■■■不平衡マイクロフォン→平衡コンバーター■■■
Studying Balanced Circuit



不平衡マイクロフォン→平衡出力6dBアンプ



工事中

●「不平衡→平衡」変換その1・・・不平衡マイクロフォン→平衡出力6dBアンプ

手元にあるマイクロフォン・アンプがすべからくXLR3平衡入力なのに、1個だけ不平衡タイプのaudio-technica製AT9440を持っています。このマイクロフォンは電池またはプラグイン・パワーで動作するステレオ・マイクロフォンで、出力は不平衡のステレオ・ミニジャックとなっています。これをなんとかXLR3平衡入力につながらないものかと思って、簡単なアダプタを作ってみました。本機の画像はこのページのタイトルのところにあります。

本機はマイクロフォン・アンプではなく、不平衡を平衡に変換するだけなのであまり利得があるとかえって困ります。但し、低雑音でないと話になりません。これだけの機能のためにわざわざ電源回路を用意するのもなんなので、マイクロフォン・アンプ側のファンタム電源を使うことにしました。考え始めて気がついたんですが、このような仕様の回路というのは案外難しいです。入力はインピーダンスが3kΩ程度の不平衡で、利得は0dB〜10dB(1〜3倍)くらい、ファンタム電源を使うので回路の電源電圧はせいぜい15Vどまり。消費電流は5mA以下という制約がつきます。そして平衡出力が得られて、1kΩ程度の低負荷に適合しなければなりません。加えてプラグイン・パワー用の電源もまかなう必要があります。

ちなみに、プラグイン・パワーとはマイクアンプ側からマイクロフォンの電源を供給する方式で、考え方はファンタム電源と同じですが、不平衡回路であることや数Vの低電圧であることなど、かなり簡略化されています。しくみは以下のとおりです。

本機の回路は以下のとおり。電源はファンタムから2本の9.1kΩ経由でもらって、10Vのツェナダイオードと3個のシリコンダイオードと1個のLEDによるシャント型定電圧電源です。電圧は約13.5Vです。ファンタム電源からもらうのは約4mAで、アンプ部の消費電流は2.3mAですので、シャント型定電圧電源にまわるのは1.7mAです。不平衡マイクロフォン用のプラグイン・パワーはこの1.7mAからもらいます。ちなみに、マイクロフォンのプラグイン・パワー電源の消費電流は0.1mA〜0.7mAくらいですのでこれで十分まかなえます。プラグイン・パワーに関しては仕様が公開されていませんので、手元にあるさまざまな機器とマイクロフォンの両方について実測してみたのが下図です。本機の開回路電圧は3.5V、DC内部抵抗は3.3kΩです。

全体としてはチャネルあたりFET1個、トランジスタ2個というこじんまりとしたディスクリート構成です。マイクロフォンからのオーディオ信号は2SK170単段のD-S位相分割回路にはいります。このまま出力したのではインピーダンスが高すぎるので、それぞれにエミッタ・フォロワ回路を追加したのですが、相手が平衡入力であるのをいいことにちょっと変則的なエミッタ・フォロワにしました。あまり見かけない回路ですが、これで立派に低インピーダンス平衡出力が得られます。但し、回路全体が無帰還なので低歪というわけにはいきませんし、雑音も拾いやすいです。製品化には向かないアマチュアの自作ならではの回路だと思います。利得は6dB弱(1.9倍)です。

使用感は思ったよりも良好ですがちょっとノイズが気になります。原因は不用意に使ったツェナダイオード(ZD 10V)でしょう。もうちょっと低ノイズにできないものかと思いつつ、放置されております。

実験で使ったaudio-technicaのAT9440(7,700円)は、典型的な廉価版エレクトレット・コンデンサ・マイクロフォンの特性を持っており、高域にボーカルマイク風のピークがあってその上はストンと落ちており、低域は200Hzあたりから下に向かってダーッと落ちています。しかし、音の素性はなかなか良く、適度なEQをかけてやると自然なピアノの左手が得られました。使用機材は、DigidesignのMBOX2とPro Tools LE7、PCはThinkPad R40です。


●「不平衡→平衡」変換その2・・・DI

DIあるいはダイレクト・ボックスと呼ばれる機材があります。レコーディングなどにおいて、ギターからの信号をギター・アンプを通さずにじかにミキシング・コンソールに入れてしまおうとする時に使います。ギターは不平衡かつ高インピーダンスな信号ソースなので、そのままでは平衡かつ低インピーダンスなマイクロフォン入力に合いません。DIは、1MΩ程度の高インピーダンスの不平衡入力を持ち、100Ω程度の低インピーダンスの平衡出力を持った利得をほとんど持たない変換器です。

以下の回路図は、徳見氏のサイト(http://www.hh.iij4u.or.jp/~tokumi/index.shtml)に掲載されたポピュラーなBOSS製"DI-1"のものです。

高インピーダンスの不平衡入力は、2SK246のソース・フォロワで受けています。フェーズ・インバーターは2個のM5218で構成されており、上側のM5218は利得1倍の反転増幅器、下側のM5218は利得1倍の非反転増幅器として動作させ、平衡出力を得ています。2つの増幅器は互いに無関係に動作するので、結果的に平衡出力が得られるものの、系そのものにはCMRR(Common Mode Rejection Ratio:同相除去比)の貢献は全くなく、意地悪い言い方をすれば「ナンチャッテ平衡」ということになります。ちなみに、電源はマイク・アンプから供給されるファンタム電源を使っていますので、出力回路が少々複雑になっています。


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