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■■■デジタルオーディオ迷信のお祓い■■■
Basic Knowladge of Digital Audio


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●耳タコな44.kHzダメ論

CDが世に出た時、記録再生できる周波数帯域が22kHzであることに幻滅し、早々にデジタル・オーディオ叩きが始まったのを記憶されているオーディオ・ファンの方も多いと思います。オーディオ帯域が20Hz〜20kHzであるという認識がある一方で、オーディオ・アンプもスピーカーも20kHzを超えてより広帯域をめざしてスペック競争の只中にあったところに、「はい、22kHzで切りますよ」というCDの登場は実にショッキングな事件でした。

以来、「CDには22kHz以上の音はないからダメ」という主張は耳にタコが1000個くらいできるほど語られてきたわけです。

この世に登場した当時のCDの再生音が、これまでLPレコードやテープデッキの音に慣れた耳に受け入れられなかった事実は、その背景にさまざまな止むを得ない事情があったにせよ事実として受入れる必要があります。ただ、その原因が「「CDには22kHz以上の音はないから」ということで説明されてしまい、多くの記事によって拡散され、(私を含む)多くの人々によって信じられて、それがいまだに根強く語られている現実はまことに残念だと思います。

デジタル・オーディオの再生波形が、なめらかでにカクカクな形だからダメなんだ・・・なんていう噴飯もののお説を信じている人は流石にここにはいらっしゃらないと思いますが、オーディオにとどまらず世に珍説は尽きません。合掌。


●ハイレゾ礼賛

昨今流行のハイレゾ(High-Resolution Audio)の定義はじつにさまざまですが、「CDのサンプリングパラメータ(44.1kHz、16bit)よりもレゾリューションが高いデジタル・オーディオ」というのが一般的な定義のようです。この定義を見ても、CDはダメというニュアンスがじわーっと伝わってきて興味深いものを感じるのは私だけでしょうか。さて、ハイレゾには2つのベクトルがあります。

ひとつは、16bitに限界を感じて24bitをめざすという方向です。レコーディングの世界では、ヘッドルームに余裕を持たせた分16bitが目減りして実質14bitくらいに落ちてしまうのでサンプリング・レートよりもビット・デプスの方を重要視しています。16bitの理論的ダイナミックレンジは98dB(96dBではない)で、現実的なダイナミックレンジの上限は92dBほどですので人間の耳のダイナミックレンジの120dBには及びません。しかし24bitとなると141dbのダイナミックレンジを持ちますので、十分にオツリがきます。

もうひとつは、44.1kHzに限界を感じて48kHzあるいは96kHz、さらには192kHzのサンプリング・レートをめざすという方向です。CDが登場した時、16bitに問題を指摘した声はないに等しくもっぱら44.1kHzの帯域問題が指摘されました。ハイレゾ対応と言われるオーディオ・ソースはもっぱら高サンプリング・レートがターゲットのようです。オーディオ・ファンの関心はいかに高い周波数まで記録再生できるかなのだということなのでしょう。

もっとも、ハイレゾを宣伝する記事や製品の広告を見ると、物理的なスペックをどうこう言うのではなく、「ハイレゾ」という言葉が無定義のまま勝手に歩いているように見えてなりませんが、そういうことでもお金を使ってくれる人がいないと日本の経済もいろいろと困るのでしょう。


●22kHz以上の帯域にどれほどの意味があるか

「CDには22kHz以上の音はないからダメ」という主張にとって都合の悪い事実があります。それは、録音ソースには22kHz以上の帯域には音がない、それどころか18kHzですらほとんど音は存在していない、という現実です。

「CDには22kHz以上の音はないからダメ」という主張には、22kHz以上の帯域にも音楽として欠かすことができない音が記録されていることが必要条件であり、かつその帯域の音が失われたことが原因で音楽に欠損が生じなければなりません。この前提が崩れたら、「CDには22kHz以上の音はないからダメ」という主張は全く意味を失います。

1960年代〜1980年代のアナログ最盛期の録音機材やスタジオ機材の中で、帯域の深刻なボトルネックになるのはマイクロフォンとレコーダーです。私は当時のマスターテープをいろいろ所有していますし、それを記録再生するスタジオ用マスターデッキも保有していますが、そこに記録された生音源の解析をしてみると20kHzあたりから上がすっかり切れています。帯域を22kHz以上に延ばしても、そこに入れる音がないというのは困ったことです。

再生側にも隠れた問題があります。SHURE V15のような広帯域を誇る高級MMカートリッジであっても、レコードプレーヤとアンプをつなぐケーブルの容量とPHONOイコライザ・アンプの入力容量のせいで、ほとんどの場合再生帯域は15kHz〜18kHzあたりでスパッと切れています。そういった帯域再生能力に決定的な違いとは関係なくLPレコード礼賛者が多数存在するということは、LPレコードの音の魅力が帯域と関係ないことの証拠でもあるわけです。

もし、44.1kHzよりも48kHzが優れていて誰の耳にも明らかなのであれば、DATがその扱いの不便さにもかかわらずオーディオ・マニアの間に生き残ったはずですが、そのような話題もないままあっという間に跡形もなく消えてしまいました。

それでも、CDの音に比べてLPレコードの音が心地よいと感じるのは、22kHzから上の帯域まで出ているからと主張するのはかなり苦しいように思えます。しかし、私達は「CDには22kHz以上の音はないからダメ」「アナログはCDのように高域が切れていない」という刷り込みがあるためにそれをかざすしかないのでしょうか。


●16bit/44.1kHzの再評価と課題

CDグレード(16bit/44.1kHz)のスペックが完璧だとは言いませんが、相当に良い音が出せることは確かだという実感があります。

私達が保有する魅力的な音楽ソースのほとんどはLPレコードかCDグレード(16bit/44.1kHz)のデジタル音源です。我が家の日常生活を豊かにしてくれている音楽ソースも例外ではありません。だとすれば、これらの音源をいかに快適に再生するのかが最優先課題ということになります。このHomePageで、ハイレゾ再生に見向きもせず、もっぱらLPレコードかCDグレード(16bit/44.1kHz)のデジタル音源の再生に取り組んでいるのは、こうした理由があるからです。

ごく最近「デジタルソース機器にはLPFを標準装備」という記事を書きました。これなどは、帯域を狭くすることで音が良くなるというハイレゾとは逆のアプローチです。デジタルソースの再生では、帯域を広くすることの方が音を損ねる原因となります。

2018年に我が家のLPレコード再生の環境を大幅に改善しました。その結果、LPレコードの再生音がDACを通して聞いているデジタルソースの音にどんどん近づいてきて、時々「今聴いているのはiTunesだったかしら」と間違えることすら起きています。これは一体どういうことなのでしょうか。もしかすると、今まで聴いていたLPレコードらしい再生音は偽物で、今聴いているCDやLPレコードの音が本物なのかもしれません。


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