6AH4GT プッシュプル・アンプ歪み率特性


歪みの傾向は非常に特異的で、シングルアンプによく見られる直線的な上昇でもなければ、プッシュプルアンプによく見られるハードディストーション型でもありません。各周波数の曲線は良く揃っており、最大出力付近でも100Hzも10kHzもへばっていません。

そして、5%歪み時の出力がたったの4W強ですから、プッシュプルアンプとは思えない小出力です。6AH4GTを普通のプッシュプル回路で使ったら6Wは出せてしかるべきところです。差動プッシュプル回路が、純A級動作しかできない宿命です。

0.5W〜最大出力間の弓なりになった特性が、差動プッシュプル回路の特徴です。そして、歪み成分には2次歪みはほとんどなく、大半が3次歪みを主体とする奇数次歪みです。

世間一般には、「奇数次歪みは耳に不快感を与える有害歪みだが、偶数次歪みは不快感がないので少々のことは気にしなくとも良い」といった、奇数次歪み有害論が主流ですが、本機を製作してみて、はたしてこの通説は本当なのだろうか、と疑いを持つようになりました。

測定条件:8Ω負荷時、L-ch、1999.7.31、RCA製6AH4GT