2001/09/10 試乗記ジャガー X-TYPE と 6 台のライバル
グループ・テスト X-TYPE VS ライバルたち
X-TYPE それ自体としては多くの優れた特質を持ち、突出した特性も備えている。しかし、この車が成功を収めるには、我々が選択した「卓越したジュニア・プレステージ・サルーン」 6 台に対してその優位性を見せつける必要がある。
ジャガーは、この産声を上げたばかりの車によって、世界規模で販売台数を倍増するとの自信を示しているが、この言葉が事実通りなら、今回試乗する X-TYPE (価格 25,500 ポンド、 3.0 リットル V6 スポーツ、 MT)は居並ぶ強豪たちと互角に渡り合えるはずだ。弱点や欠点はこのテストで明白となる。つまり、このテストでは掛け値なしで、ジャガー渾身の作の実力を試そうという訳だ。文:スティーブン・サトクリフ
写真:AUTOCAR
翻訳:有限会社ロゴス・トランスレーション・サービス
(X-TYPE は素晴らしい車には間違いないが、競争を勝ち抜くには、ライバルたちと互角に渡り合えなければならない。)
ライバルたち
ジャガー X-TYPE の価格は 25,500 ポンド、標準でスポーツ・サスペンションと 17 インチのホイールが装備されている。今回のテストでは、価格およびスポーツ性の 2 点から、できる限り X-TYPE に匹敵する車をライバルとして選択した。そのため、メルセデス C クラスでは、標準スペック価格 30,250 ポンドの C320 ではなく、スポーツ・サスペンション装備、価格 26,140 ポンドの C240 エレガンスを選択した。
同様にアルファ 156 についても、贅沢な 2.5 リットル V6 Lusso トリムにオプションのスポーツ・サスペンション、さらに必須アイテムのリヤ・ウィングも加え、できるだけジャガーの価格に近づけた。これだけのオプションを追加しても、アルファ 156 の価格は、このグループの中で最も手頃な 20,490 ポンドである。
ゴージャスなニュー・アウディ A4 で、 3.0 リットルエンジンを搭載した X-TYPE のライバルとなり得るのは、価格 25,470 ポンド、 3.0 リットル V6 エンジンのスポーツ・クワトロだけだ。また 3 シリーズについては、価格 26,740 ポンド、 330i SE 以外に考えられない。この 330i SE は、英国で今年の年末から販売が開始される改良バージョンで、今回試乗するのが楽しみだ。よりシャープになったステアリングとグレードアップされたサスペンションが特徴である。
ジャガーの「英国らしさ」をチェックするには、ローバー 75 を加えないわけにはいかない。過小評価されているこの車で今回使用したのは、価格 22,995 ポンド、 2.5 リットル V6 エンジンを搭載した最高クラスの Connoisseur SE トリムだ。ロングブリッジ工場で生産されたローバー 75 に試乗するのは今回が初めてである。 BMW の指揮下コウリー工場で生産されたオリジナルの試乗車との違いに注目するのも興味深い。
また、決して無視できないのが、価格 23,995 ポンドのボルボ S60 T5 S である。この車を選択する人は少ないかもしれない。しかし実際は、ボルボで最高の車でありながら、 S60 T5 S は苦戦を強いられている。 T5 S は最もパワフルなエンジンを搭載しており、最速の部類に入る車でもある。また安全性に関しても、絶対の信頼を得ている。ジャガーが勝ち残るためには、安全性においてこの T5 S のレベルに達しなければならない。
スタイル、エンジニアリング、イメージ
(X-TYPE のシャーシはクラスの中で最強。歴代のジャガーの中でも最高のハンドリングを実現している。)
コベントリーから発せられたスタイリングに関する指示が、 X-TYPE をできる限り小型のジャガーらしいデザインにせよというものであったのなら、このスタイリングは成功とみなしてよいだろう。 X-TYPE がジャガーの製品であることは一目瞭然である。
とはいえ、最初に見たときの印象が、 S-TYPE と非常に似ている点が気掛かりだ。特にリヤから眺めるとそうだが、これはあまり誉められたことではない。だが、もう少し時間をかけて眺めると、 X-TYPE のスタイリングが際立っていることに納得する。これは大胆にも、 A4 や C クラスなど、このクラスの中で最も美しい車(あくまでも主観だが)と並べてみてもそれは明らかだ。
