本音爆裂・神経逆撫

師匠と弟子のいいたい放題

<続編>


弟子からの手紙
2001.1.25

お師匠様

しばらくのご無沙汰をしております。鼻と喉がお弱い師匠のことですから、これほどに寒い日が続きますと、ティッシュペーパー代で師匠の家計が圧迫されているのではないかと案じ申し上げております。師匠のHomePageや掲示板も、いつもながらの賑わいで弟子としてもうれしい限りでございます。私の方は、相変わらず薬いらずの馬鹿者でございますので、「師匠と弟子のいいたい放題」をお払い箱になってからも、元気に走りまわっております。

さて、昨年の暮のことですが、些細な事件がございました。師匠には内緒にしておりましたが、私には(自分でいうのもなんですが)ちょっと個性的でキュートなのガールフレンドがおります。その彼女が、自室でゆっくり音楽を楽しみたい、と言うもんですから、クリスマスにオーディオ・システムをプレゼントしようと思い、どうしたものかと考えておりました。自作道に励む者として、ここはひとつ奮発して45シングル・アンプに英国製のコンパクトなスピーカーの組み合わせなんていいだろうな、などと考えたりもしました。

いろいろ悩んだんですが、結局、自作はやらずにパイオニア製のNS1という壁掛け式のミニコンポを贈りました。何故って、師匠には申し訳ないですが、自作のアンプではなんだか彼女の部屋には似合わないような気がしたからです。MDレコーダー/プレーヤーとCDプレーヤー、ラジオがセットになった、ちょっとB&Oの真似っぽいお洒落なやつです。

せっかく、師匠の許で自作の腕を磨いておきながら、いざとなると、市販のものに流れてしまって申し訳無く思っております。デザインはなかなかお洒落で聞きやすいトーンバランスですし、サブウーファーもあるのでそれなりに低域のボリューム感もありますが、あの全段差動アンプのような音楽の凝縮感や精緻な定位感はありません。でも、気に入ったCDがあったら手軽にMDにコピーして楽しんでいるようですし、お目覚めタイマーとしても重宝しているようです。

その昔、3Dステレオなんていう方式があったそうですが、最近流行りのサブウーファー・システムってなんのことはない、あの3Dステレオなんですね。そんなことを思いながら、市販の既製品オーディオに身をやつしている今日このごろです。師匠のきびしいお言葉を覚悟の上で、近況のご報告をさせていただきました。これから、花粉飛び交う季節に突入いたします。花粉症と格闘なさるであろう師匠のみじめなお姿を思い浮かべつつ、これにて失礼いたします。

* * *

師匠からの手紙
同日

わが弟子へ

お元気で何より。ティッシュペーパー代と花粉症の件は、余計なお世話である。それにしても、「個性的でキュートな」ガールフレンドとは、かりに貴君の主観がはいった過大表現であるとしても、めでたい限りである。直ちに、顔写真を送るように。私が面接する。

市販の既製品オーディオのことであるが、貴君は考え違いをしておる。そういう女性の部屋に、自作のアンプなどを押しつけることこそ怪しからぬことなのである。従って、貴君の判断は正しいと確信する。いや、なに、全く同じオーディオ・システムがワイフの居室にも設置されているのである。はっはっは、知らなかったであろう?夜も更けてから、一杯のコーヒーなどを持ち込んで、静かに音楽を聞きながら、他愛もない会話をして過ごす時間は、大人の男女には必要なのである。もし、そういう手ごろなパートナーがいないのであれば、過去のいきさつやら年齢に関係無く、さっさとそういうパートナーを調達した方がこれからの人生のためになるのである。話題がそれた。

時と場所と目的に応じて、オーディオ・システムも選ばなければならないということだ。自作できるからといって、その個人的趣味を周囲に押しつけたり、独善にはまってはいかんということだ。「下手な既製品よりも俺のアンプの方がはるかに音が良い」という理由は、はたからみたら単なるこじつけかもしれん(きっとそうだ)。オーディオに限らず、ちょっと人よりも上手な自作ができるようになった奴には、独善の罠が待っているから、くれぐれも気をつけるように。

最後に、ひとこと。冒頭の件、忘れず送るように。では、待っている。


苦情とご質問は受け付けておりません、あしからず。

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