Digital Audio & Home Recording

■■■iTunesによる高音質再生■■■
iTunes How to Do


iTunes


●PCオーディオは音はいいのか、わるいのか

iTunesの音はいいのわるいの、圧縮音源の音は駄目だの駄目でないの、16bitじゃ駄目で24bitじゃないといい音ではないのどうのこうの、と世の中かしましいですが、PCオーディオはそれこそピンキリなのでなんでもありなのです。どうしようもないひどい音もあれば、CDと同じレベルなのにハァ〜と溜息が出るくらいいい音もあります。

MDが登場してこれをはじめて聞いた時、多くの人が「結構いけるが、確実にCDよりも劣る」と感じたと思います。理屈はともかく、耳で聞いた印象でいうと、音がざらついた感じ、くっきりはっきりしてはいるが奥行きがない感じがありました。これはデータサイズを小さくするために圧縮した音の特徴をよく表していると思います。ちなみに、MDのビットレート(後述)はステレオで292kbps(方式はATRAC)であり、数字だけみるとiTunesのデフォルトフォーマットをほぼ同等ですが、エラーが多すぎて無駄に修正している、圧縮方法がへたくそすぎるという問題もありました。

さて、圧縮された音はどのように聞こえるのでしょうか。

聞き分けがしやすいのはヴァイオリンの音です。どんな名手がいい楽器を弾いていても、圧縮された音はささくれた感じ、ぎすぎすした音、なめらかさを欠いた音、刺激的な音に聞こえます。音質だけではなく、数人で演奏するアンサンブルを聞くと、ひとつひとつの楽器の存在がわかりにくくなり、存在感が薄い楽器がでてきます。圧縮されていない高音質で聞くと「あら、そんな楽器も鳴っていたのね」みたいな発見があります。真に良い装置で聞くと、演奏者の息づかい、ピアノのタッチの具合、ダブルベースの指がこすれる音などがリアルに聞こえてきますが、圧縮音源にはこういう感じがありません。さらに、超低域の音の広がりや包み込まれるような豊かな感じもなくなります。


●CDのビットレート(kbps)

デジタルオーディオでアナログ信号をどれくらい精密に分解してデジタル化するか・・・量子化という・・・には「量子化ビット数」と「サンプリング周波数」の考え方があります。CDの量子化ビット数は16bit、サンプリング周波数は44.1kHzです。ある瞬間のアナログ信号を16bitで分解し、それを1秒間に44,100個作るわけですから、705,600bit/毎秒すなわち、705.6kbit/毎秒ということになります。ステレオでは2倍になるので1,411.2kbit/毎秒すなわち1,411.2kbpsです。この数字が判断基準のひとつとなりますのでよく覚えておいてください。ちなみに、FM放送は96kbps相当、地上デジタルテレビ放送の音声は144kbpsですからCDに比べると一桁落ちます。

基準はCDの1,411.2kbps
量子化ビット数とサンプリング周波数に関する基本的な説明は前章を見てください。


●圧縮の話

デジタルオーディオでは、転送したりディスクに格納したりするデータ量を減らすため、圧縮する技術があります。データの圧縮技術はコンピュータが企業で使われはじめた1970年代から研究されていて、私もパソコンなど登場するもっとずっと前の1980年頃にデータ圧縮ソフトを企業向けに販売したりしてました。電話の音声からはじまって、オンラインシステムの画面、携帯端末やインターネットなどのネットワークでは、圧縮していないデータはないといっていいでしょう。

圧縮しても完全に元に戻せるのを可逆圧縮といい、圧縮する際にデータを切り捨てたり値を変えてしまうので完全に元には戻らないのを非可逆圧縮といいます。可逆圧縮の代表といえばZIPやLZHがありますね。ビジネスデータを扱うソフトの圧縮は基本的に可逆圧縮です。非可逆圧縮で身近なものというとJPEGがあります。BMPファイルをJPEGで圧縮するとところどころ汚れたようになって元に戻りません。可逆圧縮では圧縮率に限界がありますが、非可逆圧縮は割り切り方ひとつで1/10さらには1/100以下にも圧縮が可能であり、圧縮率に応じて品質も変化します。