特にジャガーのノーズ部分には、この車が間違いなくジャガーであることを示す幾つかかの特徴がある。最初に目がいくのは、 4 つの楕円形のヘッドライトである。これはジャガー以外には見られない特徴である。次に、同じほど印象的なのが、ボンネットに刻まれたヘッドライトへと続くラインである。これも、 1950 年代以降ブラウンズ・レーン工場から出荷されていったすべてのサルーンに共通する、上品なスタイリング・テーマを継承している。
X-TYPE がジャガーの製品であることは一目瞭然だ。そしてグリル。 X-TYPE では、グリルが黒になり、スタイリング・テーマをさらに強調している。
メカニズムの面においても、 X-TYPE は高品質を誇る強豪たちに挑戦しなければならない。今回のグループの中で最もパワフルなエンジンを搭載しているのはボルボである。ターボチャージャー付き 2.3 リットル 5 気筒エンジンから、 5,200 rpm で 250 馬力(184 kw)、 2,500 〜 5,200 rpmで 243 ポンドフィート(328.1 Nm[33.5 kg・m])のトルクを発揮。対するジャガーの 3.0 リットル V6 エンジンは、 6,800 rpmで 229 馬力(168 kw)、 3,000rpm で 206 ポンドフィート(278.1 Nm[28.4 kg・m])。だが、ボルボはジャガーのような 4WD でないため、すべての動力が 1 本の車軸、つまりフロント・アクスルにかかってくる。結果として、走りがぎこちなくなる。
基本的に X -TYPE は S-TYPE と同じ AJ V6 エンジンを採用しているが、プラットフォームをモンデオと共通化したため、設計上の制約から、パワーを 4 輪すべてに配分する構造となった。その結果、ジャガーによると他の追随を許さない濡れた路面での安定性やどのような状況にも対応する優れたトラクションが得られるという。エレクトロニック・ブレーキ・ディストリビューションやスタビリティ・コントロールも搭載しているが、実際のところジャガーのエンジニアは、 X-TYPE は構造上安定しているので、このようなシステムはほとんど不要であると密かに考えている。
他の V6 車(ローバー 75 、アウディ A4 、アルファ 156 およびメルセデスC 240)のうち、 X-TYPE に匹敵するパワーを持つ車はない。アウディ・クワトロの 3.0 リットル・エンジンは、 217 馬力(160 kw)、 221 ポンドフィート(298.4 Nm [30.5 kg・m])。一方 2.5 リットル・エンジンを搭載した前輪駆動のアルファとローバーのトルクは、それぞれ 190 馬力(140 kw)/ 164 ポンドフィート(221.4 Nm [22.6 kg・m])と 175 馬力(129 kw)/ 177 ポンドフィート(239.0 Nm [24.4 kg・m])。後輪駆動のメルセデスは 2.6 リットル V6 エンジンから 170 馬力(125 kw)/ 177 ポンドフィート(239.0 Nm [24.4 kg・m])のトルクを発揮。メルセデスのエンジンは今回テストした車の中で、 4 バルブではなく 3 バルブを採用している唯一のエンジンでもある。
X-TYPE のライバルの中で、メカニズムとダイナミズムにおいて最も手強い相手となるのは、間違いなく後輪駆動の BMW 330i である。価格では他の追随を許さない、洗練されたパワフルな 3.0 リットル直列 6 気筒エンジンが、 231 馬力(170 kw)、 221 ポンドフィート(298.4 Nm [30.5 kg・m])のトルクを生み出す。しかも、ステアリングとサスペンションに加えられた改良によりさらに操縦性が向上していると言われている。参考までに言っておくと、 3 シリーズではスポーツ・サスペンションが標準装備となった。またステアリングはロック・トゥ・ロックが 3 分の 1 回転減り、 3.2 から 2.9 回転になった。一方、ジャガーのステアリングはさらにシャープで、資料によるロック・トゥ・ロックは 2.6 回転。スポーツ・サスペンションは同じく標準装備である。
パフォーマンスと制動性
(ジャガーの 4 輪駆動の安定性はドライコンディションも良いが、濡れた路面でのパフォーマンスは素晴らしい。)
X-TYPE は間違いなく速い車と言ってよい。 V6 エンジンは、常にとてもスムーズで、 2,000 rpmから限界の 6,900 rpm まで、広範囲の回転数で力強いパフォーマンスを発揮する。だがそれも、直線走行では BMW やボルボ T5 と同じレベルには達していない。
