ライン・トランス実測データ・・・謎のSTシリーズ


実験目的で、秋葉原の千石電子でST-71を1個だけ買い、いろいろと測定などしておりました。これを使ってステレオで音を聞いてみようと思い、たまたま立ち寄った別の店にもST-71があったので1個買って帰宅しました。さて、2個になったST-71を見比べてびっくり・・・違うやん。これは一体、ナニ?

右側の方にははっきりと「Sansui」と刻印がありますので、これをAトランスと呼び、左側の方はBトランスを呼ぶことにしましょう。


ST-71とは

私が子供の頃から、SansuiにはSTシリーズという小型トランスのシリーズがあり、なんと50年以上にもわたって作られているのです。1960年当時、これなくしてはトランジスタ・ラジオは作れませんでした。そのために、1次側1kΩくらいで2次側が8Ωのトランスが豊富に揃っています。

■参考・・・Sansui製のトランスのpdfデータ→sansui-st.pdf

ST-71は、カタログ上はドライバートランスに分類された、1次インピーダンスが600Ω、2次インピーダンスも600Ωのトランスです。重量は15gしかありませんから、本格的なラインレベルで使用するにはコアが小さすぎで飽和してしまいますが、とにかく600Ω:600Ωであるため、本サイトの「平衡プロジェクト」で使えないだろうか、と調べていたわけです。

上は、Sansuiのカタログからの抜粋です。それに対する実際の値を下表にまとめました。

AトランスBトランス
DCRPrimarySecondaryPrimarySecondary
55.4Ω54.7Ω38.3Ω29.9Ω
Weight14g16g
Price550円280円


周波数特性

左がAトランスで右がBトランスです。青線が、600Ω:600Ωとした場合で、黒線は1kΩ:1kΩとした場合の参考値です。低域側の特性は、Aトランスの方が明らかに優れています。高域側は、600Ωでの特性はほとんど同じですが、1kΩにすると、Aトランスの方が肩が張っていてその先は急に落ちるようになり、Bトランスはなだらかで高い周波数まで伸びています。

SDシリーズ

サンスイのSTシリーズの廉価互換品でSDシリーズというのがあるそうです。ST-71の互換品なのでSD-71ということですね。この謎のトランスはST-71ではなく、SD-71だったわけです。SD-71はST-71のおおよそ半額ですが、測定データを見てのとおり特性的には明らかに劣ります。



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