■■■MDR-CD900ST 平衡型ヘッドホンへの改造(改良版)■■■
Building Balanced Headphone



とりあえず左側のイヤーパッドをはずしたSONY MDR-CD900ST


●おことわり

改良版の本ページは作り方についてのみ記述しています。平衡型ヘッドホンへの改造のねらいや基本的事項については旧版に記述がありますので、はじめてここにアクセスされた方は必ず旧版もお読みください。

●ヘッドホンのバランス化改造法(改良版)

SONY MDR-CD900STのバランス化改造をできる限り簡単に行う手順をご紹介します。旧版では左右両方のユニットの配線に手を入れたり、右側ユニットにドリルで穴を開けたりと大変なことになっていましたが、この方法では、改造対象は左側ユニットのみ、そして穴あけ加工は不要となり、作業手順がきわめて簡単になりました。

●改造MDR-7506の諸問題

MDR-7506をバランス型に改造してしばらく使っていたのですが、いくつか欠点がみえてきました。そのひとつは、ケーブルの両出しは装着していて邪魔、うざったい、という問題です。あるスタジオでも同じことを耳にしました。ケーブル両出しのヘッドホンを嫌うミュージシャンがかなりいるという情報です。みんな同じことを感じているのだなあ、という印象。もうひとつの問題は、使ったケーブルが太くて硬かったのでそのうざったさが倍増、三倍増してしまったこと。三番目の問題は、ケーブルがループ状になるため、何度かからんでいるうちに捩れてしまってすごーく感じ悪いことになってしまうのです。やっぱり、ヘッドホンケーブルは片出しで○というのが結論です。

なお、ケーブル片出しであるために左右音量が違うといる方が多数いらっしゃいますが、それはあなたの「気のせい」です(キッパリ)。

というわけで、もうひとつあるMDR-CD900STの方はケーブル片出し方式でバランス化することになりました。以下、その手順を説明いたします。


●改造手順

(1)分解する

分解&改造するのは左側だけです。右側は一切いじりませんのでお間違いのなきよう。

左側のイヤーパッドをはずしたら、4個あるネジをはずします。そうすると、このようにヘッドホンユニットと配線が出てきます。何がどうつながっていたのかを忘れないためには、この段階でデジカメで画像に記録しておくといいでしょう。


(2)拡大してみる

ハンダの山が6つ見えますが、2つずつがつながっているのがわかりますか。左下から時計まわりに説明していきましょう。

白い線が出ているのは左側ユニットのHot端子です。白い線はヘッドホンケーブルの芯線で、元からついているヘッドホンジャックの先端(Tipという)につながっています。

次は赤い線が2本です。細い方の線は右側ユニットのHotから出た線です。ビニル被覆のある太い方はヘッドホンケーブルの芯線で、元からついているヘッドホンジャックの真ん中(Ringという)につながっています。このハンダの山は単なる中継なので中ではどこにもつながっていません。

最後は黒と銅色の線です。銅色の線は右側ユニットのColdから出た線です。このハンダの山は左側ユニットのCold端子もであります。そして、黒い線はヘッドホンジャックの根元(Sleeveという)につながっています。左右両方のユニットのCold側はここで一緒になって1本になってヘッドホンジャックの行っているわけですが、このように左右1本のまとめているところが問題でもあるわけです。


(3)線をはずす

ハンダごてを使って、ヘッドホンケーブルは全部はずします。この最初からあったケーブルやフォーンプラグは使いません。右側ユニットからきている線もHotの赤い細い線のみ残してCold側ははずしてしまいます。

使わなくなったケーブルはシールド構造ではないので通常のオーディオケーブルとかマイクロフォン用には使えませんのでご注意ください。アンバランス用のアダプタに使うことはできますが、どうせなら左右チャネル間クロストークが生じない4芯を使いたいので、やはりこのケーブルの使い道はありません。


(4)4芯ケーブルを用意する

シールド付4芯ケーブルを用意します。私が使ったのは秋葉原の九州電気で買ったものです。太さは3.5mm〜4mmくらいが適当で、これより太いと元の穴にはいりません。

シールド付きでもシールドなしでもどちらでもいいですが、シールド付きの場合はせっかくついているので生かしましょう。コネクタ側は1番ピンつなぎますが、ヘッドホン側使わないので切ってしまいます。