ジャガーが BMW やボルボのパワーに劣っているのは、トルクが比較的細いことにある。ギヤを 3 速に入れアクセルを時速 40 マイルまで踏み込んでも、レスポンスは力強いものの、 330 i のようなドラマチックな快感は得られない。 330 i には 1500 rpm を超えると、ドライバーをシートにはじき返すようなパワーを感じる。同様にボルボも、ターボが忙しく作動し始めると、勢いづいてグングンと加速する。もっとも、ターボの威力が発揮されるまでに一瞬の遅れがあるため、 330 i のような自然吸気エンジンを備えたライバルと比較すると、初めは力なく感じるかもしれない。
なんと、 X-TYPE のドライブトレインはメカニズムの洗練性という点でも、今回のテストに参加した高性能車、つまり BMW 、ボルボ、ローバー、メルセデスに一歩及ばなかった。これはアウディにも言えることだが、スロットルを半インチほど開けてもエンジンからほとんど反応がない。それからさらに踏み込むと V6 は小さな爆発音と共に猛烈に回転を始める。ペダル操作に気を付けないと、走りがぎこちなくなる。
X-TYPE のパフォーマンス
この欠点は、クランクとドライブシャフト間のスナッチでも明らかで、 X-TYPE の洗練性の評価を下げざるを得ないだろう。またギヤシフトも同様に、他の MT 車と比較すると重くて硬い。一方、 BMW 、ボルボまたメルセデスにはこのような問題が全くなく、スムーズに運転できる。
ここまでくどくど X-TYPE の欠点について述べてきたが、 X-TYPE のパフォーマンス自体はなかなかのものだ。実際、 X-TYPE はこのクラスで最速とまではいかないが、速い車である。時速 0 〜 60 マイルまで 7 秒ジャストで加速。この数値を上回るのは、 BMW の 6.7 秒とボルボの 6.8 秒のみである。心地よいサウンドのアルファでさえも時速 60 マイルまでタイヤから煙を上げながら加速するには 7.2 秒かかるし、アウディ(7.1 秒)、ローバー(8.4 秒)およびメルセデス(8.6 秒)は完全に取り残されている。
さらに加速すると、 X-TYPE の 4WD 機構による余分な重みと摩擦が災いし、軽くてギヤ比のクロースしたアルファに時速 100 マイルの時点(アルファ 18.6 秒、 X -TYPE 18.9 秒)ではすでに抜かれてしまう。しかもその頃までには、 BMW は 16.5 秒、ボルボは 17.5 秒という圧倒的なタイムではるか先へ行っている。さらに、アウディですら X-TYPE に 0.1 秒の差をつけ、 18.8 秒で到達する。これらの車ほどパワーがないメルセデスとローバーはさらに遅れをとり、タイムはそれぞれ 23.9 秒と 23.0 秒であった。
最高速度を競うのは英国の伝統と言えるが、このテストではボルボが驚異的な時速 151 マイルで優勝した。 2 位は BMW の時速 149 マイルで、 3 位はアウディの時速 148 マイル。ジャガーは、時速 144 マイルで 4 位につけている。残りのうち、メルセデス C240 のみが何とか時速 140 マイルをマークしている。アルファとローバーはそれぞれ時速 138 マイルと時速 134 マイルという記録だった。
客観的に見て、いずれの車も制動性にはほとんど問題がない。すべての車が標準で高性能のアンチ・ロック・ブレーキ・システムを装備している。中でも BMW は、最大のフロント・ディスクを装備しているだけでなく、唯一フロントとリヤの両方にベンチレーテッドディスクを備えている。個人的には、他車と比較して、アウディのミドル・ペダルがソフト過ぎると感じた。次に問題を挙げるとすれば、アルファのブレーキはスムーズな調整が難しい。ジャガーと BMW のブレーキは共に最高の仕上がりだ。
ハンドリングと乗り心地
(X-TYPE のダッシュボードはシンプルで魅力的だ。)
X-TYPE の持つダイナミックな個性の中で、ジャガーが最も誇りとしているのはその乗り心地とハンドリングだろうが、確かにそれもうなずける。実際、改良された 3 シリーズでさえ雨天など状態の悪い路面では X-TYPE ほどの安定感が得られない。 4WD の X-TYPE は、このような悪路で本領を発揮する。
結論はこうだ。 X-TYPE はこのクラスの中で最強の剛性を持つシャーシを備えているだけではなく、おそらく最も運転を楽しむことのできる車であるということだ。歴代のジャガーの中で最高のハンドリングを実現していると言えるだろう。
この点で X-TYPE に肉薄しているのは、意外にも BMW ではなくメルセデスだ。 X-TYPE と同様にベンツも完成されたシャーシを備え、リラックスできる乗り心地、高速での素晴らしいハンドリング・バランス、接地感の優れたステアリングなどを実現している。メルセデスに欠けているのは、悪条件を全く感じさせないジャガーの能力である。この差は、 C240 が 4WD ではなく後輪駆動であること、またジャガーには独自のマジック・ハンドリング技術があることによる。