音声データの圧縮は、約1400kbpsのCDレベルのデータを音質を損なわずにどれくらい効率的に圧縮するか、ということが目的のひとつでした。規格はさまざまあって、最初に普及したのはMP3です。大きな音の周辺の小さい音は聞こえにくくなるので削ってしまってもわからない、低い周波数の小さい音も聞こえないので削ってしまってもわからない・・・はず、という風な考え方でデータ量を減らすわけですが、人が考えることは常に浅いといわざるを得ず、理屈ではわからないはずなのにやってみると圧縮された音声はバレバレなのですね。理論として有名なフレッチャー・マンソンの曲線データ(Harvey Fletcher and Wilden A. Munson、1933)などが使われたわけですが、私はあのデータの測定方法に対して、解釈方法に重大な誤りがあると思っています。フレッチャー氏とマンソン氏が知ったら「あのデータはそんな風に解釈して使うんじゃない!意味が違う!」と言うと思います。128kbpsくらいまでの圧縮なら多くの人にバレないで圧縮可能と言われていますが、多くの人が128kbpsの音質には不満を持ったようです。ちなみに、MP3のビットレートの上限は320kbpsです。

MP3の後継がAAC(Advanced Audio Coding、先進的音響符号化、1997〜)で、iTunesおよびiPodで標準採用されているだけでなく、テレビ放送など非常に多くのメディアで採用されています。MP3もAACも、圧縮の方法論の違いはありますがどちらも非可逆圧縮であるため、程度の差はありますが音の劣化は必ず生じます。

Appleロスレスは、可逆圧縮ですので音データの劣化はありません。しかし、圧縮率はせいぜい50%程度にとどまります。

WAVおよびAIFFは、ともにフォーマットがほんのちょっと異なるだけで事実上同格で無圧縮です。無圧縮ということは、音の劣化を引き起こすデータの欠落はありません。そのかわり無音でも大音量でも同じだけのデータサイズを消費するためファイルサイズがものすごく大きくなります。


●iTunesのインポート設定の選択肢

iTunesの音を決定する要素のうち最大のものは「インポート設定」にあります。CDをiTunesに読み込ませる時、iTunesはCDのデータを「インポート設定」で指定したフォーマットに変換してからiTunesに取り込みます。 Windows版のiTunes 10〜12の場合ですと右のような画面が出ます。選択肢として以下の5つが選べます。 iTunesの設定で表示される選択肢を見ると、最高でも320kbps(ステレオ)どまりであったり、48kHz/16bitが上限であったりするわけで、デジタルオーディオのハイエンドを狙ったものではないことがわかります。この制約のある条件の中で、どれだけいい音で聞けるようにするか、という判断をすることになります。

パソコンが苦手な方は「もう、わけがわからないから、とにかく僕はどうすればいいんだい?」と言いたくなるかもしれませんね。というわけで、私のおすすめは以下のとおり。

とにかく最高音質>・・・Appleロスレス・エンコーダ。
ディスクを節約しつつ得られる最高音質・・・AAC→カスタム→320kbps。
何も考えずにiTuneをインストールしてそのまま使っていた場合は、おそらく「AAC→iTune Plus(256kbps)」あたりになっていると思いますので、AAC 320kbpsあるいはAppleロスレスに変更することで「おおっ」と声が出るくらい確実にレベルアップすると思います。なお、すでに低レートで読み込んでしまったソースのレートを上げても効果はありません。より高音質の設定に変えた場合は「CDの入れなおし」をしてください。

●ファイルサイズ問題

気になるファイルサイズと圧縮率を調べてみましょう。サンプルで使用した曲はCD「CASA / Morerenbaum2 & Sakamoto」から"Amor Em Paz" と"Bonita"の2曲です。

Amor Em PazBonita
時間3:514:22
WAV39,805KB100%45,134KB100%
Appelロスレス19,221KB48.3%24,975KB55.3%
AAC 320kbps9,008KB22.6%10,355KB22.9%
AAC 256kbps7,506KB18.9%8,469KB18.8%

WAVフォーマットの場合、CD1枚あたり500〜700MBくらいになりますので、100枚ですと50〜70GB、300枚では150〜210GBくらいになります。Appleロスレスでは約半分になりますので300枚分でも80〜110GBあれば足りる計算になります。いまどきのちょっとディスク容量の大きめなPCであればAppleロスレスで贅沢をしても十分に運用に耐えるのではないかと思います。