4本の芯線は8cmくらいの長さに出しておき、根元を結んでおきます。画像では結んだ状態約6cmを確保しています。長すぎても全く問題ないので長めの方がやりやすいです。


(5)線をつなぐ

この4本の線をそれぞれ、左Hot、左Cold、右Hot、右Coldとして使います。色の使い方は自由ですが、以下の画像では「赤」=左Hot、「黒」=左Cold、「緑」=右Hot、「白」=右Coldに割り当てています。

画像のように線をハンダづけします。白い線は右側ユニットのColdからきた銅色の細い線と空中でつなぎます。


(6)絶縁処理する

空中でつないだ線はむきだしのままでは具合が悪いので、最も細い熱収縮チューブをかぶせてからハンダごての熱であぶって収縮させておきます。絶縁が確保できればいいので他の方法でもかまいません。

ヘッドホン側の改造はこれで完了なので、ユニットを元にもどしてネジを締めておきます。


(7)5Pキャノンを使う

バランス型でステレオ伝送するためにキャノン5ピンを使った国際規格(AES14-1992)があります。一部の製品に3Pキャノンを左右で1個ずつ、合計2個使ったものがありますがいかにも大げさな上に実用性を欠くと思うのと、せっかくキャノン1個で済む規格があるのに何故使わないのだろうと思います(知らないとか・・・)。

キャノンコネクタに結線する時によくやってしまうミスとしては、線をつなぐことに頭が行ってしまって、コネクタのがわや絶縁用のリングを入れ忘れてしまうことです。後で気づいても全部やりなおしになるのでご注意ください。

もうひとつ重要なこと。ケーブルに力がかかるとハンダづけ部分が弱くなり、やがて芯線が切れてしまいます。そうならないためには、キャノン・コネクタの根元部分にある締め付けネジが利くようにケーブルにテープなどを巻いて太くしてやります。画像では見えていませんが、グレーのゴムのくびれたあたりのケーブルに熱収縮チューブを二重にかぶせて太くしてあります。


キャノンコネクタのオス/メス

ここでひとつ重要なお話があります。それは、キャノンコネクタのオス/メスの決め方です。実はこのページの使い方は標準とは逆になっています。キャノンコネクタの標準ルールは、信号を送り出す側がオス、それを受ける側がメスという一般ルールがあります。ところが、本ページの改造ではヘッドホン・ケーブルにオスがついていますからこれは一般ルールとは逆になります。

そのようになった理由は以下のとおりです。まず、これはあるレコーディング・スタジオ用に決めたローカルルールだからです。マイクロフォンアンプなどではコネクタは機材の背面に取り付けますが、ヘッドホン用はパネル側に取り付けますので、オスをつけると電極がむき出しになりますので、知らずにそれをいじられてノイズなどの原因になるのを嫌いました。ヘッドホンケーブル側に重いメスを取り付けたくない、という考えも少しあります。受ける側がメスという一般ルールはそうした方が入力オープンの時にノイズを拾いにくいからですが、ヘッドホンはその心配がないというのも理由のひとつです。

そのあたりのことをわかった上で、皆さんはどうするかご自身で決めてください。どうせ、ヘッドホンに5Pキャノンを使うこと自体ローカルな話なんですから、自由に決めていただいてオッケーです。


(8)結線

キャノンは1番pinはアース(GND)という一般ルールがあります(そのために1番pinだけはメス側の穴の深さが違う)ので4芯シールド線のシールド編組は1番pinにつなぎます。2番pinはL-ch(Hot)、3番pinはL-ch(Cold)、4番pinはR-ch(Hot)、5番pinはR-ch(Cold)に割り当てました。右の画像は4番pinおよび5番pinは色が入れ替わって(間違って)いますのでご注意ください。


●ヘッドホン改造結線図

結線は下図のとおりです。ステレオ・フォーン・ジャックの結線は、Tip=L-ch、Ring=R-ch、Sleeve=共通アース、と決められていますが、バランス化した場合のキャノン(XLR)は、1=GND、2=Hot(L)、3=Cold(L)、4=Hot(R)、5=Cold(R)です。

下図には微妙に誤りがありますのでご注意ください。5pinXLRのところの4番と5番が逆です。


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