こうしてみると、 BMW のステアリングやサスペンションが最近改良されているとはいえ、走り屋が何も考えずに 330 i を選択することはもはやなくなった。カーブの連続する田舎道や、路面の状態の良い幹線道路や 2 車線道路でも、 330 i は X-TYPE のレベルに達しなかった。乗り心地、ステアリング、限界近くでのバランス、コントロールの信頼性のいずれにおいても X-TYPE に及ばない。個々の差異は小さなものだが、総合的に判断すると歴然とした差となる。ジャガーは、互角に渡り合えることを証明した。
3シリーズの地位が危ぶまれていることは、少なくとも 2 人のテスト・ドライバーが 330 i よりボルボの乗り心地やハンドリングの方が良いとコメントしていることからも分かる。
ここ数年の変革
アルファロメオ、メルセデス、ローバー、ボルボ、BMW、アウディの各インパネ。(左上から右下へ)
これが5年前であれば、このような意見は一笑に付されたであろうが、現在では説得力を帯びてきている。ただ、 3 シリーズのために付け加えておくと、これは主にボルボが S60 T5 S のような秀逸な車の製造に成功したためである。
交差点から発進する際にフル・スロットルで前輪が猛烈にスピンする傾向を別とすれば、 T5 S は極めて満足度の高い車である。乗り心地は、ジャガーと同じほど素晴らしく、ほとんどの路面状況で BMW に勝っている。舵角通り、ドライバーの意のままに車が向きを変える。ボルボの最も優れている点は、不快な振動を、無感覚になるほど完全にではなく、適度に抑えていることである。これは、優れたステアリングとシャーシに加えて、体をしっかりとサポートするシートのおかげである。
ローバーも試乗したすべてのドライバーから賞賛を勝ち得た。限界状態において実力を発揮するわけではなく、むしろどのようなテスト・コースでも首尾よくこなす。ローバーはジャガーや BMW よりサスペンションがソフトで、コーナーではこれらの車よりロールが大きくなる。だが、ハンドリングは常に穏やかで落ち着いており、路面のわずかなデコボコがステアリングやシートから伝わってくることはない。乗り心地に関しても、メルセデスと同じレベルに達している。
しかし、アルファに関しては話が異なる。 156 はこれらの車のレベルに及ばない。過敏なまでのステアリングやゲーム感覚の強さにもかかわらず、乗り心地の洗練度、ハンドリングの鋭さにおいて他車を圧倒するものはない。硬いサスペンションは、アウディ、メルセデス、ジャガーなどなら難なく通り過ぎる路面の凹凸を拾ってしまう。コーナリングには、それなりの感激はあるが、感動を覚えるほどではない。アルファのシャーシの唯一優れた点は、ボディ・コントロールと、ミッド・コーナーでのバランスであるが、いずれにおいてもジャガーのような剛性が欠けている。
次にアウディだが、ハンドリングが大きく改良されているものの、走り屋にとってはまだ物足りないものがある。低速での乗り心地はほぼ満足のいくレベルに達している。ステアリングとボディ・コントロールも基本的に問題はない。 A4 のシャーシの問題点は、ジャガー、 BMW 、メルセデス、またある程度はボルボにも備わっている、ドライバーを夢中にさせる何かが欠けていることである。ステアリングは正確で振動も良く遮断されているが、レスポンスはなぜか淡白だ。ハンドリングのバランスは的確だが、面白みに欠ける。アウディは、 A4 をもっとレベルアップするために、 X-TYPE を試乗して、何が足りないのか研究するのも悪くはないだろう。
居住性、装備、安全性
(X-TYPE の後部座席のヘッドルームの少なさは最大の欠点。他の車はすべて4人がゆったりと座って、長時間旅行できる余裕があった。)
パッケージを犠牲にすることは、もはやジャガーの 1 つの特徴とも言えるが、全く新しいモデルである X-TYPE も例外ではなかった。他の車と比較すると、後部座席のヘッドルームが狭い。これには、本当にがっかりした。ジャガーは後部座席の十分なレッグルームや、フロントとトランク・スペースの広さを指摘して X-TYPE のパッケージを擁護することだろう。そうは言っても、身長 175 cm の人が運転席には座れるが、その後ろでは同じくらいの身長の人が頭をぶつけないよう首を曲げなければならない、というのは情けない話だ。これでは 4 人乗りとは言い難い。
室内空間が最も広いのはローバーであるが、メルセデス、 BMW 、ボルボ、アウディのいずれにしても、 4 人が乗り込んで快適に数 100 キロドライブできるだけの十分な広さがある。アルファ 156 でさえ、後部座席に十分なヘッドルームを確保することに努め、ジャガーよりも成功を収めている。もっともアルファのシートの硬さやぎこちないドライビング・ポジションは別問題だが・・・。