しかし、モバイルで音楽を楽しもうという場合、Appleロスレスですと16GBのiPod nanoでCDが40枚くらいしか入りません。それで足りるなら問題ないですが、もっと入れたいというならACC 320kbpsあるいはそれ以下にすることになります。


●PC側のボリュームは常にMAXが基本

PCオーディオの高音質再生では「DACを出るまでのPC側では決してボリュームを絞らない」すなわち「PC側のボリュームは常にMAX」が基本です。音量調整はアンプ側で行います。

何故かというと、PC側でボリュームを絞ってもDACから出てくるノイズは変わらないからです。ノイズの大きさが変わらないのに楽音が小さくなるということは、すなわちS/Nの劣化にほかなりません。当サイトでご紹介しているトランス式DACの場合80kHz帯域における残留ノイズは、2Vの出力(0dBFS)に対して100μVくらいですからS/N比は86dBくらいですが、PC側で音量を16dB絞ったらS/N比は70dBまで落ちてしまいます。何のためにDACのLPFで工夫したのは意味がなくなってしまいますね。

PC側のボリュームは常にMAX
PC側でボリュームを絞るとまれにbit落ちが発生することがあります。DACはフルbit(通常は16bit)のデジタルデータが来た時に最大の能力を発揮しますが、DACよりも手間でボリュームを絞るということは、16bitを使い切らないデータに変換することになります。6dB絞れば15bitになり、12dB絞れば14bitに落ちてしまったデジタルデータをアナログ変換することになります。これでは、いくら良い音楽ソースを手に入れても、上等なDACを使っていても意味がありません。しかし、最近のDACチップはiTunesなどのソフトウェア側でボリュームを絞った場合、そのポジションを認識してビット落ちがないような内部処理をするものも結構あります。当サイトで製作しているPCM2704を使ったものは、iTunes側でボリュームを絞ってもビット落ちは生じないようです。

●iTunesその他の設定・・・再生環境設定

「曲をクロスフェード」は、曲と曲のつなぎかたの設定なので、音のよしあしには関係ありません。→好みで決める

「サウンドエンハンサー」は、音のエッジをきかせ際立たせるように聞こえる加工を行うエフェクタの一種で放送の音声やCMなどによく使われています。放送で聞いたら妙にエッジが立っていてカッコよかったのに、買ってきたCDを聞いたら地味で大人しい音だった、なんていうことが起こるのはコレが原因です。業界ではBBEという名の装置が知られています。Pod Castのソースはこの種のエフェクタを極端に効かせているので、ちょっと聞くとすごくいい感じで引きこまれるのに、長く聞いていると疲れてしまいます。この機能は再生時だけのものなので実際にいじってみて、何がどうなるか確かめてみたらいいでしょう。良い再生装置を持っている場合は、こんなものはいらないということに気づくのに時間はかかりません。→常にOFF

「イコライザ」は、デジタル処理によって行うトーンコントロールの一種ですが、業務用のミキサーなどに搭載されているものは別として、PCオーディオに装備されているデジタルイコライザはきわめて低品質なので使わないようにします。低い周波数ほど悪影響が出にくいので、使う場合はせいぜいBassブーストくらいにしておきます。また、急峻なブーストやカットを行うと波形がきたなくなるので、できるだけゆるやかなカーブになるようにします。ブーストした場合は、デジタルフォーマット上で0dBFSの最大信号において波形がクリップしてしう可能性が生じますので、イコライザ付属の音量調整ボリュームをすこし絞っておくことを推奨します。→常にOFFまたは控えめなBassブースト

「サウンドチェック」は、CDごと曲ごとに音量バランスが異なる場合に、それを揃えて聞こえるようにする機能です。このような操作には「ノーマライズ」というちゃんとした呼称がありますからサウンドチェックなんていう意味不明な呼び方はよくないですね、実は、CDを作成する時のマスタリングという工程でマスタリングエンジニアがプロデューサーやレコーディングエンジニアの意図も汲みつつ丁寧にこれをやっていますので、素人が作ったものや余程に古いCDでもない限り、再生時にやる必要はありません。むしろ、これをONにしてクラシックを聞くと、第一楽章は普通の音量だったのに静かなはずの第二楽章が異様に大きな音で鳴ってくれたります。また、この機能は音質も損ねてしまうのでまず使っている人はいないでしょう。→常にOFF



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