2SK30Aの歪み率特性


FET 2SK30A(Y class)を採用するにあたって、どの程度の歪み率特性が得られるのか測定してみました。

測定に使用した2SK30AのIdssは2.203mAです。動作条件ですが、Id=1mA一定、Ed=10V一定となるようにしました。この時バイアスは-0.527V、gmは1.72でした。この条件下で負荷抵抗値を10k〜50kΩの間で変化させるために、それに合わせて電源電圧を20V〜60Vに調整しています。

・負荷抵抗が10KΩの動作では、出力電圧1V時で歪みが1.7%ほどもあります。この時の利得は17.2倍です。

・負荷抵抗を20kΩにすると、出力電圧1V時で歪みは0.7%程度ですから、10kΩの時の半分以下になります。

・負荷抵抗を30kΩでは、出力電圧1V時で0.4%程度ですから、10kΩの時の1/4以下です。しかし、12AU7にような直線性がそれほど良くない球でも、出力電圧1V時の歪みは0.2%以下ですから、このようなFETで真空管増幅回路と同程度の歪み率を得ようとすると、もう少し高い負荷抵抗が必要なようです。

・負荷抵抗を50kΩで、出力電圧1V時で0.15%程度が得られました。この時の利得は86倍です。

本機の場合、2SK30Aの負荷抵抗をどのくらいに設定するのかは悩ましいところです。歪みを優先した場合は高めに設定したいところですが、ドライバ段の入力容量との関係を考えるとできるだけ低めにしたくなります。

たとえば、6SN7GTのCg-pが4pF、Cinが3pFであるとして、利得が15倍の時の入力容量は、4pF×15倍+3pF=63pFになりますが、本機では6SN7GTはパラですからその倍の126pFになります。FETによる電圧増幅回路の出力インピーダンスは、ドレイン負荷抵抗値とほぼ同じになります。従って、高域のカットオフ周波数は、ドレイン負荷抵抗=10kΩの時で、159÷(10kΩ×126pF)=0.126MHz、ドレイン負荷抵抗=20kΩの時で、159÷(10kΩ×126pF)=0.063MHzになります。

結局、高域特性とゲインとの相談の上で16KΩに落ち着きました。この時の計算上の高域のカットオフ周波数は79kHz、利得は27.5倍です。6SN7GTの入力容量が小さくないのと、それがパラになっているため、高域特性にとってはちょっと厳しい条件です。


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