少なくとも X-TYPE には、運転を楽しむことのできる環境が整っている。テスト・ドライバーの中には、位置を細かく調整できる革巻きハンドルがあるのだから、もう少し低いポジションの方が良いという意見もあったが、洗練されたシートや人間工学に基づいたダッシュボードにけちを付ける者は 1 人もいなかった。運転席の正面には、クロムで縁取られ、ブリティッシュ・レーシング・グリーンに彩られた 2 つの大きなメーターがある。デザインが良いだけでなく、見やすく機能的でもある。しっくりくるペダル・ポジションを含め、他の主なコントローラについても同じことが言える。残念だが、魅力的なインテリアと呼べるものはこんなところだ。もし革を贅沢に使用するジュニア・ベントレーのようなインテリアが好みであれば、ローバー 75 が気に入るだろう。もっと若々しいダイナミックなキャビンを求めているのなら、メルセデス、 BMW 、アウディが魅力的に映るだろう。中でもアウディは優れものだ。実用性、使いやすさでは、ボルボに軍配が上がる。それからすると、ジャガーのキャビンは外観も感触も実に平凡だ。
だが最大の難点は、ドアの建てつけが悪いことである。テスト対象車の 2 台とも、リヤ・ドアを勢いよく閉めると、今にも外れそうな感触を覚えた。正直なところ、 X-TYPE のインテリアは、外観、感触、香りのどれをとっても、アウディ、 BMW 、メルセデスおよびローバー 75 より格段に落ちる。
だが、少なくともこの価格にしては十分な装備が備わっている。セイフティ・ギヤについても、ボルボと同じ水準を達成している。しかし、車を選ぶ際の基準がインテリアであるならば、タッチ・スクリーン式のステレオや GPS システムといった X-TYPE の優れた装備に目を留める前に、早々とアウディに決めてしまっているだろう。
評価
(左からアルファ、ローバー、 BMW のリアシート)
路上での X-TYPE は最高。 X-TYPE の V6 エンジンは、シャーシがその真価を示すのに十分なパフォーマンスを発揮してくれる。止まるときも曲がるときも、文句のつけようがない。
ダイナミックな走りでこの車に並ぶものはない。これはライバル車の質の高さを考えると飛び抜けた成果だと言える。しかし非常に残念なことに、インテリアがこの車の評価を下げてしまっている。つまり、見る側を引き付け、触れてみたい、そして乗ってみたいという気にさせきれないのだ。結果として X-TYPE の全体的なアピール不足となり、このテストで上位に食い込むことができなくなってしまっている。実際、リヤの窮屈なヘッドクリアランスは驚きを禁じ得ないし、内装に使われている安っぽい材質には本当にがっかりした。
以上のことから考えると、予想通り BMW がトップになるだろう。そして僅差で、速さでは劣るが、より滑らかに走るメルセデス C240 が続く。我々はメルセデスでは C320 よりも C240 を選択したが、このことがよりパワフルで同じ価格の BMW 330 i と比べるときにメルセデスの不利にならないだろうか、と心配した。しかし実際には、メルセデスは予想以上に健闘している。エンジンが小さいからといって、アピールが弱くなることはない。 BMW 330 i が評価を得ているのは純粋にドライブトレインが非常にスムースで、性能が魅力的であることに尽きる。
他に注目できる性能を持った車として、ローバー 75 がある。この車は二年前と比べてずいぶん成熟した。それにボルボ S60 T5 S 。スピードを出せ、快適なスペースを提供してくれる。またアウディーの A4 も劇的な変化を遂げた。それでもまだジャガーや BMW そしてメルセデスと比べるとほとんど目立たないのが不思議なくらいだ。
少し前に述べたように、アルファ・ロメオはこれらのライバルに歯が立たないばかりか、時代遅れにさえ感じる。それでもその魅力的な V6 エンジン、そしてお手頃価格でファンを惹きつけている。車好きならまだまだ検討に値する車だ。ジャガーについても同じ事が言える。ただ X-TYPE は、インテリアが改善されるまで BMW 330 i やメルセデス C240 という二つのライバルの弓取りに甘んじることになるだろう。名誉ある三位といったところか。
ブラウンズ・レーン(ジャガー本社コベントリーのこと)の人々は間違いなく気落ちするだろうが、ジャガー初の試みにしてなし得た事柄は正当に評価されるべきだ。 BMW 3 シリーズ以上の車を造り出すことは、並大抵なことではないのだ。
(左からメルセデス、ボルボ、アウディのリアシート)