帰還をかけたところ(太い線)、170kHzのピークが頭を上げてきました。より多くの負帰還をかけた時は、このピークの挙動でどれくらいまで負帰還をかけられるかが決まりそうです。

本機は、そもそも利得の余裕もないので位相補正なしのまま2.9dBで仕上がりとしました。最終特性は、10Hz〜40kHzで-3dBです。中域に充実感があり、しかも豊かな低域が得られています。

測定:2002.9.14


左右チャネル間クロストーク特性

全段差動プッシュプル回路らしく、左右チャネル間の信号の漏れは残留雑音レベル以下です。

これまで製作したどの全段差動プッシュプル・アンプよりも定位が良く、精緻な定位感が得られています。他の全段差動プッシュプル・アンプも本機同様に非常にすぐれた左右チャネル間クロストーク特性が得られていますので、何故、本機が特に定位感が良いのかは、謎です。

測定:2002.9.14


歪み率特性

本機の弱点はヒーター回路にあります。AC100Vからじかにヒーターを点火しているため、ヒーターからのハムを拾いやすくなっています。実際、無作為に選んだ16A8を実装したところ、数本に1本の割りでヒーター・ハムが大きい球がありました。(トランスレス式のヒーター回路は現在は禁止です)

弓なりになった歪み率のカーブは、典型的な全段差動プッシュプル・アンプ型を表しています。100Hzでもさほどの劣化もなく、小型出力トランスとしては良い出来だと思います。むしろ、10kHzが全体として良い数字なのが興味深いです。測定誤差かと思いましたがそうではありません。

この出力トランスは1次巻き線抵抗が8kΩに対して約400Ωもあり、これだけで出力段から得られるパワーの9%が消耗されます。2次巻き線抵抗まで計算に入れると電力ロスは20%くらいになります。5%歪みで約2Wが得られていますから、設計の意図どおりの結果が得られました。

なお、製作当初は、電源トランスのキャパシティがはっきりしなかったので、ロードラインが最適化されないことを知りつつ出力段のプレート電流を抑え目(20mA×2)にしていましたが、もう少し余裕があることがわかったので22mA×2に増量しています。これによって、当初1.5W×2だったものが2W×2にアップされています。

たった2W×2のミニワット・アンプですが、スピーカーの設定や条件さえ良ければ、近所迷惑となるほどの雄大な音場が得られます。

再測定:2003.3.23

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